【エイプリルフールの唄】

亜「律っちゃん、律っちゃん!今ねー、UFOが落ちて来たんだよっ!」
律「はいはい。」

 今日は4/1エイプリルフール。亜美の他愛もないウソを軽くあしらって私は
 自分の席に着いた。

律「おはようございます、小鳥さん。」
小「あ、律子さんおはようございます。今日はエイプリルフールですね。」
律「早速亜美から洗礼受けたわよ。まったくUFOなんか落ちてくるわけないじゃない。」
小「まあまあ。今日一日だけなんですから我慢我慢。そうそう、プロデューサーさんが呼んで
  ましたよ?凄く思い詰めた様な顔してましたけど……」
律「プロデューサーが?何かしら……」

 私はプロデューサーの方を見るとプロデューサーも気付いたらしく、

P「律子ちょっといいか?」
律「なんでしょう?」
P「ちょっとこの場では……後でレッスン場に来てくれ。」
律「わかったわ。」

−−−レッスン場−−−
P「待たせて悪いな。」
律「で、要件はなんです?」
P「実はな……今日社長に言われたんだが来週一杯で俺が別事務所に移籍と言う事に
  なったそうだ。」
律「………は?」
P「俺だって信じたくないんだが社長が言うんだからそうなんだろう。」
律「そんな……」
P「それで俺の心残りは律子、お前なんだ。」
律「…………………」
P「このままでは律子をプロデュース続ける事は不可能だ。それで律子にこれからの道を
  律子自身で選んで欲しいんだ。」
律「…………………」

 あまりにも急な話で私の理解の範疇を超えていた。何を言われているのかまったく
 わからない。

P「1つは律子は俺の後任のプロデューサーとそのままアイドルを目指す道。
  1つはアイドルを引退する道。そしてもう1つは……いや、やっぱりこれは言えないな。」
律「………言って下さい。」
P「そうか……最後の1つは………俺と一緒に移籍しないか?」
律「………プロデューサーと?」
P「ああ。俺としても律子をこのまま残すのは忍びないし、今までやってきた仲間として
  俺は律子を放っておきたくない。だがこれは俺の我儘に過ぎない。」
律「つまりこの3つの選択肢から選べと言うことですね?なら答えは1つです。」
P「……聞かせてくれ。」
律「私は今まで色々とプロデューサーのお世話になってきました。ライブの時も、写真撮影
  の時も、TV出演の時も………今更あなたから離れられる訳ないじゃないですかっ!!」
P「律子……」

 プロデューサーは私をそっと抱き締めてくれた。
 その優しさに触れ、私の目から涙がこぼれる。

律「プロデューサーと……プロデューサーじゃないと駄目なんです……」
P「……そうだな。俺も律子じゃないと駄目だ。だから律子、もう泣くな。」
律「うん……」

 抱き締められたままプロデューサーに向き直ると自然と顔と顔が近付き……

社「おお、キミ!こんなとこにいたのかね。」
律「ひゃっ!!」
P「こ、これは違いますっ!!」
社「ん?何が違うのかね?おお、律子くんもいたのか。」
律「いたのかじゃないですっ!!」

 社長が突然入ってきた事で結局キスまで至らずに私の顔は真っ赤な状態だ。

P「それでなんでしょうか?」
社「いやな、音無くんからキミが深刻な顔をしてると聞いてな。今朝の話はウソだよ。」
P「……は?」
社「だってキミ、よく考えてくれたまえ。今日は4/1、エイプリルフールじゃないか。
  たまには私だってウソの一つくらい……」
P「は〜〜……」

 プロデューサーは力なく座りこんでしまった。

律「つ・ま・り、全ては社長のウソが原因と言う訳ですか……」
社「お、おい、律子くん。そのハリセンはなんだね?ちょ、ちょっと待ちたまえ。話せばわか…」
律「問答無用!!」

 スパーン!!

社「ぐふぅっ!!……ガクリ。」

 ハリセンの一撃で倒れこむ社長。

P「はは……はははは……」
律「プロデューサーもプロデューサーですっ!!」

 こんなウソに引っかかったプロデューサーにも文句の1つでも言わねば気が治まらない。

P「そ、そうは言うがな、律子と離れると聞いて俺は頭の中真っ白になってしまってな……」
律「……えっ!?」

 レッスン場に沈黙が訪れる。

P「律子がいない職場なんて耐えられないと思ってたからさっき律子が一緒に来てくれる
  って言ってくれて俺、凄く嬉しかったんだ。」
律「プロデューサー……」

 再び顔と顔が近付き……

社「オホン!ところで私がいるという事をお忘れかね?」
律「キャー!!」

 スパーン!スパーン!スパーン!!

今日も事務所でハリセンが鳴り響いたのであった。





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