第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2008年5月31日 

ウェーバー 歌劇「オベロン」序曲 [C. M. von Weber, 1786 - 1826]

ウェーバーと言えば、やっぱり「魔弾の射手」ですよね。でも今回は「オベロン」なんです。

それにしても「オベロン」ってなんだか変な響きですよね。何の事なんだろうと思って調べてみたら、妖精の王様の名前のことでした。シェークスピアの作品(真夏の夜の夢)にも出てくる名前だそうで、海の向こうでは結構一般的です。

この歌劇では、この王様は普段は遊んでばかりで、いつも奥様(いわゆる后ですね)と喧嘩ばかり。挙句の果てに、「本当の愛を知る男女を見つけられなかったら離婚よ!」と言われる始末。人間だったら他人の事で、夫婦の仲が壊されるなんて冗談じゃないと思うところでしょうが、そこは妖精の王様。これは一大事と、一組のカップルを見つけ、そのカップルに魔法で様々な困難を起こします。カップルにしてみたら迷惑な話ですが、オベロン様から(奥様に内緒で)もらった魔法の角笛で困難を克服し、最後にちゃっかり結婚までしちゃって、めでたしめでたしというお話です。

こういった荒唐無稽なお話はイギリス人はお好みのようで、ロンドンで行われた初演は拍手喝采だったようです。ただ、演奏会の定番とまではいかず、今回のように、その波乱万丈の全編をソナタ形式でドラマティックにまとめて、演奏されることが一般的ですね。

魔法の角笛や、カップルが愛を語り合っているところを、想像してみて下さい。
(Cl S.Y.)

ドヴォルザーク スラブ舞曲 [A. L. Dvořak, 1841-1904]

苦労の末、オーストリア政府による若手音楽家向けの奨学金を獲得する事ができたドボルザークは、その審査員だったブラームスに才能を見出されました。ブラームスは自身が「ハンガリー舞曲集」で大成功した経験に照らして、ドボルザークにも民族色の濃い舞曲集を書くように勧めました。もともとスラヴの民俗音楽に深い興味と愛着を持っていたドボルザークはこれらの原型の中からリズムだけを借りてメロディなどは自身の手によるオリジナルな音楽を生み出しました。

舞曲集はそれぞれ8曲からなる第1集(1878年)と第2集(1886年)があり、共に最初はピアノ連弾用に書かれましたが、あまりの大成功にそれぞれ直ぐにドボルザーク自身によってオーケストラ用に編曲されました。

曲は明るく、楽しく、親しみやすく、舞曲が本来もっている生き生きとした躍動感と、合間に見せる優美さと哀愁を感じさせる部分のバランスが絶妙です。

オーケストラでは演奏会のアンコール曲として取り上げられる機会が多いのですが、今回は三矢先生の意向により第1集より5曲を抜粋して、一味違った組曲風な趣でお届けいたします。
(Trb. H.K.)

交響曲第4番 変ロ長調 Op.60 [L. v. Beethoven, 1770-1827]

私がアマチュア・オケの活動に関って約10年ほどであるが、演奏会のプログラムの曲目解説というものをやったことがこれまでなかった。以前、同様の依頼を2・3度受けたことはあったが、依頼が来るタイミングが悪かったり、曲目について解説できるほどの知識がなかったりなどを理由に丁重にお断りしていた。

ViolinパートのY.U.さんが演奏会係(演奏会のプログラムやチラシを作成する係というものらしい)を担当されていて、たまたま同じパートで比較的お話する機会が多く、断りにくかったというのもあるが、依頼がきたのもちょうどG.W.が始まるときだったのと、曲およびそれに係る知識をわずかではあるが、たまたま持っていたということもあり、今回この大役?をお引き受けすることとした。

ベートーヴェンの交響曲第4番(ベト4)は、有名な第5番《運命》の作曲を途中で中断させた中で書かれた曲です。一般的な交響曲では、通常、各管楽器は少なくとも2パートあり、それぞれ2人以上の奏者を必要とします。しかし、このベト4では、フルートが1パートしかなく、ベートーヴェンの交響曲の中で最小の編成となっているのが特徴です。有名な《運命》や第6番《田園》などに比べ演奏機会は少なく、どちらかというと地味な存在の交響曲ですが、演奏してみて非常に楽しい曲です。この演奏会でこの曲を初めて聴くというお客様にも楽しんでいただけるよう、各楽章の聴きどころ、見どころ等を交えて簡単にご紹介しましょう。

第1楽章 序奏付きのソナタ形式(主題掲示部→展開部→主題再現部)の構成です。暗く静かで緊張感のある雰囲気の序奏から次第に盛り上がり、主部に入ると一転して軽快な音楽に変わります。よく聴くと、序奏の始まりの音型は、有名な《運命》の出だし“ジャジャジャジャーン”の後に続く音形と同じです。

第2楽章 展開部のない変則的なソナタ形式の構成です。途中現れるクラリネットの息の長いメロディが印象的です。長い息が必要ということなので、該当箇所でクラリネット奏者が途中で酸欠状態にならないことを皆で祈りましょう

第3楽章 主部→トリオ→主部から成る複合三部形式にトリオと短縮された主部の繰返しが追加された構成となっています。上下に快活に動きながら進む主部と、一転してのどかな雰囲気のトリオのコントラストが見事な楽章です。トリオにおけるのどかな雰囲気は、何となく《田園》交響曲を思い起こさせます。

第4楽章 序奏なしのソナタ形式の構成であり、16部音符の高速の旋律がこの楽章の全体を駆け巡ります。アマチュア・オーケストラではこの16部音符を余裕の指裁きで処理できる人とそうでない人が入り混じり、波乱がいつ起きてもおかしくない冷や冷やの連続の楽章です。

この16部音符の旋律は主に弦楽器によって演奏されますが、後半の主題再現部およびコーダの途中では、ファゴットとクラリネットが数小節間だけそれぞれ単独で受け持つ部分があり、プロの奏者でも技術的な難所として知られております。今回のファゴットおよびクラリネットの首席奏者は、この難所をどう乗り越えるか本楽章最大の聴きどころ、見どころです。客席からは見えにくいかもしれませんが、彼らの華麗なテクニックに要注目!!
(Vn M.M)