ご説明内容:大腸ポリープ(大腸腫瘍)の内視鏡的な手術

内視鏡により大腸ポリープ(大腸腫瘍)を切除いたします。内視鏡を使用し、全身麻酔もしませんが手術です。

内視鏡的な手術でポリープ(腫瘍)で切除するといっても、メスで切ったり糸で縫ったりはしません。電気を使った熱で焼き切ります。ですから焼き切った部分は”やけど”として残ります。この回復には2週間以上必要です。この期間に、大きな2つの危険があります。それは切除部位からの大量出血と、切除部位の穿孔です。

大量出血の症状:イチゴジャムとかトマトケチャップのような、血便が出る。但し、トイレットペーパーに血液が少し付着する程度のことは、検査後には良くあることです。

穿孔の症状  :大腸に穴があく。症状は急にお腹が痛くなる

その頻度は、それぞれ1%以下と言われています。

発生する期間は、どちらも内視鏡的な手術2週間後まで発生すると言われています。

その場合の治療は、入院して点滴などをしますが、出血や穿孔の治療のために、本当の全身麻酔の手術が必要な場合もあります。

どんな状況で起きやすいかは、お酒を飲む方、緊張や運動などで血圧が上がったとき、などです。

特に内視鏡手術後のはじめの2日間の危険が高いと言われていますので、その間は、入院を続けていただきます。

ただし、内視鏡的な手術も完璧なのものではありません。腫瘍が取りきれなかった場合、または腫瘍が取りきれなかった可能性が高い場合や、切除したものを顕微鏡で見たときに(組織検査で)腫瘍が粘膜下組織の中に入り込んでいる場合には、本当の全身麻酔の開腹手術を受けていただくのが良いとされています。また、たとえポリープの一部に癌があっても、ごく早期のものでしたら80%は、全身麻酔の手術をしないで完治すると言われています。腫瘍には良性から悪性までいろいろとありますので、直ちに癌と決まったわけでなありませんが、早期にはっきりとした診断を付けるのが重要と考えています。その意味でも、内視鏡的な手術は重要と考えています。なお、私(原)は直接の経験はありませんが、内視鏡的な手術により、体調を崩して死亡した方もあるという報告があります(情報開示の世の中ですので、念のためお書きしました)。

なお、痛みのために、深部大腸(下行結腸〜上行結腸)に内視鏡が入らなかった時には、深部大腸についての治療は、別途、ご説明いたします。

※内視鏡的な手術後、2週間は飲酒は禁止です。また、ジョギングや水泳、山登りなどの過激な運動や、病院の近くにないところへの外出なども禁止です。大量出血(イチゴジャムとかトマトケチャップのような、血便が出る)と穿孔(大腸に穴があく。症状は急にお腹が痛くなる)に対応するためですが、そのような場合には、夜間でも病院に連絡してください。

内視鏡を介した感染症の可能性

器具は内視鏡学会のガイドラインに沿って消毒をしていますが、内視鏡器具を介した感染症もあり得ると言われています。細菌、ウイルス感染が報告されています。

内視鏡的な手術後に本当の手術になる見込み(全身麻酔を使用)

腫瘍の進展状態により必要になることがあります。

切除部位からの大量出血や穿孔が起こった場合には、全身麻酔の手術や血管造影術が必要になることも”まれ”ですがあります。

内視鏡手術後の入院期間

内視鏡手術後二泊三日が一般的ですが、状態によって変わります。

<一般的に内視鏡に使用する薬に関する主な副作用の説明>

以下の薬に対して、副作用を経験したことのある方は、必ずお申し出ください。

1)局所麻酔剤(キシロカイン):麻酔に使用しますが大腸検査では使用しないことが多いです

薬剤は歯科の麻酔と同種類のものです。アレルギー反応の出る方があります。重症のものはキシロカインショックといって、急速に血圧が低下することがあります。また、局所が部分がはれあがって、痛むという報告もあります。以上がアレルギー反応の可能性についての説明です。

大量に使用せざるを得なかったときには、全身の副作用として、呼吸抑制や不整脈の出現(いずれも重篤)があるといわれています。以上が中毒症状の可能性についての説明です。

2)鎮痙剤(ブスコパン):胃腸の動きを穏やかにするために使用します

有名な副作用は、緑内障の悪化・誘発、不整脈の誘発、前立腺肥大症の症状の悪化です。従いまして、緑内障、心臓病、前立腺肥大症の患者さんには使用しません。そのほかに、薬剤の作用として、瞳孔が散大しますので、検査後しばらくの間は「目のかすみ」「焦点が合わない」ということがあります。お気をつけください。その他にアレルギー症状も報告されています。代替え薬は3)のグルカゴンです。

3)鎮痙剤代用薬(グルカゴン):ブスコパンの代わりに胃腸の動きを穏やかにするために使用します

胃腸の動きを穏やかにする効果はブスコパンにおとります。しかし、一般的には緑内障、心臓病、前立腺肥大症の患者さんにも使用できます。この薬の副作用は、血糖値と関係するものが主です。血糖を上げる作用がありますので糖尿病患者さんには使えません。また、反動で血糖が下がることもあります(糖尿病患者さん以外でも起こります)。血糖が下がった時の症状は、強い空腹感、だるさ、冷や汗、生あくびが初期の症状です。症状が進むと意識消失を起こします。薬剤を使用した後に、強い空腹感、だるさ、冷や汗、生あくびの症状があった時には、病院スタッフにお申し出ください。血糖測定や、ブドウ糖の使用を行います。

※以上のキシロカイン、ブスコパン、グルカゴンの全てを使用しないで検査をすることもありますが、患者さんの苦痛が大きい、胃腸が動いているので病気を発見する精度が落ちる、検査を無事に行えないなどの欠点があります。

<一般的注意事項>

今までに薬を飲んで気分が悪くなったり、湿疹の出たことのある方

歯科などの麻酔薬で気分が悪くなったことのある方

喘息の方

バファリン(アスピリン)が体にあわない方

妊娠している方、あるいはその可能性のある方

当院の医師に申告していない病気があったり、薬の処方を受けていない方

以上の方はお申し出ください。