【Arabian Rave Night】

律「プロデューサー、千早ってどう思います?」
P「……何がだ?」

 唐突に律子が変な事を聞いてきた。

律「いえ、千早のスタイルって異性から見てどう思うのかな?って気に
  なりまして。」
P「……素直に答えた方がいいか?」
律「出来ればお願いします。」
P「わかった。だがスタイルだけってのは俺としてもあれなのでアイドル
  としての視点も含めるからな。」
律「ええ、それでいいわ。」
P「そうだなぁ……千早はかなりスレンダーだよな。もうちょっと食事
  でも取ってくれないと華奢でどうも不安だ。だがあの身体から出る
  歌声、声量ははそんなギャップもあいまみえてとても魅力的に映る。
  こんな感じだな。」
律「ふむふむ……思ったよりちゃんと見てるんですね。」
P「どういう意味だよ。担当アイドルの事くらいしっかり把握してないのは
  マズイだろ?」
律「それはまあそうですけどね。」
P「一応俺だって色々と考えてるんだぞ。ファッションはどうだ?
  歌の流行りはどうだ?売り込み方はどうだ?とかな。」
律「ついでに精算もちゃんとやって欲しいですけどね。」
P「そ、そこは……耳が痛いところだな。」
律「で、本題。私はどうです?」
P「律子か……難しいところだな。」

 変な事を聞いてくるもんだからなんだろうと思ったらなんだ、そんな事か。

律「どうなんです?」
P「でも本当に言っていいのか?間違いなく後悔するぞ?」
律「うっ……でもやっぱり気になるのでお願いします。」
P「わかった。」

 俺はしばし宙を見上げてから口にした。

P「律子は律子が思っている以上にグラマーだ。出るところは出ていてひっこむ
  ところはひっこんでいる。ファンの視覚的には相当魅力的に映るだろうな。
  だが歌唱力とダンス、特にダンスが弱いな。少しこぢんまりしてる感じがするな。
  もっとこう……大きく、激しく!!」

 むにゅ。

P「あっ!」

 俺は興奮のあまり手を振って当たった先が……

律「つまり激しく胸に触りたい、そういうことですか?」
P「いや、待て!そうじゃなくてだな……」
律「ま、いいです。続けて下さい。」
P「と、とりあえずだなスタイルに関しては今言った通りだ。アイドルとしての
  魅力はまだまだ不足しているってところだな。だが律子は平均的には高い部類
  だ。だが突出した部分がまったくない。」
律「じゃあ私はあんまり好きじゃないけどもっとグラビアとかで売り込む方が
  いいのかな?」
P「俺はそうはしたくないんだけどな。」
律「なんでです?」
P「ま、律子は気にしない方がいいさ。」
律「で、でもー……」
P「そんなに俺を信用出来ないか?」
律「そうは言ってない!言ってないけど……ただちょっと引っかかると言うか……」

 律子は妙に言い難そうな感じで訊ねてきた。

P「引っかかる?」
律「うん。最初の頃はグラビアとか結構やってたけど最近ってまったくないわよね?
  だけど千早なんか今でもしょっちゅうグラビア撮影してますよね?それで気に
  なったんです。やっぱり私のスタイルが寸胴だからなのかな?って。」

 律子の言葉に今度は俺が返答に窮する事態になってしまった。
 言えないよな……律子を他人に見せたくないから写真集関連をなるべく断って
 きたなんてな……

P「ま、まあ何もグラビア売り込みがアイドルの全てじゃないんだし。」
律「そうなのかなぁ……」

 なんか必死になって考えている律子を見てるとたま〜にいぢめてみたくなるんだよな。

P「はは〜ん、わかったぞ。律子は自分の水着姿を誰かに見せたいんだろ。ズバリ
  そうでしょう!」

 俺は冗談っぽく丸尾くん風に話を振ってみた。

律「……プロデューサーは私の水着姿……見たい……ですか?」

 ……なんだこの展開。俺は冗談のつもりだったんだがな………
 自分でも苦笑いしているのがありありとわかる。

P「いやそのだな……」
律「やっぱり私が寸胴だから嫌なんですか………」

 ゴクリ。

P「すみません、み、見たいです……とても………」
律「何真面目に答えてるんですか。………クックック。」

 あれ?これって……

P「あっ、あーー!野口さんかっ!!」
律「先にプロデューサーが『ズバリ、そうでしょう!』なんてやってくるから
  おかえしですよ。」
P「まいったね。こりゃ一本取られたな。」
律「ただねプロデューサー。私、出来る事なら少しでも色んな事をやっておきたいの。
  何もしないでそのまま朽ちていくのは嫌なんです。」
P「よしわかった。じゃあ俺もそれを踏まえて律子への仕事を考えておこう。
  それでいいか?」
律「ええ。よろしくお願いしますよプロデューサー殿。」

