ご説明内容(内視鏡的止血術)

<病名・症状>

上部消化管出血の内視鏡的止血術(胃潰瘍・十二指腸潰瘍):

出血を放置しておきますと出血により死亡したり、出血のために貧血になって重要臓器(心臓・脳・腎臓など)の重篤な合併症(余病)が起こり死亡するということが高頻度に起こります。これを治療・予防するのが止血術ですが、現在最も安全なのは内視鏡を使った内視鏡的止血術です。

内視鏡的止血術は胃潰瘍・十二指腸潰瘍のできているところに、針を刺して止血のための薬剤を注入する方法(注入時には痛みがあります)と、内視鏡の止血用に開発された特殊クリップによって血管や潰瘍をつまんで止血する方法とがあります。原理は、どちらも圧迫止血の応用です。針を刺す、あるいはクリップで粘膜をつまみますので、胃や十二指腸に穴があくこともあります(内視鏡的止血術による重篤な合併症な合併症の一つです。十二指腸の方が起こりやすい。)。また、針を刺すことや粘膜をつまむことによって、新しい出血の原因となることもあります(新しい出血が起こったことは、通常、処置をした直後にわかります)。上部消化管出血のうち一回の内視鏡的止血術で止血できる可能性は、患者さんの状態にもよりますが(衰弱している患者さんの場合はうまくいく確率が減ってきます)、50%から80%程度です。一回の内視鏡的止血術で成功しなかった場合には、二回目(・三回目)の内視鏡的止血術を繰り返していきますが、それでも止血できないときには、手術などの他の治療法を行わないと血はとまりません。

内視鏡的止血術の重篤な合併症を列挙すると、胃や十二指腸に穴があく、直後に新しい出血が起こる、血圧が低下(ショックといいます)したり心停止が起こったりする、血液が気管や肺に入り急性呼吸不全をおこす、などがあります。

治療上の必要性から上部消化管出血の内視鏡的止血術を施行いたしますが、治療による危険もありますので、以上をご理解して頂いてから、処置をはじめます。

なお、内視鏡的止血術がうまくいっても、出血により体力が低下しています。また、脱水も認められますので、心臓・脳・腎臓などの機能障害や感染症を初めとした、様々な合併症(余病)がでることがありますので、その点も十分にご理解下さい。

情報開示の世の中ですので申し上げますが、内視鏡的止血術を施行しても成功しなかったり、この内視鏡的止血術がもとで、死亡した患者さんは、報告されています。

以上のことを承諾いただいた上で、患者さん、御家族で、同意書に署名をお願いいたします。