【I'm a loser】

 Jingle bells, jingle bells, jingle all the way!
 O what fun it is to ride in a one-horse open sleigh.

P「今年もこんな時期か。」

 俺は街路樹に彩られたイルミネーションを横目に見つつかなり早めの家路についていた。

P「今年も色々とあったなぁ。」

 俺の脳裏には今年一年の出来事が走馬灯のようによぎっていた。
 しかし浮かぶ事は律子の事ばかり。

P「俺もヤキがまわったかな。」

 律子は俺の担当アイドルだ。にも関わらず俺はいつも律子の一挙一動に目を
 奪われてしまう。

女「だから言ったでしょ?ほんとあんた馬鹿よねー。」
男「ウッセー!まったく秋月はいちいちさぁ……」

 ん?背後から妙に聞き覚えのあるような声が……と振り向くとそこには

P「あれ?律子じゃないか。」
律「プロデューサー!こんな時間にどうしたんです?」
P「今帰りだ。」
田「どうもお久しぶりです。」
P「君は……確か田辺くんだったよな。」
田「そうです!覚えていてくれたんですか!」
律「くぉらぁ!田辺っ!!さっさと行くわよ!じゃ、プロデューサー
  また明日にでも。」
P「あ、ああ……」

 この寒空の中、俺の心に冷たい風が吹き始めた。

P「そうだよな、律子と俺はアイドルとプロデューサーの関係だもんな。」

 俺は一体何を期待していたんだろうか?同年代の男友達がいてもおかしくないよな。
 そんな事を考えつつ家路へとついた。

…………………………
……………………
………………
…………
……

P「ふぁ…つまらんな……」

 俺は帰って即座にTVをつけたがやっている番組はどこもクリスマス特集ばかり。

P「18時半ってこんなニュースしかやってないのか。」

 特に音楽番組をやっている事もなく、俺はTVを消し先程買ってきた雑誌に目を
 通すが……

P「今はどれもクリスマス一色だな。」

 俺は雑誌を閉じ、ふと去年の事を思い出していた。

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「プロデューサー、あそこ見て下さいよ。」
P「ん?どれどれ……クリスマスツリーか。まだ10月なのにな。」
律「ところでプロデューサー、クリスマスは暇ですか?」
P「ああ暇だ。」
律「あっはっはっはっは、何真顔で言ってるんですか〜。」
P「暇なんだからしょうがないだろ。」
律「あはははは。でもまあ私も暇なんですけどね。」
P「じゃあみんなでパーティでもやらないか?」
律「あっ、いいですね!」

…………………………
……………………
………………
…………
……

P「そんな事もあったな……だが今年は一人かな……」

−−−数日後−−−
 Jingle bells, jingle bells, jingle all the way!
 O what fun it is to ride in a one-horse open sleigh.

 俺は律子を助手席に乗せてTV局へ向かっている最中でカーステからこの曲が
 流れると、

律「もう今年もクリスマスの時期ですね。」
P「ああ、そうだな。」
律「最近一気に冷え込んできたし今年はホワイトクリスマスになったりしないかな〜。」
P「そればかりはサンタさんのきまぐれだからな。」
律「あれ?プロデューサーはサンタさんの事信じてるんですか?」
P「まあな。わかってはいるがその方がロマンを感じるだろ?」
律「ん〜、あんまりそんな感情はわきませんけどね。」

 そんな話をしている間にもTV局に着いてしまった。

P「ところで律子はクリスマス、暇なのか?」

 俺は淡い期待を込めて聞いてみた。

律「クリスマスですか?予定が入ってますけど……」
P「そうか……いや、なんでもないよ。」
律「はぁ。」

 今年は本当に俺一人か………

−−−クリスマス当日、事務所にて−−−
P「小鳥さん、今日は空いてますか?」
小「えっ!?わ、私ですか!?」
P「ええ。今年はどうも俺、一人のようなので……」
小「………」
P「駄目ですかね?」
小「プロデューサーさん。」
P「はい、なんでしょ?」
小「じゃあ少し……外歩きませんか?」
P「でも今まだ仕事中じゃあ……」
小「いいですから行きましょうよ。」

