病状説明:人工呼吸器を付けること

酸素吸入でも治療できない呼吸不全や、その他の急変時に人工呼吸器を使用することもあります。これは患者さんの延命を図る手段です。大事なことは、人工呼吸器を使用しても、患者さんは楽にはならず、また、体(口・顔・のど、など)にも傷がつきます。強制的に外部から肺を動かしますので、静脈の圧も上がり、むくみも出てきます。人工呼吸器で延命すると、次の余病が出て来ることも多いです。病気に対しての「勝ち目」があれば、人工呼吸器を使って、「しのぐ」ということもしますが、患者さんの場合は、人工呼吸器を使う状態が来るとしたら全身的な衰弱が来たということですので、その状態で人工呼吸器を使っても、病気に対しての「勝ち目」(「死なない」ということです)の見込みは、ほとんどないと思います。そういうことから、私は人工呼吸器の使用は、出来るだけ避けたいと思っています。

次のご説明は、人工呼吸器の使用をどうしようかと迷っている患者さんの御家族にお書きしているものです。

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人工呼吸器の使用は、年齢・基礎疾患などを第一に考えるべきだと、私は思っています。人工呼吸器の使用は、患者さんを楽にする治療ではないからです。現在の治療でも呼吸が悪化し命にかかわることがあたら、御家族の皆さんは、誰にも訪れる寿命であると、お考えになれますか? それとも、様々な障害のあることを知った上で、人工呼吸器を使用されますか?

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私が人工呼吸器を付けて、歩いて帰って元気に生活している人は、二人。(なお、私は十六年の臨床経験の中で、救命救急センターには勤務したことがありません)

一人は、急性喉頭蓋炎の患者さん。

もう一人は、喘息発作の患者さん。

そのお二人とも、肺炎を起こしたりして、生死の境をさまよった後に、何とか助かった。

半年近く人工呼吸器がついた患者さんの併診をしたことがありましたが、感染症、浮腫、心不全、褥瘡(床ずれ)などの様々な余病が出て可哀想だと思った。

人工呼吸器を付けることは親孝行ではないと考えております。