Happy Wedding

神「汝はこの女性を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
  病める時も健やかなる時も、他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い、
  妻を想い妻のみに添うことを神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
男「はい、誓います。」
神「汝はこの男性を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
  病める時も健やかなる時も、他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い、
  夫を想い夫のみに添うことを神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
律「へ?わ、私?ってなんでこんなところにいる………」

 チュンチュン

律「…むぅぅ……今の……夢?」

 私の寝起きは最悪だった。

律「でもなんで結婚式だったのかしら?」

 声だけはしたが相手の人の顔は見えなかった。と言うよりまったく思い出せない。

律「まさか私があんな夢見るなんてね。」

 こんな非現実、認めるものですか!そう思いながら今日は始まったのである。

………………………………

神「汝はこの女性を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
  病める時も健やかなる時も、他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い、
  妻を想い妻のみに添うことを神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
男「はい、誓います。」
神「汝はこの男性を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
  病める時も健やかなる時も、他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い、
  夫を想い夫のみに添うことを神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
律「え?また??ってあなた誰よ!!」

 私は相手の男性の腕を掴んで顔を見ようと……

 チュンチュン

律「うぅーん…むぅ。」

 今日も気分は最悪だ。

律「大体この夢はなんなのよ!」

 訳がわからない。なんで私が知りもしない男性と結婚しなきゃならないのよ!!

律「さてと、今日の準備しないと。」

 私は夢の事を忘れようと無理に声を出して行動にうつす。

律「ああ、もう!今日の寝癖しつこいわね!!」

 妙にまとまらない髪に苛立ちが募る。

………………………………

父「律子、末永く幸せにな。辛いことがあったら家に帰って来い。」
母「お父さん、律子は今日送り出す日なのになんて事言ってるんですか、もう。」

 え?私今日結婚するの?

律「ちょ、ちょっと待ってよ。私まだ18歳で好きな人なんて……」
父「律子お前何言ってるんだ?」
母「そうよ。あなたは今年で25歳でしょ?」
律「え?ええーーー!!」

 ガバッ!

律「私いつそんなに歳……また夢……ふわぁ……」

 連日のように見る私の結婚式。一体なんだっていうの?

律「なんか疲れ取れた感じしないわね……」

 私は愚痴りながら今日の準備をするのだった。

−−−事務所にて−−−

律「おはようございます。」
P「おはよう律子。いいところに来たな。」
律「どうしたんですか?」
P「新しい仕事だ!喜べ、ウェディングドレスには興味ないか?」

 現実でも結婚式〜?私はそう思いつつ、

律「一体どんな仕事なんです?いいも悪いもまずは話を聞かさせて下さい。」
P「ああ、そうだな。」

 聞かされた内容はこうだった。
 ウェディングドレスを着て控え室で父母との挨拶をして式場へ向かう
 娘役として私が出演して結婚式場のCM撮影をして欲しいということだった。

律「でも知ってますよね?プロデューサー。」
P「何がだ?」
律「決まってるじゃないですか!婚前に結婚衣装を着ると行き遅れるって
  知りません?」
P「ああー。珍しいな、律子がそんな迷信信じてるなんて。」

 そう言われてついかカッとなる。

律「一応私だって女の子なんですからね!!」
P「はいはいそうでしたすみませんすみません。」

 まったくこの人は……

P「で、どうする?」
律「どうするって?」
P「この仕事だよ。引き受けるか引き受けないかだよ。律子が嫌なら先方に
  お断りの報を入れるけど。」

 私は少し考えた。この連日のように見る夢。きっとこの事を予知でもしてたん
 じゃあないかと。でもこんな非現実な事認めたくない。認めたくないけど…

律「いいわ、やってみる。」
P「行き遅れちゃうぞ〜?」
律「そんな筈無い!!」

 プロデューサーが凄い驚いた顔をしている。

P「律子、もしかして今誰か好きな人でもいるのか?」

 そんな素っ頓狂な事を言い出してくる。

律「そ、そんな人いるわけ無いじゃない!!私今高3ですよ?まったく……」

 なんて事言い出すんだ、この人は……

P「そ、そうだよな…ははは……じゃあ一応先方に連絡するからな。」
律「はいはい、早くお願いしますよ。」

 プロデューサーは即座に電話をかけ始めた。

………………………………

P「はい、どうも失礼します。」
律「で、どうでした?」
P「ああ、明日にでも撮影をしたいから頼みますとの事だったよ。
 明日はすまんが頼んだぞ。」
律「はいはい、任せなさいって。」

