第35回定期演奏会曲目解説
本文へジャンプ 2005年3月31日 

シベリウス/交響詩「フィンランディア」

『フィンランディア』と言うと、吹奏楽部員だった私は、何度かコンクールの自由曲として聞いていましたが、中学校の”音楽鑑賞”という夏休みの宿題で、初めてオーケストラの演奏を聴きました。あまりのスケールの大きさ、迫力にショックを受け、鳥肌が立つ様な感動を受けた事を思い出します。弦楽器という存在でこれほど重厚感が出るとは、本当に驚きでした。

その頃、”オーケストラ”は、私にとって手の届かない大人の世界という感じで、唯一土曜日の8時から3チャンネル「N響アワー」ぐらいしか縁がありませんでした。それが今では、念願のオーケストラで、大先輩に囲まれ、必死で譜面とにらめっ子。難しいテンポ、拍子は、指を折りながら数えている今日この頃です。

その難しいテンポの持ち主『フィンランディア』とは、御存知の通り、祖国フィンランドの事で、シベリウスの人一倍の愛国心が伝わって来る曲です。

曲はまず、ロシアの圧政に苦しむ祖国の姿を表します。重々しく、また何かが迫って来るような感じで始まります。この不安は、ヘ短調の主部にはいっても続き、木管にこれをなだめるような主題が示され、これも次第に興奮して、いったん終止します。これからテンポを変え、ティンパニに金管を加えて行進曲ふうな特徴のあるリズムで刻まれます。

第2部となり、その終わりは、アレグロとなって上昇的な主題が現われてきますが、この第3の部分では、次に歌われる木管のたっぷりした表情の主題が有名です。そして同じメロディーを再び弦が演奏します。

これが一転して、また行進曲ふうのリズムが現われ、終結部は、金管は叫び、弦はクレッシェンドして、fffになって、フィンランドの勝利を確かめるように力強く曲を閉じます。

この堂々としたティンパニー・金管の主題は、シベリウスもビックリ、ベルリンフィルも顔負けの演奏になるでしょう・・・(???)

Bassoon A.M

シベリウス/「カレリア」組曲

この組曲は、1893年にカレリア地方のヴィボリ大学学生協会の依頼によって、同地方の古い歴史による野外劇のためにつくられた作品です。劇上演後、シベリウスは8曲から成る演奏会用組曲を作りましたが、その後(序曲)と3曲から成る組曲に改編しました。

カレリア地方は、今日ではそのほとんどが旧ソヴィエトのものになってしまいましたが当時はフィンランドと旧ソヴィエトの国境のすぐ東にあり、ヴィボリを中心都市としていました。

シベリウスは1892年、アイノ・ヤルネフェルトと結婚し、カレリア地方でハネムーンを過ごしました。この時フィンランドの古い伝説や詩歌を数多く耳にし、故国の歴史と民族性について多くのものを得ています。そして、ちょうど翌年にカレリア地方からの野外劇の伴奏音楽の依頼があったので、シベリウスは前の年に得たすべてを、この作品にそそぎこんだのです。

この作品は、奥深い幽玄なムードを持つ「間奏曲」から始まり、もの思いに沈むような感情にあふれた「バラード」、そして明るくチャーミングで、しかも芸術的な「行進曲風に」の3曲で編成されており、シベリウスならではの、故国愛にあふれた作品の一つになっています。

Flute A.K

ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」

先日、富山行きの飛行機に乗っていた時のことです。私は機内放送をクラシック番組に合わせると、ん・・・?どこかで聴いた様な曲が。・・・そうです。かかっていたのは「田園」の1楽章でした。この日は土曜日で、つまりオケの練習日だったんです。罪悪感を感じてしまった私は”これはきっと練習をサボった罰だ(!?)”と思いつつ、最後まできちんと聴いてしまいました。

余談はこれ位にして本題に入りましょう。この曲は、当時の伝統が破られた5楽章形式になっています。第3楽章以降の3つの楽章が止まることなく続けられるのもこの曲の特徴です。また「田園」は典型的な標題音楽で、第1楽章「田園に到着した時の愉快な気分」、第2楽章「小川のほとりの情景」、第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」、第4楽章「雷と嵐」、第5楽章「牧歌、嵐のあとの喜びと感謝の気持ち」、というようにすべての楽章にそれぞれ小さな標題がつけられています。自然をこよなく愛し、心からその美しさにひたり、その偉大さをたたえたベートーベンならではの作品といえるでしょう。

しかしながら、「単なる描写ではなく、田舎の生活が人の心に呼び起こす感情を表現したかった」というのが彼自身の本音のようです。出来れば私達は本音の部分まで近づきたいと願っていますが、それ以前の問題で”描写”さえ満足に出来るかどうかが極めて不安なところです。

第2楽章の弦楽器のおびただしい16分音符のスラー、全体力が消耗し、手首がけんしょう炎になりそうな第4楽章、そして極めつけは第5楽章の、弾いていて絶対に自分のリズム感が怪しくなる3連譜!(弦楽器中心でごめんなさい)−どうです?みなさんも不安になったでしょう?

けれどもその試練(?)を乗り越えつつ、聴く側のみなさんも演奏する側の私達もこの曲に触れることによって楽しい気分を味わえれば幸いです。どうか最後までごゆっくりお聴きください。

Violin R.K