 俺は無理やり小鳥さんに連れられて外に出てきた。

小「プロデューサーさん、何か悩んでることでもあるんじゃないですか?」
P「俺…ですか?別になにもないとは思いますけど。」
小「それは嘘ですね。最近仕事中もなんか遠くを見てる事が多いですよ?」
P「そうですか?」
小「ええ。」

 …………………………

小「プロデューサーさん。」
P「はい。」
小「きっとプロデューサーさんが想ってる事はきっと伝わりますよ。」
P「なんの事やらさっぱりですけど……まあ小鳥さんがそう言うのなら。」
小「じゃあすみませんけど一緒にケーキを買いに行くの手伝って貰えますか?」
P「それくらいお安いご用ですよ。」

…………………………
……………………
………………
…………
……

P「は〜、あんなに混んでるとは思いませんでしたよ。」
小「こんな時期ですもんね。」
P「でもなんでこんな大きなケーキを?これ、8号ですよね?」
小「色々と…ね♪」
P「変な小鳥さんですね。」
小「あ、そうそうプロデューサーさん。このケーキなんですけど第一会議室に
  お願い出来ますか?大きさが大きさなのでクーラー入れておいたんですよ。
  冷蔵庫に入れると硬くなっちゃいますしね。」

 PrrrrPrrrr

小「あっ!ちょっと電話かかってきちゃったのでお願いしますね。」
P「わかりました。」

 俺は電話に出てる小鳥さんをよそに会議室へ向い……
 ガチャッ。

 パーン!パンパーーーン!!

全「メリークリスマース!!」

 会議室には律子も含めた全員がいたのだった。

P「これって……」
律「プロデューサー、なにしょげた顔してるんですか。」
P「律子!お前今日予定があったんじゃ……」
律「ええ、ありましたよ。プロデューサーをみんなでしっかり驚かすという予定ですよ。」
あ「もしもし小鳥さーん、大成功ですよ〜。うふふっ♪」
P「あずささん、何携帯片手に…ってまさか……」

 あずささんが携帯を俺に手渡してくれたので電話に出てみると……

小「メリークリスマスですよ、プロデューサーさん♪」
P「みんなで仕込んでた、と言う訳ですか………」
律「まあね。みんなで色々と秘密裏に進めたかったんですよ。はい、これクリスマス
  プレゼント。」

 律子がポケットから小さめの箱を出してきた。

P「これは……?」
律「いいから早く開けてみてくださいよ。」

 俺は律子に促されて箱を開けてみる。中には銀色の懐中時計が入っていた。

律「どうも私こういうの選ぶのが苦手なので田辺に選んでもらったの。これでみんなの
  スケジュールもちゃんと管理して下さ……キャッ!」

 俺は思わず律子を抱きしめてしまった。

亜「にーちゃん、そこからチューだよっ!チュー!」
雪「わ〜〜。私そんな風に抱き締められたら、うぅ……」
伊「はぁ。もうまったく見てらんないわっ!」
春「プロデューサーさん、だいた〜ん☆」
美「ああ〜〜!!律子……さんだけずるいのっ!ミキも〜〜〜!!」
律「ちょっとプロデューサー!みんな見てるじゃないですかっ!!」
P「あ、ああ……すまん、すまん。」

 俺は名残惜しそうに律子を抱き締めていた腕を緩めた。

律「一応クリスマスと言うことなんで許しますから。クリスマスだからですよっ!」

 顔を真っ赤にして言っていたら説得力無いぞ、律子。

P「律子、みんな、本当にありがとうな。」
真「へへっ。プロデューサーに誉められると悪い気しないや。」
や「うっうー、私も律子さんみたいにハグして下さい〜。」
千「みんな、外見てみなさい。雪が降ってるわ。」

 みんなで窓に集まると外には白くちらちらとした雪が舞っていた。

P「来年も……みんなでこうしていられるといいな。」
律「0点。」
P「…手厳しいな。」
律「当り前でしょ。みんなもっともっと上を目指すんですから。」
春「そうですよ!目指すはドームですよ、ドーム☆」





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