第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2012年1月28日 

交響詩「レ・プレリュード」 [F. Liszt, 1811-1886]

 交響詩「前奏曲(レ・プレリュード)」は、リストの13曲の交響詩のうち、3番目につくられた曲です。元々は男声合唱曲の序曲だったものを後に交響詩に改めました。

 「交響詩」とは、文学・思想・絵画など、音楽以外の形で存在するテーマを音楽で表現しようという管弦楽曲の形式であり、リストが創始しました。「交響詩(symphonic poem)」というネーミングもリストの考案です。

 この曲のテーマは、フランスの詩人ラマルティーヌ作の「詩的瞑想録」という詩です。「人生とは死への前奏曲に過ぎない」と謳うこの詩にリストは共感し、次の4部の構成で自身の人生観を表現しました。

 人生は愛により明けるが(第1部)、やがて苦闘の嵐の中に暮れる(第2部)。自然の美しさは心に平安を与えるが(第3部)、ひとたび戦いのラッパが鳴れば人は必ず戦場に帰るものだ(第4部)。

 冒頭の、低弦に始まり終盤に再度登場する主題は、死への暗示だと言われています。華々しい曲調が表すのは、未来への期待か、死への不安の裏返しか、それとも何か…。

 練習の度に人生って厳しいなと思わせられる、もとい、人生って楽しいなと思わせてくれるこの曲。果たして今回は嵐や戦いやもろもろを乗り越え、無事に明るい未来に辿り着けるのでしょうか!?
(Fg.F.U.)

「スパルタクス」組曲より [A. I. Khachaturian, 1903-1978]

 ハチャトゥリアンはロシアの作曲家で、バレエ曲としては「スパルタクス」と「ガイーヌ」が有名です。

 スパルタクスは、紀元前100年頃のローマ帝国で、奴隷制度に対して反乱を起こしたいわば英雄です。バレエは、1960年頃ボリショイ劇場での公演を皮切りにブレイクし、映画化やTVドラマ化もされています。奴隷から逃げ出した後、ローマ帝国執政官クラッスス(とその愛人エギナ)の軍隊と戦いますが次第に追いつめられていくという筋です。またこの曲は、後から管弦楽組曲に再編されました。

 本日は、組曲第2番から「スパルタクスとフリーギアのアダージョ」、組曲第1番から「エギナのバリエーションとバッカス祭」、「カディスの娘の踊りとスパルタクスの勝利」の3曲を演奏します。1曲目のフリーギアは彼の妻の名で、オーボエが二人の再会を甘美なメロディラインで奏で始めます。2、3曲目は題名からも想像できますが、「ガイーヌ」の”剣の舞”や”レスギンカ”の如く、ハチャトゥリアンお得意のアップテンポでビートの効いた仕上がりになっています。折しも来週からロシア・ボリショイバレエ団「スパルタクス他」日本公演が始まります。

 私たちの演奏で興味を持たれたら、足を運んでみるのも良いでしょう。
(Vn.N.S.)

交響曲第2番ホ短調 [S. V. Rachmaninov, 1873-1943]

 ラフマニノフは1873年ロシアで生まれ、何よりも偉大なピアニストとして名を馳せた。一方作曲家としての彼は、20世紀初頭の音楽シーンにおいてしばしば「遅れてきたロマン派」と称される。確かに同時代のドビュッシーやバルトークらに比べると、作風に回顧的色合いが濃いと言えよう。チャイコフスキーを目標と仰いだ彼は、ピアノ曲に限らず交響曲にも力を入れた。しかし1897年に初演した第1交響曲は極めて不評で、彼が重いノイローゼに陥ってしまったことは有名である。本日演奏する交響曲第2番は1907年の作品で、ある批評家が「ロシア抒情交響曲」と名付けたほど好評を博した。

 60分ほど掛かる大作であり、多様なメロディーに満ち溢れた作品であるため、区民響25年の歴史の中でも最難関に位置付けられる曲である。ラフマニノフは作曲家としてとても謙虚であったため「好きなように短くしてくださいね」と指揮者に常々言っていたそうだが、本日はノーカット版で演奏する。

 第1楽章:凡そ5分に亘る陰鬱で長大な序奏の後、2拍子の主要部となる。ソナタ形式だが2つの主題以外にも様々なメロディーがあり、最も難しい楽章と言える。

 第2楽章:2拍子の威勢の良いスケルツォ。トロイカの疾走にもたとえられる。途中突如として始まる弦のフガート。ラフマニノフがフーガ風に書くことは大変珍しい。

 第3楽章:とても美しい曲で、冒頭部はしばしばテレビCMにも使われる。クラリネットのむせび泣くようなソロは、聴く人の涙を誘う。

 第4楽章:短い前奏の後、豪放な舞曲主題へと続く。トランペットに半音階を多用させるところが、20世紀の音楽であることを実感させる。既出の素材を活用しながら国民楽派にふさわしい堂々とした終止を行う。
(Tp.:T.K)