ライブ鑑賞(勉強)詳細版

 俺達は勉強を兼ねてオペラを聴きに来ていた。
 そして前半が終わっての休憩時間。

P「今回のオペラすごいな。」
律「ええそうですねぇ……」

 妙に眠そうな感じで答える律子。

P「おいおい、ちゃんと聴いてなかったのか?」
律「そんなことないですよ。ちゃんと聴いてましたって。」
P「そうか?俺には寝てるようにしか見えなかったがな。」
律「寝ちゃうほど良かったって事ですよぉ……」

 そういいながらこっくりこっくり始める律子。

P「なんで寝ちゃうんだ!」

 既に半分目を閉じかけている律子がその声にビクンと反応する。

律「…なんで耳元で大声あげるんですかぁ。」
P「律子が寝ちゃうからだろ?」

 ブーー。

P「お、後半始まるぞ。」

 しかし律子はどうみてもうっつらうっつらしていてどうもちゃんと
 聴いているようには見えなかった。

P「(小声で)おい、律子、律子。」
律「聴いてますよぉ………むにゃむにゃ……」
P「まったくコイツは……」

 しかし公演の真っ最中なので大きな声を出すわけにもいかず、そのまま
 舞台は終盤へ。

 ラーララララー♪

P「(小声で)すごい声量だな。」
律「………………」

 横では完全に寝てしまって俺の肩にもたれかかっている。

P「まったく……」

 俺は律子の耳元で周りの迷惑にならないくらいの声量で

P「律子起きろ!まだ公演の真っ最中だぞ!!」
律「……ちゃんと聴いてますってばぁ……」
P「ウソつけ。完全に寝てたじゃないか。」
律「ほら、まもなく終わりますよ…」

 舞台では最後の盛り上がりだった。なんという高音域。歌声で鳥肌が
 立つなんて初めてかもしれない。
 俺が聞き惚れている間、やはり律子は肩にもたれかかったままだった。
 そして公演は終了。

 パチパチパチパチ

P「おい、律子、律子!起きろ!」
律「Zzz...」

 しかし律子は寝たままだった。

P「(猫なで声で)律子さーん、朝ですよ〜。」
律「……私は寝てます。」
P「本当はもう起きてるんじゃないか?」
律「……寝てますよぉ。熟睡ですよぉ。」
P「まったくコイツは……」

 俺は律子を起こそうと肩に手をかけようとして……

P「うわっ!!」

 ドテン!

 小一時間座りっぱなしだった為、立ち上がった瞬間少しくらっとなって
 倒れこんでしまった。途中なにか柔らかいものを触った感触が……

律「……ぶっとばすぞぉ!……むにゃむにゃ……」

 俺は起き上ったがやっぱり律子は寝たままだった。

P「コイツめ、絶対寝たふりをしてるな……」

 俺は肩を揺すって起こそうとしたが律子はまったく起きず、仕方なく無理やり
 席から引っぺがして車まで運ぶ羽目になってしまった。
 その時、つい胸を触ってしまい……

P「うわっ!!す、すまん!!」
律「う、う〜ん……むにゃむにゃ……」

 だが真の事件はここからだった。

−−−翌日−−−
P「おはよう、律子。」
律「……………」

 だが律子は何も答えない。

P「おーい、律子どうしたんだ?」
律「……………」

 立ち上がって俺の顔も見ずにぷいっとどっかに行ってしまった。

P「なんなんだ?あれ……俺なにか悪い事したかな?」

 俺は思案してみるが、思い当たる事が多過ぎて(伝票ミスだとか、
 スケジュールミスだとか)わからなかった。

P「小鳥さん、何か御存知ですか?」
小「何も知りませんけど……律子さんさっきまでは普通でしたよ?
  プロデューサーさん何かやったんじゃないですか?」
P「そうですか……わかりました。ありがとうございます。」

 どうやらやはり俺が原因のようだ。しかし何が原因かわからんな。
 ここは1つ腹を割って直接聞いてみるか。

P「なあ律子、ちょっといいか?」
律「いえ、今日は用があるのでこれで帰らさせていただきます。」
P「お、おい……」

 そんなこんなでさっぱり何もわからないまま夜になってしまった。
 そろそろ帰るかといった時間……ピロリ〜ン。

P「お、メールか。律子からか?」

 なんだろう?と俺は嫌な胸騒ぎをおぼえつつメールを開いた。

−−−メール−−−
件名:律子です。

…あれ、なんだか胸のあたりに違和感があるなぁ。
どうしてだろう?不思議だな〜?

さて、次の仕事は、いつにします?
プロデューサー、そろそろレッスンもお願いしますね。
21日(火)の10時から22日(水)の0時なら空いてますよ。







…今度やったら、タダじゃおきませんよ?
−−−ここまで−−−


 ぶわっ!!と背中に冷たい汗が流れた。

P「やっぱり起きてたんぢゃねーか……」

 俺は今更ながらあの感触を思い出しつつ明日はどう謝ろうかと考えつつ
 眠りについた。

−−−翌日−−−
P「すまんっ!律子!!」

 俺は出社早々に律子の元へ謝りに行った。

律「なんです?プロデューサー殿。」
P「まったくもって俺が悪かった!」
律「どうしたんですか?プロデューサー。さあ、早く今日のレッスンお願いしますよ。」

 怖ろしい程のプレッシャーが俺にふりかかる。

P「律子……」
律「なんでしょうか?プロデューサー殿。」

 怒ってる、絶対怒ってる。あの冷たい視線、この他人行儀っぽい口調。
 あぁぁぁぁぁぁ………と狼狽してると、

律「プッ…あっははははは!」
P「……………へ?」
律「あんまりにも必至だから笑いが抑えられなくなっちゃったじゃないですか〜。」
P「は?」
律「ですから〜…ああもう!!あれは一旦水に流しますから早くレッスンお願い
  しますよ。」
P「あ、ああ……」

 俺はホッと胸を撫で下ろした。が!!

律「しっかりとこの穴埋めはさせて頂きますよ。」

 耳元でぼそぼそっと律子が言った事は今晩身を持って知ることになった。




 パクパク。

律「う〜ん、やっぱりこの季節は松茸ですよね〜。」

BAD COMMUNICATION




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