第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2009年2月16日 

「ローマの謝肉祭」序曲 [H. Berlioz, 1803-1869]

この曲は本来1839年に初演されたオペラ「ベンヴェヌート=チェルリーニ」(主人公はベルリオーズ好みのルネサンス期ヴェネツィアで活躍した奔放な芸術家)の中から謝肉祭の場面の音楽を中心に、1844年に演奏会用の管弦楽曲として再構成されたものです。

前半の牧歌的な部分の旋律は、いかにもそれにふさわしいイングリッシュホルン(オーボエの兄貴分)と、つづいてヴィオラによって奏でられます。イングリッシュホルンは管弦楽曲の中にしばしば独奏楽器として登場しますが、ヴィオラパートが延々16小節も主旋律を担当することは極めて珍しい。ベルリオーズはこれまた珍しいヴィオラ独奏付きの交響曲「イタリアのハロルド」を1834年に作曲しているので(パガニーニが作曲を依頼したとも言われる)、ヴィオラに対する思い入れが強かったのかもしれません。普段は目立たないヴィオラの音色をお楽しみください。

後半は一転して、イタリアの舞曲サルタレルロのリズムを取り入れた、飛び跳ねるような軽快な曲調となります。謝肉祭(英語ではカーニヴァル)は、断食などの節制に努めなければならない四旬節の前に、羽目をはずしてバカ騒ぎする祝祭のことで、古ゲルマンの春の到来を祝う祭りに起源するとも言われています。イタリアでは、ヴェネツィアのカーニヴァルが有名です。

(Va T.H.)

交響曲第39番 変ホ長調 K543 [W A. Mozart, 1841-1904]

39番から41番までのいわゆる3大交響曲は1788年、モーツァルトの亡くなる3年前の夏に1ヵ月半という短期間に作曲されました。一説によればこの39番に至っては4~5日で書かれたというのですから驚きです。

3大交響曲はそれぞれ3曲とも全く違った方向性を示していますが特にこの39番は「白鳥の歌」という俗称が付けられているように清楚でありかつ人生のはかなさを感じさせるモーツァルトの最高傑作の一つとして長年親しまれてきました。

後年楽劇の作曲で有名なワーグナーは39番を「楽器の持つ<歌う>という表現可能性を頂点まで高め、それが、心の無限の憧れの底知れぬ深みをとらえうるまでにした」と記しています。

第1楽章 アダージョ-アレグロ 変ホ長調 : 25小節に及ぶ序奏は高度の転調技法が駆使されており、それが終わると生き生きとした躍動感を持った第一主題と優美な歌を持つ第二主題が続きます。

第2楽章 アンダンテ コン モート 変イ長調 : 変イ長調の長閑な第一題はあたかも憧れ ヘ短調の激情的な経過部は哀しみ この二者が交錯する楽想はこの交響曲の中の白眉です。

第3楽章 メヌエット、アレグレット 変ホ長調 : 生き生きとしたメヌエット。クラリネット2本のデュオで奏されるトリオはとても印象的です。

第4楽章 アレグロ 変ホ長調 : 終始小気味の良い躍動感に満ちたフィナーレ。木管同士の対話、高弦と低弦との対話や展開も見事です。あっさり曲を閉じることも何ともはかなさを感じます。
(Vc. T.T.)

交響曲第2番 ニ長調 作品43 [J. Sibelius, 1865-1957]

森と湖の美しい国フィンランドの国民的作曲家であるシベリウス。この交響曲第二番は有名な「フィランディア」の2年後に書かれた曲で、「フィンランディア」同様に北欧の風土・自然が感じられる名曲です。

第1楽章 アレグレット ニ長調 : 弦のざわめき、木管の軽やかなリズム、それと呼応するホルンのメロディ・・何とも言えず美しく幻想的にこの曲は始まります。

第2楽章 テンポ・アンダンテ、マ・ルバート ニ短調 : ティンパニや低弦のピツィカートに促されるようにファゴットが憂鬱な旋律を歌います。中間部でバイオリンが奏でる安らかなメロディは、作曲家がイタリア旅行でインスピレーションを受けたキリストのイメージともいわれています。

第3楽章 ヴィヴァーチッシモ 変ロ長調 : 弦楽器による急速で荒々しいスケルツォとオーボエの旋律がのどかで牧歌的な雰囲気のトリオが交互に顔を出した後、最後は盛り上がって休みなく第4楽章に突入します。

第4楽章 アレグロ・モデラート ニ長調 : 雄大な旋律から始まる壮大な楽章。後半は低弦と木管のうねるような動きでじわりじわりと盛り上がり、最後は金管楽器大活躍で感動的に終わります(そして演奏者はへとへとに…)
(Fg. Y.M.)