第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2005年3月22日 

「大学祝典序曲」作品80

マイヤー=フェルスターの戯曲『アルト=ハイデルベルク』で、ある小国の王子が入学のため下宿(ここの娘との悲恋が、この戯曲の主題)に到着した場面のト書きに、《庭のほうから、歓喜の歌「ガウデアームス(されば楽しまん)」が高らかにひびきわたる。学生全員が歌っている》とある。「ガウデアームス」はこの序曲の結尾として使われている。
それでは楽しもう、ぼくらが若いうちに
楽しい青春ののちに、悩み多い老年の後に
ぼくらは大地に帰るのだから
大学万歳、教授万歳/ぼくらのすべての仲間万歳、
彼らは常に若々しい!
1879年、ブラームスはブレスラウの大学から名誉博士号を授与され、その返礼として大学祝典序曲を書いた。20歳の頃訪れたゲッティンゲンで大学生と交わった折りに覚えた4つの学生歌を使った接続曲風の序曲で、彼の管弦楽曲中、憂いなく快活に終始する唯一の曲と言ってよい。

ドイツの学生歌は主に宴会で歌われ、その主要なテーマは、友情、愛、酒(ビール)、決闘であった。しかめっ面の肖像しか残っていないブラームスおじさんが、若い頃には酒場で学生たちとビールを飲みながら大声で愉快に歌ったであろう姿を想像しながら聴くのも、また一興である。

さて、さきの場面、王子が学生達のところへ去った後、お目付け役の年老いた教授はこう呟く。『ガウデアームスか――人生の歓びか――われわれのようなものは、疲れはてたポンコツだ――

はたして本日の演奏は、若々しく喜びに満ちたものとなるか、疲れはてたポンコツとなりますことか・・・。
(Trb H.I)

「ハイドンの主題による変奏曲」作品56a

この作品は、1873年、ブラームス40歳の夏、ミュンヘン近くのシュタルンベルク湖畔のトゥッツィングで書かれ、変奏曲の名人と言われたブラームスの最高傑作と言われている作品です。ブラームスは、ハイドンの未出版作品の楽譜「野外のパルティータ」と題された6曲の管楽合奏曲を知り、その中の第6曲第2楽章「聖アンソニーのコラール」と記された主題を大変気に入りその主題をもとに大がかりな変奏曲を作曲ました。そしてできたこの曲、初演は1873年11月2日、ウィーンにて、ブラームス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団です。また、この作品には管弦楽用のほかに、2台のピアノ用(作品56b)も書かれました。曲は、主題、8つの変奏曲及び終曲(フィナーレ)からなっています。

ハイドン作曲木管五重奏「ディベルティメント」の2楽章がこの聖アンソニーのコラールを基にしており、木管奏者にとっては大変親しみある主題です。 この曲がわたしからみてとてもステキな理由、それはなんと言ってもテーマの美しさです。そして変奏曲。優美でロマンティックな美しさをたたえた第3変奏、生き生きとした活力に富んだ第6変奏、フルートの活躍する第7変奏、パッサカリア形式を使い壮大な建築物を思わせる終曲・・・・私にとっては聖歌に通じる神をたたえる美しい曲であり、本日演奏できることが大変幸せです。
(Fl. R.T)

「交響曲第3番」

ブラームスは毎年避暑に行きそれぞれの地で名曲を完成している。交響曲3番が作曲されたヴィースバーデンは、王侯貴族も憩うドイツの温泉保養地である。1883年、50歳のブラームスは美しいこの街で流麗な旋律とよどみない構成をもつこの交響曲を一夏で書き上げた。当地で出会った34歳年下の歌手志望の女性ヘルミーナとの関わりが、美しい自然に対する憧憬と相まって、この曲に流れる叙情性と感傷を特別なものにしている。

第一楽章(ヘ長調 アレグロ・コン・ブリオ) 管楽器が高らかに歌い上げる「自由にしかし楽しく」の意味の最初の音型は「今日も一日がんばるぞ」の宣言と聞こえる。明るく前向きで活力に満ちたこの楽章は、穏やかな和音の余韻を残して2楽章へと繫っていく。

第二楽章(ハ長調 アンダンテ) 最初の穏やかなクラリネットの旋律は木漏陽の中の散歩のようである。時々薄雲がかかる午後、ゆったりと時が流れ、最後は静かに消えていく。

第三楽章(ハ短調 ポコ・アレグレット) 最初の憧れに満ちた切ないメロディーが有名。沈みゆく夕日がきらきらと水面を揺らす川縁を恋人と腕を組んでの散歩を思わせる。チェロからバイオリン、そして管楽器へと移り歌われるこの旋律が二人の未来をどう予感させるか、は本日の演奏次第か?

第四楽章(ヘ短調からヘ長調へ アレグロ)暗い挑戦的な空に、力強い旋律で立ち向かう。何度かの戦いの後、最後は嵐の後の虹の様に晴れやかさと静けさを以って静かに曲をとじる。
(Ob. Y.S)