第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2015年2月8日 

チャイコフスキー「スラブ行進曲」

1876年に勃発したセルビアとトルコの戦争は、同じスラブ民族であるセルビアを支援するロシアとトルコとの戦争に発展しました。セルビア独立戦争における負傷者救援基金募集のチャリティイベントのために、チャイコフスキーはわずか5日間で『セルビア=ロシア行進曲』と題された作品を書き上げました。これがスラブ行進曲の原型です。

因みに現在問題となっているロシアと、EUに近付きたいウクライナとの争いは、共にスラブ人であるところが、この当時の時代背景とは異なると言えるでしょう。

曲はティンパニとコントラバスの冒頭4小節の序奏から始まり、次にファゴットとヴィオラが葬送行進曲風の 重々しい主題を奏でます。これはセルビアの民謡で「輝かしい太陽よ、何故姿を変えるのだ」です。

中ほどでは弦楽器とトロンボーン、チューバにより力強くロシア国歌も歌われます。

コーダはアレグロとなり、クラリネットが明るい軽妙な旋律を奏した後、曲は次第に高潮してゆき、突然アンダンテになってコルネットとトランペットが勝利を告げるファンファーレを高らかに鳴らします。その後 再びアレグロとなり、トルコとの戦争に対するセルビア、ロシアひいては「スラブ民族」の勝利を高らかに謳いあげ、余韻など残さずに曲はきっぱりと終わります。

区民響ではこの曲を第24回定期演奏会(1999年6月)で取り上げましたが、この時はプログラムの最後を飾るメイン曲の位置付けでした。今回は2015年の好景気を祈願(?)して最初に演奏します。
(Tp: T.K..)

モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」

この曲は、1782年モーツァルトが26歳の頃、ザルツブルグの大富豪ハフナー家の祝賀会のために作ったセレナーデを後に交響曲形式にしたものと言われています。全体を通して祝典的な華やかさに溢れており、モーツァルトの数ある交響曲の中でも後の39番、40番、41番の3大交響曲と同様に高い人気を誇る曲です。

印象的な2オクターブの音の跳躍から曲は始まり、弦楽器の旋律が美しい2楽章、短い中にも堅実さと優雅さを合わせもった3楽章のメヌエットへと続きます。そして4楽章はプレスト(急速に)の指示通り、弦楽器のテンポの速い小さな音量のテーマに管楽器・打楽器が加わり、一気に音楽が高まり最終へ向かっていきます。

オーケストラが一糸乱れず音が駆け巡り旋律が流れていく様は思わずため息がもれる程の美しさですが、演奏する側に立てば、目指すところのあまりの高さにため息が出てしまうような曲でもあります。本日は暴走ではなく(!)美しいプレストで演奏会の第1部を締めくくれますように…
(Vn:A.H.)

チャイコフスキー 交響曲第3番「ポーランド」

6曲あるチャイコフスキーの番号付きの交響曲の中で、後期の4,5,6番は皆さん良くご存知のクラシック界の大スターですが、初期の1,2,3番の知名度は「冬の日の幻想」「小ロシア」「ポーランド」の愛称にもかかわらず大きく引き離され、演奏会で聴く機会も多くありません。成熟期への過渡的な曲として中途半端で中性的、と評価されがちの3番の演奏機会はとりわけ少ないですが、代表作の「白鳥の湖」の作曲直前に完成されたこの曲には、至る所にチャイコフスキーらしい抒情的で親しみ易いメロディーが散りばめられ、弾く者、聴く者をうっとりとさせます。

通常より1楽章多い「5楽章形式」のこの交響曲には様々な踊りのリズムも使われ、バレエ音楽を聴いている時のように自然に身体が動きます。少々長めの曲ですが、本日皆様にこの元気の良いちょっと珍しい曲との出会いを楽しんで頂ければ望外の喜びです。

第1楽章 「序奏とアレグロ」 (ニ長調 4/4拍子)(約15分) "葬送行進曲のように”と書かれた暗い序奏で始まりますが、次第に速度を速めて明るい第1主題がオケ全体で演奏されます。続いてオーボエが優美に歌う第2主題が木管へ展開し、また明るい第1主題に戻って畳み掛けるように勢いよくこの楽章は終わります。

第2楽章 「アッラ・テデスカ(ドイツ風に)」 (変ロ長調/ト短調 3/4拍子)(約8分) フルートでゆったりと始まる三拍子の優雅なリズムを、踊りを想像しながらお聴き下さい。
第3楽章 「アンダンテ」(ヘ長調/ニ短調 3/4拍子)(約10分) 同じくフルートのデュエットで始まる物憂げな第1主題が終わると、弦楽器による第2主題が心に染み入る、最も美しい楽章です。

第4楽章 「スケルツォ」(ロ短調 2/4拍子)(約6分)短いフレーズが様々な楽器の間で次々とリレーされる、軽妙な楽章ですが、技術的に難しい楽章です。

第5楽章「フィナーレ」(ニ長調 3/4拍子) (約9分) ポーランド舞曲のポラッカのリズムで書かれ、愛称「ポーランド」の由来となっています。弦楽器の力強い第1主題、少し寂しげな第2主題、第1主題を用いたフーガが展開した後、壮大なコーダが作る全曲のクライマックスをお楽しみください。
(Ob: Y.S.)