【ふしぎなくすり】

亜「にーちゃん、にーちゃん、これ飲んでみて。」

 亜美から渡されたあからさまに怪しい薬。
 こんな物を飲んだら何が起こるかわからんな。

P「後で飲んでおくからとりあえず俺が預かるよ。」
亜「うん、わかったー。ちゃんと飲んでね?」
P「俺が嘘つくことあったか?」
亜「ん〜〜なかったかも。」
P「なら渡してくれるよな?」
亜「は〜い。」

 そしてつい胃薬と間違えてその薬を飲んでしまった。

P「身体が焼けるように熱い!ぐわぁぁぁぁ!!」

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「さてと、今日もお仕事頑張りますか。あら?」

 律子が俺に気づいて近づいてくる。妙に律子が大きく見える。

律「僕、なんでこんなところにいるの?ここは遊び場じゃないのよ?」
P「律子、俺だよ、俺!俺!」
律「こらっ!目上の人に向って俺俺言うんじゃありません。詐欺と勘違いされるわよ?」
P「だから俺だってば!!」
律「まったく何言ってるかな〜。社長の息子さんかしら?」

 律子はまったく聞く耳を持たない。俺は不審に思いエチケットブラシについている
 鏡を覗くと……

P「ゲッ!!」

 そこには小学1年生くらいの幼い男の子が写っていた。

P「もしかして……あの薬か!?」

 どう考えても亜美が持ってきた薬のせいとしか思えない。亜美め……

律「それで僕の名前はなんて言うの?お父さんかお母さんは?」
P「………勇気。」
律「勇気〜?まるでプロデューサーみたいね。」
P「だから俺は……」
律「はいはい。わかったから勇気くんはおとなしく座ってる事。いいわね?」
P「でも………」
律「でももさてもありません!いい?わかった?」
P「う、うん……」
律「素直でよろしい。私の名前は律子、秋月律子よ。ってさっき呼んでたわね。
  律子でいいわ。」

 どうやら俺の事を誰かの子供と勘違いしてるようだな。仕方ない、変に混乱
 させるよりはその方向でいくか……

P「うん、わかった〜!」
律「元気でよろしい。とりあえずその席に座ってていいわよ。」

 カタカタカタカタ。

P「ねぇ……」

律「なぁに?お姉ちゃん今忙しいんだから。」
P「レッスンしないの?」
律「レッスンねぇ……プロデューサーが来ないことにはねぇ……」
P「じゃあ僕が見てあげようか?」
律「え?勇気くんが?」
P「僕じゃあ役不足?」

 ここでちょっとわざとらしく目をうるうるさせてみて……

律「あ〜、泣かないでったら。わかった、わかったから。じゃあ私のダンスで
  変なところあったら教えてくれる?」
P「うんっ!!」
律「まったく誰の子なのかしら……プロデューサーも来ないし……」

…………………………

律「レッスンよろしくお願いします。」
P「お願いします、お姉ちゃん。」
律「じゃあまず何をしましょうか。」
P「じゃあ手拍子をするから魔法をかけての頭からお願い。」
律「へ〜、魔法をかけてなんてよく知ってたわね。まだ一般に公開してもいないのに。」
P「えへへ〜。」
律(やっぱり誰かの子みたいね。こんな子を一人で置いてくなんて何考えてるのかしら?)
P「じゃあ行くよ〜。」

 パン、パン、パン、パン

P「お姉ちゃん、そこのターンのところは少し顔を上向きにするとバランスも保てて
  見た目も良くなるよ。
」 律「こ、こうかな?」
P「うん、そうそう。そんな感じ。」
律(この子……思った以上に見る目あるわね。確かにバランスが取り易くなったわ。)
P「あ〜、そこのステップはこうやって……こうだよ。」
律「こ、こう?」
P「うん、バッチリ。」
律(本当、ステップも知ってるしなんなの?この子。)

 パン、パン、パン、パン

P「そこで手を大きく広げてフィニッシュだよ!」
律「こうね。」
P「バッチリだよ、お姉ちゃん。」
律「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
P「お姉ちゃんお疲れ様。スポーツドリンクとこれ、タオル。」
律「あ、ありがとうプロデューサー。」

 プロデューサー、か。今のこんな姿でもなんとかやれるんだな。

律「あ、ごめんごめん。勇気くん。プロデューサーみたいなタイミングでタオルとか
  くれるからついね。」
P「ううん、気にしないで。」
律「でもあの間奏のステップが全然出来なかったのに一発でできるようになったわ。
  勇気くんのお陰ね。ありがと。」

 チュッ。ほっぺたに暖かい物が触れる。

P「え!?」
律「御褒美よ。」
P「え?え?」

 俺、もしかして律子にキ、キ、キ、キスされた!?

