ジンセイとことばに置いた
ことばで人生と書き汚したくはなかった
嘘にまみれ 脅えきって凶暴で 収拾不能で
おろかながらも小ずるく 救いがたく身勝手だとしても


もはやジンセイは無垢のままに放免されないと知って
ことばは決して拭い取れない幕をその身にまといつづけている
そのために植物としてわたしは生き
それゆえに動物としてわたしは死ぬ

わたしをつらぬくナートゥーラーのわだち
あるいは結露するほかなかった余剰
逃げ水となってわたしを導いた無数のしるし
いつも分解されたがった切ない陥穽


どうして承知しているといえるだろう
ことばがかかえこむ負債の重さを
かくして動物としてわたしは生き
植物として死すべき生を繁らせる


そしてわたしはやがて捧げるだろう
さびしくも固有なる円環の軌跡を
綴りきれなかったジンセイの
ひそやかで変換不能の質量を


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 2022.06.20
「 ジンセイ 」