第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2005年3月28日 

モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲

魔笛はモーツァルトの最後のオペラとして知られ1791年3月から約半年間をかけて作曲、同年9月30日にウィーンで初演されています。日を経るにつれて人気は高まり、やがて死の床についたモーツァルトの大きな喜びと慰めになりました。

”エジプトの王子タミーノは夜の女王の娘パミーナの美しい絵姿に心をひかれ、悪僧ザラストロのもとから彼女を救い出そうと決心する。女王から護身用の笛”魔笛”をもらい、鳥刺しパパゲーノを伴いザラストロのところに向かった彼は、ザラストロは徳の高い太陽神につかえる僧であり、女王の方が悪の権化であることを知る。ザラストロが課した試練に耐えぬいたタミーノはパミーナと結ばれ、パパゲーノもパパゲーナという相手を得る。一方、夜の女王やその手下は、復讐のためにやってくるが、雷鳴とともに地獄に落とされ、大団円となる。”

この序曲は、アダージョとアレグロによって構成されており、また、曲の冒頭と、主部の提示部と展開部の接続部分で各々3回鳴る和音が、フリーメイソンを象徴しているとも言われています。

では、モーツァルト歌劇の最高傑作と言われる”魔笛”序曲により、モーツァルト没後200年の最後を飾るべく、このプログラムの幕を開けたいと思います。

(Magic ?) Flute A.K

ドボルザーク/チェロ協奏曲 ロ短調

古今東西で最も有名なチェロ協奏曲−−それがこの”ドヴォコン”です。独奏チェロは決然と歌いだす第1楽章第1主題、雄大で優しい第2主題。情感に満ちた第2楽章、躍動感溢れる第3楽章。いずれも素晴らしく印象的です。

私ども不肖のチェロ弾きにとって、この独奏部を「死ぬまでに1度でいいから弾きこなしてみたい」というのが見果てぬ夢。実際、とんでもない難曲でもあるのです。1楽章や3楽章に現われる重音の技巧的パッセージなど、とても人間ワザではありません。弾けたとしても、同時に絶命・昇天しそうです。

今からちょうど100年ほど前、ドヴォルザークは米国に招かれて2年あまり滞在しました。すでに50代に入り円熟の境地にあった彼ですが、黒人霊歌などの民俗音楽に刺激を受け、「新世界交響曲」や弦楽四重奏「アメリカ」といった作品に新境地を開きました。

チェロ協奏曲は滞在の最後を飾る記念碑で、やはり民族色の濃い作品です。彼が望郷の想いを込めて歌いあげたボヘミア的な作品−−というのが一般的な解説ですが、本日の独奏者である堀さんはインディアン音楽の影響を強く意識なさっています。

アメリカの香りを濃い目にブレンドした堀さんの独奏をお楽しみ下さい。また、3楽章の後半で我らがコンマスが奏でるヴァイオリンのソロも聴きどころです。

Cell M.K

レスピーギ/交響詩「ローマの松」

「ローマの松」は、20世紀イタリアの代表的作曲家レスピーギが、彼の愛する古都ローマを音で描いた「ローマ3部作」の2作目です。ではさっそく、ローマ「松めぐり」に出発いたしましょう。

まず、17世紀の名園ボルゲーゼ荘園に向かいましょう。ここは現在公園になっていて、輪になって踊ったり、兵隊ごっこをして元気に遊ぶ子供達の声が、松の木々の間を飛びかっています。

場面が変わって、我々はカタコンベ(地下墳墓)の入口に立っています。AD313年に公認されるまで迫害されていたキリスト教徒達は、迷路の様に地下深くはりめぐらされた埋葬所の中で礼拝を行っていました。その祈りの声が、耳を澄ませば、今でも聴こえてくるようです。

やがて日は落ち、月が昇りました。市の西部、ヴァチカン市国の南のジャニコロの丘で、月見とまいりましょう。松の木立を照らす美しい満月、夜風のざわめき、こずえに鳴くナイチンゲール・・・。

白々と夜が明け始めました。古代ローマの監査官アッピウス・クラウディウスにより建設されたアッピア街道は、深い朝もやの中です。かすかに行軍の足音が響き、遠くファンファーレが聞こえます。今まさに顔を出した太陽の光を浴びて、古代ローマの大軍団が、街道の松の横を通って、ローマへと凱旋してゆくのです。

Trombone H.I