【鹿鳴館の怪人】
雪「り、律子さぁん、や、や、や、やっぱりもう出ましょうよぉ…」
律「いい?雪歩。お化け屋敷なんてみんな作りものなんだから気押されちゃ駄目よ。」
ゴーー。天井から風が吹きつけられる。
雪「ひいっ!怖い物は怖いんですよぉ……」
必死の形相で私にしがみつく雪歩。
律「雪歩、腕痛いってば。」
雪「あっ!そ、そのぉ……ごめんなさい……」
ぷしゅ〜〜〜。横から風が吹きつけられた。
雪「やっ、やーーー!」
またこれだ。私は一歩進む度に大騒ぎになる雪歩に辟易していた。
番組の企画でなければこんな所、私だって入る気ないのに……
雪「り、律子さーん……」
律「なぁに、雪歩。」
雪「わ、私……もう…限界ですぅ……」
そう言って力なく壁に寄り掛かる雪歩。
律「ちょっと雪歩ってば!まだ入って5分も経ってないじゃない!」
雪「きゅ〜〜。」
律「雪歩!起きなさいってば!雪歩!まったくもう……」
とんとん。
律「何よ!今忙しいんですからいちいち肩叩かないでくれます?」
とんとん。
律「だから肩を叩か…」
そこまで言ってはたと気づく。
雪歩は目の前で気絶している。じゃあ今後ろから私の肩を叩いているのは?
振り向いちゃいけない、振り向いちゃいけないとはわかっているけど……
?「イ゛ェア゛ア゛ァァァァ!」
律「キャーーー!!」
伊「アンタたちホント情けないわね〜。あんまり遅いから入ってみたら入り口で足止め。
同じトリオのメンバーとしてやんなっちゃうわ。」
雪「で、でも怖いものは怖いんですぅ……」
律「だからっていきなり背後から脅かす事ないじゃないのっ!!」
伊「大体こんなのただの作り物じゃない。あら?ここ何かあるわね?」
律「ちょっと伊織!先行かないでよ!」
雪「律子さん、伊織ちゃん、お、置いてかないで下さい〜。」
先に行っていた伊織が急に立ち止まる。
律「伊織どうしたの?」
雪「り、律子さん、急に立ち止まらないで……」
伊「ウボァァァァーー!」
律&雪「キャーーー!」
急に振り向いた伊織の顔が化け物になっていた。
伊「アンタたち何度引っかかれば気がすむのよ。お面よ、お面。ぷっ!律子なぁに?
その格好。」
律「こ、腰が……」
雪「…………」
伊「ヤダー。あんまり私を笑わせないでよー。」
律「私だって好きでこんな格好してるわけじゃあ……」
プッツン!
雪「…フフ……ウフフフフ……」
なんか無表情のまま変な笑いを始める雪歩。
伊「ちょっと雪歩、アンタそれは怖いって。」
律「雪歩?」
雪「…フフ……ウフフフフ……」
不気味な笑いを発しながら雪歩は伊織へと近づく。
伊「もしもし、雪歩…さん?」
雪「…フフ……ウフフフフ……」
伊「ちょ、ちょっと律子、雪歩をどうにかしてよ!」
律「無理よ。ほら私まだ腰抜けてるし。」
雪「…フフ……ウフフフフ!」
伊「キャーーー!」
−−−翌日−−−
伊「あ、あの〜雪歩さん、おはようございます。」
雪「あ、伊織ちゃんおはよーってどうしたんですか?」
伊「べっつにぃ〜。」
あの後、ただただ無表情に笑い続ける雪歩がずっと伊織を追い回していたのを
目の当たりをして雪歩の理性がキレタ時の恐ろしさが身に染みたのでした。
律「って私ずっと腰抜けて見てただけですけどね。」
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