病状説明:検査をするか(治療を受けるか) 【総論】

 「身体的なハンデキャップ」(内容は下に説明)を有する患者さんに、検査異常項目が出た患者さんに対して、患者さん・御家族の説明用に使用するものです。

 ここで使用します「身体的なハンデキャップ」とは、一般的に用いられる”体が不自由だ”という意味とは、少し違います。まず、その内容についての説明です。ここでの「身体的なハンデキャップ」とは、

内科のいろいろな臓器に、病気がある、あるいは、病気が潜んでいるということを指します。

具体的には、心臓病、脳血管障害または脳血管障害後遺症、呼吸器疾患、高血圧性疾患、コントロールの良くない糖尿病・高脂血症、肝臓病、胃腸疾患、腎臓病、血液疾患、膠原病、手術を既に受けていること、四肢麻痺や四肢欠損、精神的は不安定さ などを指します。さらに広げて言えば、高齢であればあるほど身体機能は衰え、例え日常生活に支障がなくても病気が潜んでいる率が高くなります。また、いわゆる「ぼけ」がある患者さんや、耳の不自由な患者さんでは、検査中に、つらいかどうかの申告がうまくいかない場合があります。検査中は注意をしますが、意思の疎通の面で、うまくいかないことが起こりうるのです(そういったハンデキャップのない方に比べて、危険が高いということです)。

 検査で異常が出たからと言いましても、「必ず病気がある」わけではありません。これは、さらに詳しい検査してみなければわからないことなのです。さらに詳しい検査には、それなりの苦痛と危険が伴います。

あらゆる検査には、副作用や偶発症という危険が伴うと考えた方が良いと思います。運が悪いと、検査が元で、死んでしまうということもあるのです。従いまして、一口に「検査」と言いましても、その検査は常に危険と隣り合わせであると言えるのです。危険度の高い検査から、あまり危険ではない検査まで、病院の検査にはいろいろありますが、厳しく考えたら、採血一つとっても何らかの危険というのはあるのです。これのことは「治療」にも当てはまることです。これらの文章の「検査」を「治療」に置き換えれば、そのまま「治療の危険」ということの、一般的な説明になると思います。

 世の中は、バリアフリーといいまして、障害を持っていても、高齢の方でも、安全に快適に生活できる工夫がなされています。医療機関においても、さまざま障害の除去をすすめています。しかし、検査となりますと、元気な若者に対する場合と、「身体的なハンデキャップ」を持った方に対する場合とでは、気配りなどの面では、違いを出せると思います、しかし、検査器具や、検査の苦痛・体への悪影響(血圧の変動、心臓や脳の血管への影響、その他)については、元気な若者でも、「身体的なハンデキャップ」を持った方でも、基本的な部分においては、差が出せないのです。

 従いまして、患者さん一人ひとりの、身体的な問題を抜きにして、自動的に検査を入れるのは問題が多いと考えられます。

 また、「何のための検査か」ということを考えると、病気を発見し、治療をするために検査をします。検査をしたところで、「身体的なハンデキャップ」のために、治療は難しいということも出てくると思います。「身体的なハンデキャップ」があるのに、無理をして治療をして、寿命が縮むという悲惨な結果もあり得ることなのです。悲惨な結果は、あって欲しくないことなのですが、現状の医療の限界として、これもあり得ることだということも、十分にお考えになってください。

 検査異常と、患者さんの「身体的なハンデキャップ」の説明は、別個に致しますが、以上のことをまず、ご承知おきください。