【世界はそれを愛と呼ぶんだぜ】

P「律子、明日オフだろ?」
律「ええそうですけど。」
P「明日俺と出掛けないか?」
律「またですか?この間遊園地に行ったばかりじゃないですか。」

 ついこの間の観覧車で律子がほっぺにキスされたことが頭に浮かんでしまい顔が火照る。

P「え〜、あ〜……そのだな……」
律「あ、あれはもう忘れて!」

 律子の顔も真っ赤だ。

P「と、とにかく明日10時に駅前で待ってるからな。」
律「う、うん……」

…………………………
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………………
…………
……

−−−自宅にて−−−

律「ど、どうしよ?またプロデューサーとお出掛けなんて……なに着て行けば
  いいのかしら?」

 いくらお年頃とはいえまったくこう言う事に興味を持てなかった自分が恨めしい。
 こんな事だったらアケミがよく読んでいた雑誌に少しくらい目を通せばよかったかしら?

律「まさかこんな事で私が困るなんて思わなかったわ……」

 鏡の前には色んな服が散乱していた。
 コンコン。

母「律子、ちょっといいかしら?」
律「なぁに?お母さん。あ、でも今ちょっと部屋散らかってるから……」

 しかしその言葉が終わる前にお母さんはドアを開けていた。

母「あらあら。律子にもとうとうそういう人が出来たのね。」
律「な、なに勘違いしてるの?ちょっと明日着る服を探してただけなんだから!」
母「はいはい。で、相手はだ〜れ?田辺くん?」
律「なんで私が田辺なんかと出掛けなくちゃいけないのよ!」
母「じゃあプロデューサーさん?」
律「…………………(//-//)」
母「ほんと律子はわかり易いわね。プロデューサーさんだったら誠実だしお母さんは
  安心だわ。」
律「だ、だからそうじゃなくって!!」
母「はいはい。それで明日は何を着て行くのかしら?」
律「……まだ決まってないの……」
母「そう……じゃあいい物を律子に貸してあげる。」

 そう言って母は部屋を出てとある衣装を持ってきた。

…………………………
……………………
………………
…………
……

P「ちょっと早く来過ぎたかな?」

 今の時間は9時20分をまわったところだった。

P「ま、仕方ないか。そこで少し缶コーヒーでも飲むか。」

 と、その時携帯電話が震える。見てみると9時23分受信で律子からだ。

−−−メール−−−
件名:律子です。

ちょっと似合わない格好してますけど笑わないで下さいね。
それではのちほど。
−−−ここまで−−−

P「なんだ?これ?」

 意味不明なメール内容に俺は思わず呟いてしまった。

P「まあその内わかるだろう。」

 俺は缶コーヒーをすすりながら改札を見ていた。
 駅に沢山の人が出入りする中、俺は改札から出てきたとある少女に目がとまった。
 その少女は花柄のワンピースに白い帽子を深々とかぶっていた。

P「あの子、いい感じだな。律子があの衣装を着て雑誌の表紙を飾ったりしたら
  映えるだろうなぁ。」

 まさに職業病な事を考えてるとその少女は時間を気にしているのかしきりに
 腕時計を見ている。またその仕草がまたなんとも言えない。
 そしてきょろきょろを辺りを見渡し始め……ん?あのちらっと見えたのは三つ網?
 少女がこちらに向かって駆けてくる。 

律「プロデューサー、こちらにいたんですね。」
P「え!?り、律子!?」
律「似合わないからあんまりジロジロ見ないで下さいね……」

 俺は律子の姿に見とれていて二の句を告げないでいた。

律「やっぱり私の格好、変ですか?」

 凄い勢いで俺は首を横に振り指定して見せた。

P「いや本当に驚いた。凄く似合ってるよ。」
律「本当ですか?」
P「本当さ。いつもの律子の服装と違っていてちょっと心を奪われてたんだ。」
律「そこまで大げさだとなんか怪しいですね。実はこの服私のじゃないんです。」
P「ほぅ。」
律「この服、お母さんが昔着てたものらしくて……そ、その……」
P「ん?」
律「お、お母さんが、お、お父さんとの…デ、デ、デートで着てた服って……」
P「…………………」
律「…………………」

