【イジワルなあなた】

律「雪歩なにしてるの?」

 事務所前でうろうろしている雪歩を見かけて声をかけてみた。

雪「えっ!あっ……その……」
律「プロデューサーでも待ってるの?」
雪「いえ、そう言う訳じゃないんですけど……あの子が気になって……」
律「あの子?」
雪「い、いえ、なんでもないですっ!」

 雪歩は急いで事務所に駆け込んでしまった。

律「あの子?一体誰のことかしら………」

−−−翌日−−−
雪「……はぁ………」

 雪歩は今日も事務所前で誰かを探しているようだ。

律「一体誰を探してるのかしら……」

 私は柱の陰から雪歩を見ていた。

春「あれ?律子さん、どうしたんですか?」
律「し、しーーーっ!!」

 空気を読まずに春香が大きな声で私に話しかけてきた。

春「そっちに何かあるんですか?」
律「ああ、もうっ!!」
雪「ふぇ?律子さんに春香さん、どうしたんですか?」

 やっぱり雪歩に気付かれてしまった。

律「もう、春香の所為だからねっ!」
春「え?え?え?」

 何が何だかわかってない春香であった。

律「最近雪歩変よ。なにかあるんだったら相談に乗るわよ?」
雪「そ、そのぉ……じ、実は……」
春「そうだ!私ケーキ作って来たんですよ。それを食べながらお話しません?」

 確かに事務所前で立ち話もあれね。

律「いいわね、そうしましょ。雪歩もそれでいい?」
雪「え?で、でもぉ……」
春「いいから、いいから。私の自信作なんだから。」
雪「え、ええっ!?お、押さないで下さい〜……」

…………………………
……………………
………………
…………
……

 はむはむはむはむ。3人で黙々とケーキを食べ続けている。

雪「ふわぁ、春香ちゃん。このケーキおいしいですぅ。」
春「私の自信作って言ったでしょ?」
律「……悔しいわね。」
春「どうしたんですか?律子さん。」
律「このケーキ美味しすぎるのよ。どういうことかわかるわよね?」
春「美味しいならいいじゃないですか〜。」
雪「も、もしかして……食べすぎちゃう…ってことですか?」
律「そうよ!こんなの出されたら太っちゃうじゃない!!」

 そう言いながらも私はぱくぱくとケーキを口に運ぶ。

雪「春香ちゃん、律子さん、お茶入りましたよ。」
律「ありがと、雪歩。」
春「ケーキには飲み物必須だもんね〜。」

 ケーキを一通り平らげ、一息ついたところで再び雪歩に問う。

律「それで雪歩は誰を探してるの?」
雪「え?…あ……そのぉ……気になる子が…いるんです……」
春「キャ〜〜☆それでどんな子?どんな子?」

 完全にノリノリな春香。

律「ほぉら、春香ちょっと落ち着きなさい。雪歩が話せないでしょ?」
春「あ、すみません。私興奮しちゃってつい……」
律「さ、続けて。」
雪「はい……実は1月前にあの子を見かけてから毎日のようにあの子を思ってるんですぅ。」
春「どんな子?どんな子?」
雪「その……目がぱっちりしてて………」
春「うんうん!」

 はぁ……このやりとり、まったく学校と同じノリね。どうしてこう恋愛事にみんな首を
 突っ込みたがるのかしらね。

雪「だいぶ小柄な子なんですぅ。」
春「私もあってみたいな〜。」
雪「あの時はあの子、私の顔を舐めてくれて…」
春「だ、大胆〜〜!!」
律「でも雪歩、私達はアイドルなんだからあんまりよくない話かもしれないわよ?」
雪「そうですよねぇ……でもあの子、最近見かけないから私気になって気になって…」
春「その子はいつも何時頃見かけたの?」
雪「えっとぉ…大体お昼過ぎですぅ。」
春「律子さん、ここは1つ一肌脱ぎませんか?」
律「と言ってもねぇ……」
雪「ええっ!?お二人にはそんな御迷惑かけられないですよぉ。」
春「いいからいいから。」
雪「あ、あのぉ!」

 春香は強引に雪歩を連れて外に出てしまった。

律「まったく春香は……」

…………………………

春「はぁ……見つかりませんでした〜。」
雪「あの子どうしちゃったんだろう……ぐすっ。」

 しばらくして2人とも肩を落としながら帰って来た。

律「雪歩はともかく春香は何してるのよ!もっと情報をちゃんと聞いてからじゃないと
  誰を探すのかもわからないじゃないの!」
春「そういえばそうですね。」

 わかってなかったのかいっ!!と思わず私は手が出そうになった。

雪「あ、あのぉ…お二人には悪いんですけどやっぱり私一人で探してみますぅ。」

 そう言って足早に去っていく雪歩。

律「雪歩……」
春「律子さん、やっぱりここは見守ってみません?」
律「…そうね。これは雪歩の問題だもんね。」

 なんにも力になれない自分の不甲斐無さに情けなくなった。

…………………………
……………………
………………
…………
……

−−−あれから2週間−−−
律「雪歩あれから毎日探してるわね。」
春「本当に可哀想ですよ。」
律「やっぱり手を貸してみない?」
春「律子さん、善は急げですよっ!」

 と、その時雪歩が事務所に駆け込んで来た。

雪「律子さん!春香ちゃん!あの子がとうとう見つかったんですぅ!!」

 ニャ〜と鳴き声が同時に聞こえてきた。
 雪歩の手には白い子猫が抱えられていた。

律「え?もしかして探してたのって……」
雪「はい、この子猫ちゃんですぅ。」
春「あれ?雪歩が気になってるのって男の子じゃなかったの?」
律「私もそう思ってたわ。」
雪「そ、そんな……わ、私が男の人を探すなんて………」

 雪歩は俯いて顔を真っ赤にしている。

春「この子可愛いわね〜♪雪歩、この子抱っこしてもいい?」

 と春香が手を出そうとすると……

猫「フーーーー!!」
律「しっかり警戒されてるわね。」
春「そ、そんなぁ……私も抱っこしたいよ〜!!」

 桜舞い散る晴天の日の出来事であった。





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