【すれちがう二人】

田「おーい、秋月〜。」
律「なによ、田辺。」

 田辺、コイツは私と同じクラスの男の子だ。
 私はちょうど授業が終わって事務所に向かおうと教室を出るところだった。

田「お前さぁ、今度ライブやるだろ?チケット譲ってくれよ。」
律「はぁ?嫌よ!」
田「そんな事言わずにさぁ。」
律「素直に抽選に申し込みなさいよ。いくら知り合いでもそんな事出来ないわよ。」
田「ちぇっ。秋月ならくれると思ったのにな〜。」
律「アンタねぇ、ちょっとは努力してみたらどうなの?」
田「そうだ!千早ちゃんにお願いしてみようかな?」
律「無理よ。それにアンタ千早の電話番号知ってるの?」
田「何言ってるんだ。秋月から伝言してもらうに決まってるだろ?」
律「却下。」
田「秋月頼むよ〜。」
律「自分でなんとかしなさいよね!!」

 私は田辺を突き放し事務所へ。

…………………………

律「プロデューサー。」
P「ん?なんだ?」
律「実はね今度やるライブのチケットって1枚確保出来たりする?」
P「今回はちょっと無理だなぁ。誰か招待したい人がいるのか?」
律「ううん、なんでもないわ。」

 私はそう言ってレッスンに向かうのだった。

−−−ライブ当日−−−
P「律子、会場に着いたぞ。」
律「さてと、今日は頑張りますかっ!!」

 プロデューサーと車で会場に着いた私達は正面口から会場入りしようと……

律「田辺!アンタこんな早くどうしたのよ!?」
田「あ、秋月か。実は結局チケットの抽選外れてな……せめて応援だけでもって
  朝早くから秋月を待ってたんだ。」
律「私を?」
田「ああ。秋月、今日は会場内で応援できないけど一生懸命頑張れよ!じゃな。」
律「ちょ、ちょっと!田辺ってば!!」

 田辺は言うだけ言ってこの場を去ってしまった。

P「なあ律子、もしかして田辺君の分のチケットが欲しかったのか?」
律「……頑張りましょ。」
P「……そうだな。」

 思いもよらぬ応援メッセージを受けた私はいつも以上の気合いを入れ本日、
 最高のライブに挑む。





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