 あまりの事に俺は頭の中が完全に真っ白になっていた。

律「あー!そうそう、今日はどこへ連れて行ってくれるんですか?」
P「…………………」
律「プロデューサー?」
P「あ、ああ、すまんすまん。今日の目的地は水族館だ。」
律「水族館ですか。」
P「ん?嫌なのか?」
律「そうじゃないですけど……」
P「とにかく行くぞ!」

 俺は強引に律子の手を取り駅へと向かった。

…………………………
……………………
………………
…………
……

−−−水族館−−−

律「うわぁ、凄い光景ですね。」

 律子は館内に広がる光景に見入っていた。
 水槽内では職員による餌付けが行われていた。

律「あ、餌あげてますよ、餌!」
P「ははは、そんなにはしゃぐなよ。」
律「そんなこと言われても……初めて来たんだし……」
P「そうだったな。他にもイルカショーやアシカショーも見れるぞ。」
律「それも楽しみですね!……知識では知ってましたけどやっぱり百聞は一見に如かずですね。
  想像してた大きさとまったく違いますし。」
P「そりゃそうだろう。俺だってまだ数回しか来た事ないけど新しい発見も多いしな。」
子「わ〜い!」
母「こうちゃん、走りまわっちゃいけませんよ!」

 親子連れだろうか?まあよく見かけるような風景だが律子の顔を暗くするには十分だった。

律「私もあの子くらいの時に来てみたかったな。」
P「大丈夫。俺がいくらでも連れてくさ。」
律「プロデューサー……」
P「ほら、もうすぐイルカショー始まるぞ。」

 俺はまたまた強引に律子の手を取った。

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「今日は本当にありがとうございました。」
P「なに、気にするな。」
律「ところでプロデューサー、1つ聞いてもいいですか?」
P「ん?なんだ?」
律「なんで……なんで私にここまでしてくれるんですか?」
P「そりゃまあ………(小声で)律子の事が…………」
律「え?なんですか?最後の方よく聞き取れなかったんですけど。」
P「ん、なんでもないよ。じゃあ帰るか。」
律「ちゃんと答えて下さいよ!」
P「そうか?じゃあ宿題はまた次回と言う事で。」
律「と言う事は次のオフもどこか連れて行ってくれるんですか?」
P「まあ善処するよ。」
律「ホントですか!?あ……別にそんなに無理しなくてもいいんですよ?」
P「無理なもんか。律子の為だったら俺はなんでも出来る。」

 俺はじっと律子を見つめた。やはりちゃんと伝えるべきだ。

律「な、なに私の顔をじっとみ、見つめてるんですか。そんなに見たって何も出ませんよ?」
P「律子。」
律「な、なんですか。あ、わかりましたよ!まーた変な事考えてるんでしょ?
  例えば……『キミの瞳に恋してる』なんて訳わかんない事言おうとしてたりして。」
P「……いや、悪いけど俺は律子に『恋』は出来ない。」
律「えっ!?…………そうですか………」

 明らかに落胆した表情をする律子。

P「何と言っても『恋』という字は下心ありだからな。」
律「だ、誰がそんなうまい事を言えって言いましたか!!」

 どこからともなく取り出したハリセンで俺を叩こうとする律子。

P「だから俺は律子に『恋』する事は出来ない。だが俺の心は律子の中にある。」
律「はぁ?何を言ってるのかぜんっぜん意味分からないんですけど。」
P「愛してる、律子。」
律「………へ?」
P「先日の遊園地での事を俺ずっと考えてた。その結論だ。」
律「えっと……その………」
P「急にこんな事言ってすまなかったな。じゃあ帰るか。」
律「ちょ、ちょっとなによ!勝手に一方的に突っ走って!そんなの急に言われても
  私困る!」
P「そうだな、悪かったよ。」
律「あ、謝らないで下さいよ!別に……ああっ!もう訳わからないわよっ!!」
P「とりあえず帰ろう。な?」
律「……うん……」

 律子との帰り道。2人の間に会話はなかったが律子はどういう結論を出してくれるん
 だろうか?
 だがその話はまた別の物語。今はそっとしておこう。





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