第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2013年12月22日 

交響管弦楽のための音楽 [芥川也寸志,1925 - 1989]

~みなさん、「也寸志」という漢字は読めましたか?~ 

その名は父である文豪・芥川龍之介が三男へ、「やすし」という音に万葉仮名を当て命名。 作曲家、指揮者、教育者、そして著作権協会理事長など、多岐にわたり活躍。NHK音楽番組では黒柳徹子さんと司会を務めるなど、テレビに映し出されるダンディな風貌とソフトな語り口は、きっとご記憶の方も多いはず。

この作品(1950年作曲、初演)は25歳の時、「NHK放送開始25周年記念管弦楽懸賞」特賞という出世作。当時の日本といえば、まだ高度成長期前の貧しい時代、私達の記憶にもまだ新しい頃の作品。

第1楽章 Andantino: 三部形式 小刻みなリズムに誘われてオーボエがユーモラスな主題を奏し、弱音器付きのトランペット、ヴァイオリンが細かな動きで続いて主題を奏する。映写機にかけられた古いフィルムが「タッタッタッタッ」と回り、忙しそうに行きかうモノクロームな人々が見えてくるような・・・。中間部では、コールアングレによる哀しげな旋律に時代絵巻のような空気も流れ、ふたたび冒頭のリズムが現れ淡々と終わる。

第2楽章 Allegro: ロンド形式 目を覚ますシンバルの一撃から始まる。この一撃に刺激され、管楽器も弦楽器も呼び覚まされ、一気盛んに全楽器がかき鳴らされる。やがて視界が広がりロマンティックで都会的な旋律が楽器を替えて現れたのち、ハッと我にかえった様子で以前の勢いを取り戻し、嵐のように終結。

この凄まじい「音」の推進力。高度成長期へと向かう当時の日本は、こんな喧騒に包まれていたのだろうか?

(Cb. M.S.)

シベリウス/交響曲第3番 ハ長調 Op. 52 [Jean Sibelius, 1865 - 1957]

シベリウスは19世紀後半から20世紀前半に活躍した作曲家です。彼の代表作『フィンランディア』は、きっと学校で習った方も多いでしょう。そのフィンランド特有のまさに北欧の雰囲気を持つ彼の曲に惚れ込んでしまう人も少なくないようです。 91歳という長い生涯の中で現在「交響曲」と呼ばれている作品は番号が付けられていない1曲を含め8曲あります。本日は今から約100年前に作曲された第3番を演奏します。

第1楽章 Allegro moderato :弦楽器には16分の細かい音符が連なる個所があり、とにかく難しく、団員達も練習の休み時間になると必ずこの部分をさらっていました。まさに努力の結晶の楽章です。

第2楽章 Andantino con moto, quasi allegretto:この楽章の途中に、チェロがとても良い音色を出します。いつも注意されてばかりの中、ここだけは指揮者からプロみたいだと褒めていだだきました。お楽しみに。

第3楽章 Moderato: Allegro (ma non tanto):6/8拍子ではじまり後半に4/4拍子となります。いわば4楽章構成のスケルッツォの楽章とフィナーレの楽章がくっついた形になっているようです。 難しい6/8拍子が終わったあと、ビオラ以下低弦でconenergia(エネルギッシュに)でフィナーレへと突入していきます。

シベリウスの交響曲は1番・2番・5番などが注目されがちですが、この第3番もとても弾いていて気持ちの良い曲です。聴いている皆様もお楽しみいただければと思います。
(Vla.M.N.)

サン=サーンス/交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付」 Op. 78[Camille Saint-Saens (1835-1921)]

横浜みなとみらいホールのシンボル的存在となっているパイプオルガン(愛称「ルーシー」)。大ホールに足を踏み入れると、正面にあるこの楽器の壮麗で且つ巨大な姿に圧倒されることでしょう。大小合わせて4623本ものパイプが、見えないところにもびっしり並び、60以上のストップ(音色を使い分ける機構)数があり、パイプオルガンだけでオーケストラのような多彩な音響を発することができます。

「オルガン付き」は、その名のとおりパイプオルガンが重要な役割を担っているわけですが、交響曲には珍しくピアノも登場し、管弦楽だけでは味わえない色彩感や音の広がりをお楽しみいただけることと思います。

サン=サーンスは、2才でピアノを弾き、3才で作曲をするなど、「神童」と称えられ、ピアノやオルガンの腕もさることながら、詩、数学、天文学、絵画などの分野でも才能を示していたという超人的な人物です。「オルガン付き」は彼が円熟期を迎えた51歳の時の作品で、2楽章構成ですが、それぞれ前後部に分かれており、実質4楽章の形といえます。

第1楽章(前半):憂いがちな短い序奏のあと、弦楽器がざわめくような旋律を奏でます。この旋律が「曲全体に渡り登場する基礎となる旋律=循環主題」となり変容を伴って随所に用いられます。 

第1楽章(後半):オルガンの和音に導かれて奏でる弦楽器のゆるやかで甘美な旋律は、クラリネット、ホルン、トロンボーンへと受け継がれます。ここではまだオルガンが主役ではないのが憎いところです。

第2楽章(前半):スケルツォ(冗談、ユーモアなどの意)の楽章です。急速なテンポ、激しいリズム、急激な変化などが特徴です。循環主題を活用した旋律も登場し、たたみかけるように息つく暇もなく進んでいきます。 ピアノの妙技にもご注目ください。

第2楽章(後半):冒頭の壮麗で輝きを持ったオルガンの和音が、この曲のフィナーレを告げ、循環主題がはっきりと確信を持った表情で現れます。オルガンの堂々とした響き、きらきらと舞い降りるようなピアノの連弾、金管楽器のファンファーレ、木管楽器の牧歌的な旋律、低音楽器や打楽器の活躍から、全楽器による重厚で希望に満ちた表情のクライマックスまで、聴かせどころ満載です。どうか最後の余韻までお楽しみください。
(Ob. E.M.)