大腸癌細胞株Caco-2の分化機序の検討

 

要旨 

通常の培養条件で自然に分化する大腸癌細胞株であるCaco-2細胞を用いて、細胞分化と細胞増殖能の変化をウシ胎児血清(FCS)(+)およびFCS(-)の培養条件で検討した。FCS(+)ではド−ム形成や alkaline phosphatase活性の増加といった分化形質が出現し、それに伴いS期細胞群の減少が起こることが示された。FCS(-)ではS期細胞群の割合に変化はなく分化形質も発現しなかった。この細胞に FCSを加えると急速に分化形質の発現がみられた。

以上の成績よりCaco-2細胞の分化は細胞増殖能低下と密接に関係しており、それにはFCS の存在が必要であることが示唆された。