第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2008年5月26日 

ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲 [C. Debussy, 1862-1918]

クラシック音楽ファンなら誰しもがご存知のドビュッシーによるこの作品は、マラルメの詩にインスピレーションを得たものであるが、かのピエール・ブレーズをして「<牧神>のフルートと<雲>のイングリッシュホルン以来、音楽の息遣いが変わった」と言わしめるほどフランス音楽のみならず西洋音楽史上においても大変重要な意味をもつ作品である。

マラルメの詩は長く難解だが、つまりは「牧神(半獣神)」と「ニンフ(妖精・美の女神)」の「追いかけっこ」であり、寝覚めにニンフをみつけた牧神が彼女らをつかまえ、薔薇の茂みに連れ込もうとするが逃げられてしまい、追いかけ疲れてまた寝入ってしまう、といった官能的とも他愛のないともとれる内容である。

しかしこの音楽はそれを「写実的に」描いたものでもなく、「印象のみを」音にしていった、そんな作品であり、冒頭のフルートの調べが皆様を不思議な「おはなし」へといざなうであろう。おそらくはおのおののアタマ、またはココロの中に浮かぶ景色は異なるであろうが。

おれはこの曲を「聴きたいので」降りる(この曲を演奏しない)ことにした。
(Cl S.S.)

ドビュッシー 交響詩「海」 [C. Debussy, 1862-1918]

ドビュッシーは音楽家になる前は、船乗りになることを真剣に考えていたそうです。海をこよなく愛した人で、海を主題にした作品をいくつか作曲して、その中でもこの曲は珠玉と言われています。海のもつ力と美しさへの賛歌です。

美術の世界で、このころフランスでは印象派絵画が盛んでしたが、音楽においても印象主義の手法が円熟期にあったなかで、この作品は代表作のひとつとなっています。

ドビュッシーは、日本の芸術や工芸品に大変興味を持っていたようで、彼の所蔵する版画の中に、葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』という、巨大な波頭の立っている海のかなたに富士山が頭をのぞかせている、そう、皆さんご存じのあの有名なものがあったのです。

とてもデフォルメされていて、実際にあんな激しいことはありませんけれど… この版画が彼の交響詩『海』を作曲するうえで大きな影響を与えたと言われています。さて、各楽章は、

  第一楽章「海の夜明けから真昼まで」
  第二楽章「波のたわむれ」
  第三楽章「風と海の対話」

と、なっています。さて、私たちの演奏から北斎の版画の情景をどのように想像していただけますでしょうか。海の響きに浸りながら、ゆったりとお楽しみください。
(Va A.A.)

交響曲第5番 ホ短調 Op.64  [P. Tchaikovsky, 1840-1893]

チャイコフスキーは「マンフレッド」を含む7曲の交響曲を完成させました。最後の5番と6番「悲愴」は上演回数が多く、副題のない5番はクラシックファンから通称“チャイ5”で親しまれています。当団創設21年にして実に20年振りの演奏です。

「陰鬱」な1楽章、「甘く美しい」2楽章、「お洒落」な3楽章、「勇壮」な4楽章、全体を貫く「緻密なオーケストレーション」はチャイコフスキーの本領発揮で、公演を重ね本人は自信を深めました。中間部で弦楽器が忙しいトリッキーな3楽章は、指揮者コンクールの課題によく取り上げられるとか(三原先生談)

総力戦の中でも注目したい楽器はクラリネットです!1楽章冒頭に奏でられる暗いメロディー(運命の動機)が有名ですが、他にも聴き所満載なのです。2楽章ではホルンの美し~いメロディーに途中からオブリガートで絡みますし、中間部と最後のメロディーも印象的です。3楽章のコーダにもファゴットと共に運命の動機で登場します。

この曲の良いところは最後必ず盛り上がれるところでしょうか。4楽章のコーダでザックザックと行進が始まる頃、弦楽器は右手が疲れ管楽器は酸欠がちです。ここはカッカとせず、冷静沈着に演奏し続けたい踏ん張りどころです。最後には音の渦でお客様を包み、幸せな気分を味わって頂ければ団員一同この上ない喜びです。

随所に仕掛けてある三原マジックでペテルブルグの風を感じて頂けると幸いです。
(Vc A.I.)