−−−数日後−−−
P「律子、ちょっといいか?」
律「なんです?」
P「実はな新しい写真集の話が来てるんだが、ちょっと変わった内容でな。」
律「……私ヌードはイヤですからね。」
P「違う違う。なんというか…コスプレ?写真集を撮りたいと言うのなんだ。」
律「……は?」
P「ほら、いわゆるあれだよ。律子が婦警さんの格好をしたり、看護師さんの格好を
  したり、高級中華料理屋さんのウェイターの格好をしたりするあれだ。」
律「はぁ。あんまりにも変な格好とか服装でなければいいかな?」
P「OK。じゃあ内容詰めてみるよ。」
律「お願いします。」

−−−さらに数日後−−−
 撮影場所はなんとベッドの上だった。

律「ちょっと、プロデューサー。本当にこれまともな撮影なんでしょうね?」
P「ん〜……そのはずなんだがなぁ。」

 ベッドはいわゆるお姫様ベッド。ナイトベールはピンクと言うまさにエロス
 満開な感じだ。

律「私、いくら色々やってみたいと言っても流石にこれはちょっとねぇ…」
P「ちょっと待ってろ。スタッフと話してくる。」
律「お願いします。」

 俺はスタッフと話をして内容をしっかりと把握したが、この内容を律子に
 伝えない方がむしろ魅力を引き出せるのでは?と言うものであった。

P「さて、どうするかだ。」

 一応撮影的には律子に危害を与えるようなものではないことは念を押したし
 確認もした。しかし説明もせずに律子が納得してもらえるかだ。
 まあ素直に当たって砕けるか。

P「律子。」
律「どうでしたか?」
P「スタッフと確認したがやはり問題は無さそうだ。ちょっと衣裳が扇情的な
  ものかもしれないが、俺が間違いなく保障する。」
律「で、どんな感じの撮影なんですか?」
P「実はな……プランは確かに聞いたんだがこれは律子にはちょっと言い辛いん
  だが……情報なしでお願いしたいんだ。これは俺からのたっての希望だ。」
律「なんでですか!私だってプランを聞いて色々と考えてやってみたいんですよ。」
P「まあ待て待て。律子に考えて貰いながらと言うのもありだと思うんだが、ここ
  は俺を信じてくれないか?この通りだ!!」

 俺は律子に頭を下げた。

律「……………………」
P「……………………」
律「………わかりました。とりあえず早く頭上げて下さいよ。」
P「ほ、本当か!」
律「プロデューサーが考えたと言うなら私もちょっとそれに乗ってみます。」
P「じゃあちょっと辛いだろうが頼んだぞ!!」

−−−数十分後−−−
律「本当にこんな衣装でやるんですか?」

 律子の格好は水着の上にスケスケの衣装を着てベッドに横たわると言うプランだった。

P「何と言うかその……ただの水着より目のやり場に困るな……」
律「……バカ。なに鼻の下伸ばしてるんですか!私の方がもっとはずかしいんだから…」

 ぼそぼそとしゃべる律子。

P「その化粧もちょっときつめに見えるけどそれでベッドに横たわられるとかなりドギ
  マギするな。」
律「はいはい、もういいから!じゃあ行ってくるね。」

 こうして、律子は少しおどおどとしながらの撮影であったが撮影が進むにつれ緊張が
 ほぐれて来たのか徐々に妖艶な感じになっていき撮影は無事終了。
 そして発売された写真集「クレオパトラ」は馬鹿売れ。まさに新しい律子の一面を
 引き出せたのであった。

P「それにしてもこの律子のワイングラスを持ってる時の流し目、凄い色っぽいな…」
律「あー!もうそれはいいですから次の仕事持って来て下さいよ!次の仕事!!」





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