P「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、僕、さささささ先に行ってるね!!」

 俺は間違いなく顔真っ赤になっていただろうけど急いでドアに向かって駆け出して

P「あっ!」

 俺の身体は宙に舞った。なにかのコードを足にひっかけたような感覚だけが妙に残っている。

 ドスン!衝撃が身体を貫く。

律「勇気くん!!」

 その声を聞いて俺の意識は途絶えた。

…………………………
……………………
………………
…………
……

−−−律子SIDE−−−
律「勇気くん!!」

 私は地面に倒れこんだ勇気くんの元へと走った。

律「勇気くん!勇気くん!しっかりして!!」

 私は彼の身体を抱き上げ……

律「熱っ!!」

 彼の身体は凄い熱を発していた。こんな状態で私のダンスレッスンを見てたの!?

律「早く介抱してあげないと……」

 私は事務所の客用のソファに彼を抱きかかえて運び、濡れタオルで熱くなったおでこを
 冷やし続けた。

律「こんなになるまで私のレッスンなんかみて……まるで無鉄砲なプロデューサーみたい
  じゃない………」

 私は眠り続ける勇気くんのそばで一人愚痴る。

律「それにしてもこの子…本当に誰の子なんだろう?今も事務所は私しかいないのに…」

 疑問ばかり残る。

P「ん、ん〜〜………」
律「あっ!大丈夫?」
P「う、うん……」
律「なんでそんな熱で私のレッスン見続けたの!ダメでしょ!!」
P「ね…つ?」

 勇気くんは自分で自分のおでこに手をあてる。

P「わっ!なんでこんなあっついの!?」
律「何かあったらどうするのよ!!」
P「ごめんなさい……」
律「わかったらよろしい。しっかり休みなさい。」

 私は彼の頭を軽くくしゅくしゅと撫でてあげた。

P「お姉ちゃん、本当にごめんなさい……」
律「いいのよ。ちゃんとわかれば。」
P「ううん、そうじゃ……ぐあぁぁぁぁぁ!!」
律「勇気くん!どうしたの!?」
P「ぐあぁぁぁぁ………」

 私の見ている前で勇気くんの身体が伸びていく……顔つきも変わって……
 ってプロデューサー!?

P「ふぅ……む?これは……元に戻ったのか?」
律「……プロデューサー、詳しくきっちりしっかりと話していただきましょうか。」
P「り、律子……お姉ちゃん?」
律「お姉ちゃんじゃない!!私だって心配したんだから!!」

 プロデューサーはぶたれると思ったのか手で顔を押えたが私は彼に抱きついていた。

P「り、律子?」
律「本当に死んじゃうのかと思ったじゃない!!私のせいで勇気くんが倒れてどうしよう
  かと思ったわよ!!」
P「律子すまん……心配かけたな。実はな……」

 私は詳細をプロデューサーから聞いた。

律「なんでそんな薬なんか飲んだんですか!!」
P「だから俺は胃薬と勘違いしてだなぁ……」
律「ふぅ…もういいです。」
P「本当にすまなかった。」
律「謝らないで下さい。」
P「だが……」
律「勇気くんはそんな弱音吐くような子じゃないでしょ?」
P「む!?………そうだな。これからも俺はどんな事があっても全力で律子をプロデュース
  するよ。」
律「それじゃ駄目です。こんな手間のかかるプロデューサーにはおしおきです。」

 私はプロデューサーの頬にキスをして答える。

律「もっと自分の事も考えて下さいよ。あなたの喜びは私の喜びでもあるんだから。」

 私の顔はきっと真っ赤だと思う。とても彼の顔を見ることはできないけど……

P「そうだな。これからもよろしく、お姉ちゃん。」
律「こらっ!新米プロデューサー、調子に乗るなっ!!ふふっ。」





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