第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2013年1月26日 

歌劇「魔笛」序曲 [M.A. Mozart, 1756-1791]

この曲は、モーツァルトが亡くなる年に作られた、彼の最後の歌劇です。ヴィーラントの『ドゥシニスタン』中の「ルル、あるいは魔法の笛」という童話から興した台本に、興行師からの依頼によりモーツァルトが作曲をしたものです。

歌劇(オペラ)といっても、様々なタイプがありますが、『魔笛』は「歌」と「歌になっていないせりふ」でお芝居が進行していく「ジングシュピール(歌芝居)」に分類されます。ミュージカルのようなものと思ってもらえば分かりやすいと思います。

物語は「王子様によるお姫様の救出劇」ですが、途中で悪者が入れ替わります。興行の対象が一般市民であったため、形式にとらわれずに分かりやすい物語構成になっています。歌劇全体を通して「3」を象徴的に使う場面が随所に見られ、今回演奏する序曲でも、和音を3回鳴らす箇所があります。

序曲はこの歌劇の導入部分になります。序曲以外にも有名なアリアなどがあるので、機会があれば実際の舞台も観劇してみて下さい。

(Cl. S.Y..)

「ロメオとジュリエット」組曲より [S.S. Prokofiev, 1891-1953]

セルゲイ・プロコフィエフは、20世紀を代表するロシアの作曲家です。本日演奏する「ロメオとジュリエット」組曲は、ドラマやCMで流れた影響もあり耳にされた方もが多いと思います。

この曲は、シェークスピアの同名の戯曲に基づきバレエ音楽として作曲されたもので、それを作曲者自身が組曲にしました。本日はその中から7曲を演奏します。

「モンタギュー家とキャピュレット家」(第2組曲-1)・・・ お馴染みの旋律は「騎士たちの踊り」です。ヴァイオリンとクラリネットが演奏します。再現部では、主題をサックスが演奏するのが印象的です。

「少女ジュリエット」(第2組曲-2)・・・ ジュリエットは10代前半の女の子です。彼女の可愛らしさが表現された曲です。

「仮面」(第1組曲-5)・・・ キャピュレット家の舞踏会に、ロメオが友人たちと仮装して忍び込む場面です。ここでロメオはジュリエットと運命的な出会いを果たします。旋律を受け持つ楽器が次々と入れ替わり、華やかな雰囲気を醸します。

「ロメオとジュリエット」(第1組曲-6)・・・ あの有名な「おおロメオ、あなたはどうして~」の場面です。切ない情景を弦楽器のSoliが美しく歌い上げます。

「タイボルトの死」(第1組曲-7)・・・ 前半はロメオの友人マーキュシオとジュリエットのいとこタイボルトの決闘、後半はマーキュシオを殺されたロメオの報復とタイボルトの死を表現した、激しい音楽です。ヴァイオリンパートがこの二人に負けず劣らずの死闘を繰り広げます。

「別れの前のロメオとジュリエット」(第2組曲-5)・・・ ロメオとジュリエットがこの世で生きて逢う最後の場面の曲です。どこか悲しさの漂う音楽を、ヴィオラソロをはじめとして、様々な楽器が演奏します。

「ジュリエットの墓の前のロメオ」(第2組曲-7)・・・ 悲劇的な結末を迎える物語は、この曲で締めくくられます。冒頭は劇的な音楽からはじまり、最後は静かに悲しく終わっていきます。

ところで、当団には声には出しませんが、「私が生まれた頃にはプロコフィエフはまだ生存していたよ」という団員が少なからずいるようです。古き良き曲が残る中で、私たちが生きている間にもこのような名曲が生まれていることに、深い感動を覚えます。そのような私たちが演奏する、20世紀に生まれた名曲「ロメオとジュリエット」をお楽しみください。
(Vla. M.N.)

交響曲第4番ホ短調 [J. Brahms, 1833-1897]

ドイツロマン派の巨匠ブラームスが、50歳を過ぎてから作曲した最後の交響曲です。ブラームスが交響曲を作曲することにたいへん慎重であったことは有名ですが、この第4番は1884年と85年の二夏をかけて、ウィーンの南西にあるミュルツツーシュラークで作曲されました。

この交響曲はたいへん特徴のある作品に仕上がっています。老境に入った心境からでしょうか、憂愁な曲想は他には求め難い魅力となっています。また作曲技法の上からも、古典的というよりはむしろバロック的特徴を持っています。第2楽章の主題には教会施法が、第4楽章にはバッハ時代に多用されたパッサカリアが用いられています。

第1楽章・・・ 冒頭の第1主題は、聴く者は誰であれ魅了されずにはいられぬ美しさを持っています。

第2楽章・・・ ホルンで奏される主題は長調でありながら施法が教会調であるために、くすんだ味わいを出しています。

第3楽章・・・ 前2楽章とはうって変わった明るく活発な曲想を持っています。

第4楽章・・・ パッサカリアによる変奏曲です。ここで使われた主題はバッハのカンタータから採られたともいわれているもので、ブラームスは8小節からなるこの主題を30回以上も繰り返して、その上で変奏を行い見事な終楽章を完成させています。
(Vc. T.T)