【Rock to Infinity】

律「泣いても笑ってもこれが最後の公演よ。あんたたちしっかり頼むわよ。」

 私が初めて担当したユニットのお別れコンサートの時間が刻一刻と迫ってくる。

亜「律っちゃん、ホントーにみんなとお別れしなくちゃなんないの?」
真「真美達もっと歌いたいよ〜。」
律「あんたたちねぇ……散々説明したでしょ?」

 亜美と真美にとっては今回の引退は2回目となる。初めは社長がプロデュース
 した時。前回と違うのは今回は真美は真美としてデビューをしたことだ。

亜「でもでも〜。」
真「まだまだアピ足んないよ〜。」
律「ああもうっ!わかってるわよっ!!今回は私の力が全然足りなかったって!!」

 レッスンは亜美達に振り回されて殆ど出来ておらず、仕事も失敗続き。
 オーディションに至っては……それでもCランクに到達したのは奇跡に近かった。

亜「にーちゃんだったらもっとも〜〜〜っとうまく出来たのにな〜。」
真「ちょ、ちょっと亜美!」
律「………っ!!」

 社長と比べられてしまうのはわかるが私だってこれでも一生懸命やっている。
 でも……それでも何かが足りないのか?

亜「だって真美もそう思うでしょ?にーちゃんだったらもっと亜美達をぐいぐいっと
  ひっぱってってくれたし。」
真「それはそうだけど〜……」
律「わかったわ。じゃあ亜美、あとはもうあんたに任せるわ。」

 そう言って私はこの場を去った。

亜「いーだ。律っちゃんのやる気なし〜〜〜!!」
真「ちょっと、亜美……」
亜「なに?真美。」
真「あのね……」

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「はぁ……社長みたいに出来ると思ったのに……」

 開演まであと4時間。私は会場の外にいた。
 亜美相手に啖呵を切ってみたもののやはり中途半端で投げ出したくはない。
 でもどうすればいいのか……亜美達の気持ちがまったくわからなくなっていた。

P「律子、こんなとこで何やってるんだ?」
律「ダ…社長……」

 まさに今考えていた人が目の前に立っていた。

P「今日は亜美達の引退コンサートだ。こんなとこにいる場合じゃないだろ?」
律「そうなんですけど……」

 社長は私の様子を少し見るとこんな事を言い出した。

P「そうだ、小腹空いてないか?ちょっと軽い食事行こうか。」
律「でも今日は……」
P「いいからいいから。30分程度なら余裕で取り戻せるだろ?」
律「はぁ。」

…………………………

 私達は会場すぐ近くの喫茶店で軽いトーストを食べていた。

P「で、亜美達となにかあったんだろ?」

 トーストを平らげてコーヒーを飲んでいた社長から切り出される。

律「うん……」

 私はついさっきまであった事を社長に報告した。

P「そうだな。初めての時は俺も自信なんてまったくなかったな。」
律「でもあなたは私をちゃんと導いてくれてた。」

 私は彼の一番最初のソロユニット、秋月律子当人だからよくわかる。

P「あれは完全に意地さ。これからたくさんのアイドルをプロデュースするのに
  へこたれてたまるか!って言うね。実際俺は律子をDランクまでしか連れて
  いけなかったろ?」
律「だけどすぐさま私をプロデュースし直してくれてトップアイドルまで連れて
  行ってくれたじゃない。」
P「まあな。最初のプロデュースで悪かった部分を見直してどうすればいいのか
  を考えに考え抜いたんだ。最初から完璧な奴なんていないさ。だろ?」
律「う゛………」
P「律子は考え過ぎなんだよ。俺と同じようになんて出来るはずはないんだ。
  律子は律子のやり方でいいんだよ。最初はそりゃ空回りするかもしれない。
  当り前さ。初めてやるんだからな。」
律「で、でも……」
P「まあ今回は亜美達は俺にプロデュースされたって言う実績があるからどうしても
  比較されてしまうのは仕方ない。だからってそれに甘んじたり諦めちゃだめだ。
  比較出来ない様な律子の方法で行けばいいじゃないか。」
律「私なりの……方法?」
P「それを実現するにはどうすればいいのかは俺からは言えないし、答えようもない。
  律子自身が見つける事だからな。まずは自信がなくてもやってみろって。
  失敗したら失敗したとき。またやり直せばいいじゃないか。」
律「………そっか………ありがとうダーリン。」
P「まったくこんなことでくよくよするなよ。律子は俺の大事な……いや、なんでもない。」
律「えっ!?」

 今……確かに俺の大事なって言った……

P「と、とにかく亜美達が待ってるんだろ?しっかり支えてやってくれよ。これが
  俺としての社長命令だ。」
律「うん、わかった。」

 そっか、私は自分の計画通りに行かない事でそこからの進展を修正出来ていなかった
 節があった。ここをどうにかすれば次回は……

律「じゃ、私急いで亜美達の所行ってくるね!」

 タッタッタッタ………

P「まったく律子はアイドルの時と変わってないなぁ。」

 俺は一人喫茶店に残ってコーヒーをすすっていた。


−−−開演2時間前−−−
?「うわ〜〜ん><」

 控え室から泣き声が聞こえる。
 ガチャッ!!

真「あ、律っちゃん……」
律「亜美、真美、ごめんね。やっぱりあんたたちは私が最後まで見たい。それで
  また次のプロデュースもしたいの!」
亜「律っちゃ〜〜ん、ごめん、ごめんなさい〜><」

 私に抱きついて泣きじゃくる亜美。

律「ってどういうこと?これ?」
真「あのね……律っちゃんがいなくなったあと、真美が亜美に色々話したの。
  律っちゃんが陰でどう頑張ってたのか、どう支えてくれてたのか。」
亜「亜美が馬鹿だったよ。律っちゃんがそんなに頑張ってたなんて……」
律「いいのよ。それよりあんたたち、これからどうお客さんを満足させるかが
  大事よ。ここをうまくやらないと次がないわよ?」
真「次って?」
律「決まってるじゃない。こんな1回の失敗でへこたれる律子様じゃないん
  ですから。リベンジよ、リベンジ!」
亜「じゃあ亜美達また歌えるの?」
律「もちろんよ。まだまだ歌い足りないんでしょ?」
真「じゃあみんなともっともっと楽しいこと出来るの?」
律「そう出来るように私も努力するから……ね?」
亜「うんっ!じゃあいつまでもめそめそ泣いてらんないね。亜美頑張っちゃうよ!」
真「真美も〜。」
律「じゃあ次に向って行くわよっ!!」

亜&真「は〜い☆」

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