【Queen's Paradise】
P「律子、もうまもなく出番だ。」
律「もうそんな時間ですか。わかりましたプロデューサー。」
P「それとそれ以降のスケジュールだが……」

 私がデビューしてから半年。プロデューサーはとても有能で私が思っている事にも
 すぐに気付き、スケジュール管理もバッチリ。
 でも……何か物足りない。

P「律子、律子聞いてるのか?」
律「あっ!す、すみません。もう一度お願いします。」
P「疲れてるようだな。今週の金曜日なら休みを入れられそうだが入れておくか?」
律「いえ大丈夫です。」
P「わかった。じゃあさっきの話だがな……」

…………………………
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………………
…………
……

小「じゃあ律子さんお先に失礼しますね。」
律「あ、小鳥さんお疲れ様です。」
小「律子さんもあんまり根詰めないようにして下さいね。」
律「もちろんですよ。一応これでも私アイドルなんですから。」
小「じゃあお先〜。」

 いつものように小鳥さんが帰るのを見送った後、私はため息をついた。

律「ふぅ……」

 確かに今のプロデューサーは何にでも気が利いて私のやり易い様、やり易い様にしてくれる。
 でも……なんか歯車が合わない。

P「お、まだいたのか。ちょうどいい。律子、話がある。」
律「なんでしょうか?」
P「実は今週一杯で俺は律子の担当プロデューサーが外させてもらう。」
律「っ!!それってどういうことですかっ!?」
P「律子が俺とやっていて仕事がやり難いという事は薄々感じていた。だから俺は律子の
  為を思って社長にお願いしたんだ。来週からは新しい担当が受け持つから安心しろ。
  今週中に全ての引き継ぎは終わらせておく。」
律「なんでですか……なんでそんなことを……」
P「少しでもアイドルに負担がかかるようではこの先やっていけないからな。早目の決断だ。」
律「で、でもっ!」
P「いいか?ビジネスと言うのは効率が全てだ。少しでも障害があるようなら排除する。
  当たり前のことだろ?」
律「そんな……今まで信頼してたのに……」
P「信頼?笑わせてくれるな。律子が思っているのは信頼なんかじゃない。ただの独りよがりだ。」
律「独り…よがり?」
P「ああ。俺が律子をアイドルとして押し上げるのにどれだけの金をばら撒いてきたと思ってる?
  まあその分の元は全部取り返してきてるがな。この間も変な記者がいたがちょっと小突いたら
  慌てて逃げて行きやがる。」
律「え?」
P「アイドルを育てるにはな表の顔と裏の顔の両方が必要ってことだ。そんな男をお前は信頼?
  これを笑わずにいられるか。」
律「あ……あ……」

 とんっ。気付かぬ内に私は後ずさりしていたのか背中が壁に当たっていた。

P「どうしたんだ律子。俺が怖いのか?」

 プロデューサーが徐々に近づいてくる。

律「い…嫌っ!」
P「何が嫌なもんか。アイドルを育てるには黒い顔も持つ必要があるんだよ。」
律「こ、来ないでっ!!」
P「ふふん結局は律子もただの小娘か。世間の偶像にもならんなハハハハハ!」
律「嫌〜〜〜!!」

…………………………
……………………
………………
…………
……

P「り…こ……おい律子!起きろってば!!」
律「ん……プロデュ……あっ!嫌っ!!」

 パシッ!私は自分の肩を揺さぶっていたプロデューサーの手を払いのけた。

P「律子どうしたんだ?急にうなされたと思ったら……もしかして冷蔵庫にしまってた
  プリンを勝手に食べたの怒ってるのか?」
律「……え?……さっきの……夢?」

 ここは……事務所の私の机?

P「おいおい疲れてるのか?なんなら今日はレッスンせずにもう帰るか?」
律「プロデューサー、私…アイドル向いてない?」
P「いきなり何を言い出すんだよ。」
律「……私このままアイドルを続けていいのよね?」
P「本当に大丈夫か?今日休んだ方がいいんじゃないか?」
律「……大丈夫です。多分……」
P「まあ律子がそういうのならいいけど……何か困る事があったらすぐ俺に言ってくれよ。
  俺が力になる。……お金が絡む事以外でな。」

 だらしなくて全然しっかりしてないプロデューサーだけど常に私の事を見ててくれる。

律「ありがとう…ございます…」
P「うわっ!律子が素直に御礼を言った!今日雷雨か?」
律「なんでですかっ!これは罰として夕御飯でもおごってもらわないと割りに合わないですね。」
P「ぐ……まあ善処はしてみるよ。トホホ……」

 どんな時でも私の事を気遣ってくれる。私は一人じゃない。信頼出来るプロデューサーが
 ちゃんといる!

律「じゃあ早速行きましょ、プロデューサー。」
P「あ、おーい、律子待ってくれよ〜。」

 この人となら私はきっと頑張れる。うん、きっとそうに違いないわ!

P「律子〜、そんなに走るなよ……」

 そう言いながら彼はハンカチで汗を…汗を…ん?

律「…プロデューサー、その……黄色い布はなんですか?」
P「ん?これってハンカ……げっ!なんじゃこりゃ!!」

 プロデューサーが広げたのはどう見てもハンカチではなく黄色いパンティだった。

律「んっんっんっ、プロデューサーにはお仕置きが必要みたいですね!」
P「ま、待て!話せばわかる!!ってなんでポケットからまだ出てくるんだ!?」

 プロデューサーのポケットから2枚、3枚とパンティが出てくる。
 そして一緒にポロリと落ちた紙のようなものを私は見落とさなかった。が!!

律「こんの変態大人っ!!」

 スパーン!

P「ギャーーーッス!」
律「まったく何考えてるのよっ!!」

 私はさっき落ちた紙を拾い確認してみる。

『兄→(C)へ
 亜美たちからのプレゼントだよん♪
 いおりんに頼んで買ってもらったのあげるね。
 律っちゃんにプレゼントしてみたら?
             あみ まみ』

律「…あ、あははは…はぁ……あの子たちのしわざね。プロデューサー起きて下さいよ、
  プロデューサーってば!」




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