 |
序曲「フィンガルの洞窟」作品26 [F. Mendelssohn, 1809-1847]
メンデルスゾーンはドイツのハンブルクに生まれ、古典主義的ロマン派の作曲家として広く知られていますが、ピアニストでもあり、指揮者としても名を博していました。
1829年、初めてロンドンへ演奏旅行に行ったメンデルスゾーンは、友人とスコットランドを訪れ、ヘブリディース諸島のスタッファ島へと足を伸ばしました。
そこには、古代ケルトの叙事詩である「オシアン」にちなみ「フィンガルの洞窟」と名付けられた、海水の浸食によってできた巨大な洞窟がありました。フィンガルと云うのは、吟遊詩人オシアンが竪琴を手にして語り歩いた英雄物語の英雄の名前です。
この洞窟を目の前にしたメンデルスゾーンは強烈な印象を受け、風景画を描くと同時に作曲に取りかかり、翌年滞在していたローマで演奏会用序曲として完成させました。
この短い曲には、メンデルスゾーンのこの海辺の洞窟に対する絵画的、文学的な印象が色濃く込められており、ソナタ形式の美しい曲となっています。
どうぞ荒涼としたスコットランドの海辺の風景や、遠い昔の吟遊詩人に思いを馳せながらお聴きください。
|
 |
|
(VnY.O.) |
|
|
バレエ組曲「三角帽子」より [M. de Falla, 1876-1946]
スペインの作曲家・ファリャはスペインの民族音楽を取り入れた楽曲を多く残しています。この「三角帽子」もその一つで、元はアンダルシア地方の民話を元にしたバレエ音楽です。
その内容は「若くて賢い粉ひきの女房を見染めた代官(権威の象徴として「三角帽子」を被っている)が、何とかこの美しい女性をものにしようと悪知恵を働かせ手を尽くすものの、女房はその手には乗らず、逆にさんざんな目に遭ってしまう」という、書いてしまえば身もふたもないコメディですが、いかにもスペインらしい情熱に満ち溢れた曲から成る実に魅惑的な作品です。(…魅力をお伝えするためには、我々は日頃の節度やたしなみを捨てて熱く濃いラテン系になりきる必要がありますが、次から次へと変わる拍子、テンポに四角い頭がなかなかついていかない状況…)
曲は以下の順で演奏されます。
序奏 ※団員は慣れない楽器(?)を演奏します。ご注目!
第一部: 昼下がり ~ 粉屋の女房の踊り(ファンタンゴ) ~ 葡萄の房
第二部: 隣人たちの踊り(セギディーリャ) ~ 粉屋の踊り(ファルーカ) ~ 終幕の踊り(ホタ)
これらの踊りの曲の中に、上記のストーリーが時折顔を出します。例えば数回登場するファゴットのソロ、これは代官を表現していますが、「権威の象徴」にも関わらず、実に不器用で滑稽に扱われているのが面白いところです。
|
|
|
(Fg. Y.M.) |
|
|
交響曲第6番「田園」 作品68 [L. v. Beethoven, 1770-1827]
交響曲第6番「田園」は、1801年の夏ベートーヴェンがその自然の風景を愛していたウィーン郊外のハイリゲンシュタットで作曲されました。
この曲の標題「田園」はベートーヴェン自身がつけたもので、そのことからも分かる様に、自然への喜びや感謝の想いが曲全体に溢れています。またこれもとても珍しいことなのですが、楽章ごとにベートーヴェン自身による標題がつけられています。これらの標題はそれぞれの楽章の内容を私たちに暗示してくれます。
第一楽章 「田舎に着いた時の晴れやかな気分」
第二楽章 「小川のほとりの光景」
第三楽章 「田舎の人々の楽しいつどい」
第四楽章 「雷雨、あらし」
第五楽章 「牧人の歌―あらしの後の喜びと感謝の感情」
宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」で金星音楽団が演奏する「第六交響曲」はベートーヴェンのこの交響曲第6番「田園」である、という説もあります。「田園」の美しいメロディーに宮沢賢治の世界を重ねて聴いてみるのもまた一つの楽しみ方かもしれません。
|
|
|
(Va.Y.G.) |
|