−−−翌朝−−−

律「ん〜〜〜〜、久しぶりによく眠れたわ。」

 今日はあの変な夢を見ることも無く、凄く快適な目覚めだった。

律「さてと、さっさと準備しますか。」

−−−現地にて−−−

P「じゃあ律子、準備してくれ。俺はディレクターと打ち合わせしてくるから。」
律「はいはい、わかってますって。」

 そう言ってプロデューサーは出て行った。

………………………………

ス「はい、秋月さん。お化粧終わりましたよ。」

 スタイリストさんに色々とセットして貰い私は緑のウェディングドレスに
 身を通していた。

律「これが……私?」

 鏡には見たことの無い自分が映っていた。

ス「ええ。私も自分でセットして驚いてるわ。あなたこんなにも光るのね。」

 なんか誉められてるのが凄くムズ痒く、心がフワフワとする。

ス「もう暫くこのままでいて下さいね。」

 そう言ってスタイリストさんは出て行ってしまった。

………………………………

 もう何分経ったのだろうか?私は何も出来ずただただ座ってるだけ。
 何故だか知らないが凄く不安になってくる。

 コンコン

律「はい!」
P「あ、俺だ。ちょっとな困った事があって……」

 ドア越しにプロデューサーが声を掛けてきた。

律「何があったんです?」
P「実はな…父役の方が渋滞に巻き込まれてまだまだ時間がかかるそうなんだ。」
律「じゃあ今日の撮影は中止なんですか?」
P「それがだな………」

 何言い澱んでるんだろ?さっさと話せばいいのに……

P「ちょっとあれなんだが…」
律「アレってなんですか!さっさと言う!!」
P「あ、ああ。俺が変装して父役をやることになってしまったんだ。」
律「ぷっ!」
P「……ぷっ?」
律「あっはははは」
P「おいおい、そんな笑わなくても…」
律「ってことは今もう変装してるわけ?」

 私はプロデューサーがどんな変装をしてるか楽しみで仕方なかった。

P「ああ。それで律子、お前を迎えに来たんだ。」
律「へ?」
P「じゃあドア開けるぞ。あんまり笑うなよ。」

 ギィィ

 そこには私が想像していたのとはまったく違う渋い白髪で口髭を生やした
 ダンディなおじさま風な男性が立っていた。

律「えっ!?本当に…プ、プロデューサー!?」
P「律子!!」

 二人してお互いの格好を見て絶句している。

ス「あ、二人とも早くスタジオへ来て下さい。」
律「あ、はい。」

 私たちはゆっくりとスタジオへ歩いていった。

デ「じゃあ撮影始めますんでお父さんはそちらに座って、秋月さんはこちら
  で後ろ向きに立ってて下さい。で、カンペはここに置いておきますので
  キューが入ったら振り返ってこの台詞をお願いします。」
律「はい、わかりました。」

 私はまずカンペに目を通す。これを感情を込めて……私は今花嫁、私は
 今花嫁。後ろにいるのは私のお父さん。ありがとうお父さん、今まで
 育ててくれて……うん、いける!

律「OKです!」
デ「じゃあ3、2、1……」

 私はゆっくりと振り返りプロデューサー…いえ、お父さんに向かって
 語り始めた。

律「お父さん、長い間お世話になりました。私は今日、あの人のもとへと
  嫁いでいきます。でも……安心して。どこかに消えていっちゃう訳じゃ
  ないわ。ちょっと離れるだけよ。ね、お父さん。」
P「…………ぅ……………」

 カチン!

デ「ハイカットー!いやあ一発でいい絵が取れたよ。2人ともお疲れ様!」
律「あ、ありがとうございます!!」
P「……く…」

 なんかプロデューサーの目が赤いけど……もしかして……

律「ちょっとジーンと来ちゃった?」
P「ば、馬鹿言え!そんな訳………あるけど……」
律「バッカねぇ。まだ私には彼氏なんていません。だからそんなこと無い
  ですよお父さん♪」

 なーんて事を言ったらプロデューサーの目から光るものが……

律「ちょ、ちょっとプロデューサー!」
P「ああ……す、すまん。父親の気持ちがちょっとわかったような気がするよ。」
律「そうなの?」
P「ああ。それに…今の律子凄い魅力的だ。いつもの三つ編みで出てくると
  思ってたからな。」

 そう私は後にベールをかけた写真も取る為に三つ編みをほどいてストレートに
 していたのだった。

P「いつも以上に大人っぽくなってて……なんと言ったらいいか……」
律「私の事お嫁さんにしたくなったとか?」
P「ば、馬鹿を言え!俺はお前のプロデューサーだぞ!そんな事……」
律「ふふっ。最高の誉め言葉として受け止めておきますよ。」

 私はその後の撮影も順調に終えたのだった。

律「そういえばあの夢の男性ちょっとプロデューサーに似てた気が……
  まさかねぇ。でも私を妻としてくれる男性ってどんな人なのかしら?」

 そんな事を考えつつ今日も眠りにつくのだった。





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