【ENCORE CONQUEST】

P「律子、ミキの活動状況はどうだ?」

 私は社長室にて現在の状況を聞かれていた。

律「まったく問題ないですね。むしろちょっとくらいまともにレッスンして欲しい
  くらいですよ。」
P「ははは確かにな。ミキが本気でレッスンしたら歌姫と呼ばれた千早すら軽く
  超える実力がありそうだからなぁ。」
律「そうですよ。まったくミキったら。」
P「まあ律子も俺がもうちょっと頑張れればもっとアイドルとして活躍出来たん
  だけどな。」

 急に私の話題に振られてドキリとする。

律「そ、そうですか?」
P「ああ。社長になった今でもまだ後悔してるよ。ま、その経験があるからこそ
  今の俺があるんだけどな。」
律「じゃあもしですよ、私がまたアイドルやりたいって言ったら……どうします?」
P「う〜ん………律子はプロデュース業に勤しんでもらいたいが……考えておくよ。」
律「本当に……それでいいの?」
P「律子がやりたいと言うんだったらそれは考えておく必要がある案件じゃないか。
  それにその経験はアイドルとしてもプロデューサーとしても損はないだろ?」
律「それはそうですけど……」
P「まあこの話は一旦おしまいだ。まずはミキのプロデュース業に専念してくれ。」
律「わかりました。」
P「それにしても律子のプロデューサー姿も段々板についてきたな。」
律「それってどういう意味ですか?」
P「いやいやそのだなぁ……」

 社長の長い鼻の下を見て気付く。

律「で、社長。一体どこを見てるんですかっ!!」
P「いやいやいや、律子のスーツ姿も見慣れてきたなぁとね。」
律「そういいながらずっと私の腰の部分しか見てないじゃないですか!!」
P「だって、胸に注目すると律子怒……ハッ!?」
律「しゃっちょ〜!覚悟しなさいっ!」

 スパンッ!スパパンッ!!

P「ギャーーッス!!」
律「まったく、昔から変わんないんだから。」

−−−それから半年後−−−

P「律子、ちょっといいか。」
律「なんです?社長。」
P「ミキのプロデュースの事なんだが……実に言い難いんだが来月で活動停止に
  してもらいたい。」
律「えっ!な、なんでですか!?まだミキも私も頑張れますっ!!」
P「だが今のままではマンネリ化してきて世間からは飽きられているんだ。このまま
  活動を続けるよりミキにも律子にも新しいスタートを切って貰いたいんだよ。」
律「…………」
P「律子がもっと続けて行きたいと言う気持ちは痛い程わかる。でもこの悔しさを
  バネにもっともっと成長して欲しいんだ。」
律「………はい……」
P「俺も社長の身になって高木社長の苦しさがよくわかったよ。活動停止を決断
  するってのはこんなにも辛いんだなって。悪いが引退コンサートの会場の手配、
  スケジュールの調整は頼むぞ。」
律「…わかりました。」

 悔しい。自分の力不足でミキをトップアイドルまで押し上げられないどころか足を
 引っ張っている自分に。

P「それとだな、俺と比べたら律子は相当頑張った方だと思う。」
律「でも!!」
P「自分が力不足だった、そう自分で追い込むなよ。俺がそうだったんだからな。」
律「……え?」
P「俺も活動停止を宣告された時は散々後悔したさ。あの時あれをやっていれば
  よかった。もっと売り込んでおけばよかったってね。」
律「…………」
P「だがそれも経験のうちだ。律子は今回が初プロデュースだろ?ここまで頑張って
  きたんだ。胸を張っていいんだぞ。」
律「でも……ミキになんて言えば………」
P「そう言うだろうと思ったからな。ミキ、入ってこい。」
美「はーい、おじゃまするの。」

 ガチャッ。

律「ミキ……」
美「律子、そんなに悲しい顔しちゃ駄目なの。」
律「でも………」
美「ミキね、律子にプロデュースしてもらって楽しかったよ♪」
P「まあ律子が気にする事もわかってる。うちにはアイドルはミキしかいないからな。」
律「そうですよ。ミキが引退したら出来たばかりのうちみたいな弱小プロダクションは
  やっていけませんよ………」
P「そこでだ、ミキが引退したら即座に再デビュー出来る道筋を用意した。いや、俺も
  久し振りだからちょっとなまってるかもしれんがな。」
律「え?まさか……社長がプロデュースするんですか?」
P「まだまだ俺も椅子で踏ん反り返るってのは性に合わなくてね。」

 少年のような笑みを浮かべる社長。でも社長がプロデュースするという事は……

律「私はお払い箱……ですか………」
美「律子いなくなっちゃうの?社長さん、そんなのミキやだな。」
P「何を言ってるんだ?律子には律子で頑張ってもらわないと困るんだよ。」
律「へ?」
P「そのだな……ごにょごにょ………」
律「え、ええ〜〜〜!!」
美「ミキにも教えて欲しいな。」
P「それは内緒だ。」
美「社長さん酷いと思うな。」
P「ともかく律子、引退コンサートの件とさっきの件、よく考えておいてくれ。」
律「は、はい!」

−−−星井美希、引退コンサート当日−−−

律「ミキ、準備はいい?」
美「もちろんなの!みんなにいっぱいいっぱいのミキを見せるの!」
律「ふふっ。やる気は十分みたいね。いいわ、頑張ってきなさい!」
美「まかせてなの!」

 舞台袖からステージへ躍り出る美希を見送って私は私で自分のなすべき事をする。

律「大丈夫、やるべき指示は出した。後はミキ次第ね。」

 私は舞台袖で美希を見守りながら随時スタッフの人と軽い打ち合わせをする。
 裏方役も結構大変だわ。

美「みんな、楽しかったよね!でもこの曲でみんなとお別れなの。でもミキはまた
  みんなのところにぜーーったい帰ってくるからね!約束なの!」

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「ミキ、お疲れ…キャッ!」

 私はステージから戻ってきた美希に労いの言葉をかけると美希がいきなり私に抱き
 ついてきた。

美「ミキ、とーっても楽しかった。みんなと一旦お別れなのは残念だけどまたこんな
  ライブやりたいな。律子のお陰なの!」
律「そんな……私はそんな凄い事してないし。」
美「ううん、そんなことないよ!律子が色々とやってくれたからミキここまで頑張れた。
  ありがとうなの。」
律「………………」

 言葉が出ない。トップアイドルまで美希を連れて行く事の出来なかったこの私に
 御礼なんて……

美「あれ?律子、泣いてるの?」
律「う、ううん。泣いてなんか………」
P「二人とも御苦労様。」
美「社長、ミキ頑張ったよ。」
P「そうだな。じゃあもっと上を目指す為にまた頑張るぞ。」
美「でもミキお腹空いちゃった。おにぎりない?」
律「もうミキったら……まあそんな事だろうと思って用意しておいたわよ。」
美「律子だ〜いすき♪」

 ミキが私に抱きついてくる。

律「ちょ、ちょっと!ミキったら!!」
P「ははは。それでだ、再確認だがまずミキは今後俺が再プロデュースする事になる。
  それで問題はないか?」
美「また律子にプロデュースしてもらいたいけど仕方ないよね。」
P「それから律子には一旦プロデューサー業を休業してもらう。」
律「……はい。」
P「その代わりだ、うちの財政事情も厳しいので臨時で再びアイドルとしてデビュー
  しても貰う。」
律「事前に聞いてましたけど……本気なんですね?」
P「ああ。少しは舞台裏の事情も知っただろ?ならばどうすれば売り込めるかとか
  プロデューサー面でもアイドル面でも両方攻めれるスーパーアイドルになれると
  俺は信じてるぞ。」
律「そこまで考えてるのでしたら文句はいいません。で、私は自分自身でプロデュース
  するんですか?」
P「プロデュース業は一旦休業といっただろ?俺が面倒を見るよ。」
律「社長が!?身体持つんですか?」
P「おいおい、俺だって伊達に765プロで荒波にもまれてきた訳じゃないんだぞ?」
律「どうだか。」
美「って事は今日から律子が私のライバル?」
律「まあそんなところかしら?」
美「律子、よろしくなの!」

…………………………
……………………
………………
…………
……

−−−6/23、再デビューの日−−−

律「で、なんでこんな衣装なんですか。」



P「まあ文句言うな。それに文句言ってる割には顔がにやけてるぞ?」
律「えっ!?」
P「久しぶりのライブだからな。まあわからんでもないが……問題なく行けるな?」
律「勿論です。この日の為にレッスンしたんですから。」
P「じゃあ頼むぞ、律子。」
律「ええ、任せなさい。」

 会場からは私を待っているファンのコールが聞こえてくる。

『律っちゃん!』『律っちゃん!』『律っちゃん!』『律っちゃん!』

 その声に導かれるように私は再びライトの降り注ぐステージへと走り出す。

律「みんなーー!ただいまーーーー!!」

『わぁぁぁぁぁ!!』『律っちゃ〜〜〜ん!!』『おかえり〜〜〜!!』

律「本当に久しぶりだけどみんな元気にしてた〜?」

『せ〜の、律っちゃんお誕生日おめでと〜〜!!』

律「あ、ありがと〜!久し振りだけどみんな、最初はあの曲で行くわよ!せ〜の!」

    『魔法をかけて!』





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