かまいたちの夜

P「まいったなこりゃ。」

 俺達は雪山で撮影をしていたが吹雪いて来た為に撤収を始めていたが
 まさか撮影班とはぐれるとはな。

律「プロデューサー、あそこに小屋がありますよ!」
P「無理に歩いて遭難するよりはマシか。とりあえず急ぐぞ!」
律「ええ。」

 ドンドンドン!

P「すみませーん!誰かいませんかー!!」
律「プロデューサー、ここ鍵かかってませんよ。」
P「仕方ない、緊急避難だ。勝手にあがらさせて貰おう。」

 戸を開けると部屋は真っ暗。電灯がぶら下がってる様子も無かった。

律「どうやらここは避難小屋みたいですね。どこかにロウソクとかあると
  思うんですけど……」
P「今ライターの火を点ける。ちょっと待ってろ。」

 俺は荷物を降ろしてポケットに入ったライターに火を点けた。

律「あっ、あそこね。」

 律子は部屋にある棚に置かれた箱からロウソクを1本取り出す。

P「これで少しはマシになったな。それより寒くて仕方ないな。」
律「ここが避難小屋だったら薪とかもあると思いますよ。」

 俺達はロウソクの灯りを頼りに色々と漁った結果……

律「とりあえず暖炉にくべる薪はあるようですね。あと新聞紙も。」
P「これで火を焚けと言う事だな。」

 凍える手で薪を巻いたロープをほどき、暖炉に薪をくべる。ロウソクの
 火をくしゃくしゃにした新聞紙に点け暖炉へと放り込む。

P「なんとか火は点いたようだな。」
律「でも全然暖まりませんね。」

 どこからか隙間風が入ってきているんだろうか?2人してガタガタと
 震えている状態だった。

P「とにかく暖炉の前で丸くなってるしかないだろうな。」
律「プロデューサー、一応毛布もあるみたいですよ。」

 律子は更に小屋を物色して毛布を1枚見つけてきた。

P「1枚しかないのか?」
律「し、仕方ないじゃないですか!1枚あっただけでもマシですよ!」
P「まあ、それはそうだが……」

 外からはビュービューと凄い風音がしてとても止むような気配は無い。

律「プロデューサー、このままじゃ凍え死んじゃいますよ!!」
P「だが暖まるにも毛布1枚だし、あとは暖炉の火が大きくなるのを待つ
  しかないだろ?」
律「そうなんですけど……くちゅっ!」

 可愛らしいくしゃみだな。などど考えてる場合じゃない!

P「律子、お前だけでも毛布にしっかりくるまってろ。」
律「でもそれじゃあプロデューサーが……」
P「俺はいいからしっかりくるまってろ。薪も残り少ないしな。俺は今から
  外に出て薪を拾ってくる。」
律「えっ!?ちょ、ちょっとプロデューサー、こんな吹雪じゃ危険です!」
P「そうは言ってもこのままじゃ俺達2人ともお陀仏だぞ?」
律「それはそうだけど……」
P「いいか、俺は遭難しないよう小屋の周りで拾うようにするから安心しろ。
  危険そうだったらすぐ戻る。」

 そう言って律子の制止を振り切って俺は外へ出た。
 ビュオウ!強烈な冷気を纏った風が容赦なく俺に襲い掛かる。

P「くそっ!まったく何も見えん!!」

 俺は片手を小屋に触りつつ手探りで足元を探す。

P「雪ばかりで何もないじゃないか!」

 そんな文句を言いつつもぐるりと一周する頃にはある程度の薪が集まっていた。

P「寒い!このままでは凍え死んじまう!!早く中に戻らないと………」

 俺は小屋に入ろうとした時、焦って階段で足を滑らせて……

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「プロデューサー、本当に大丈夫かなぁ。」

 相も変わらずビュービューと風の音だけが酷く耳をつんざく。

律「それにしても大分暖まってきたわね。」

 私はなんでこんな事になっちゃんだろう?と色々と考えも巡らしていた。
 ガラガラガラ。ドスン!

律「ん?何の音かしら?」

 風の音とはまったく違う音が聞こえてきた。だがその音もまた風の音に
 掻き消される。

律「それにしてもプロデューサー遅いわね。まさか何かあったんじゃ……
  ううん、ここで私が外に出て行っても二次遭難するだけだわ!」

 そう思いつつも小屋の中でプロデューサーを待つ。

律「でも本当に遅いわね……」

 ちょっとだけ見るのは構わないわよね?と自分で納得させつつ戸を
 開けようとする。

律「あれ?開かないわね。よいしょっと。」

 思いっきり押すと隙間が出来て凄まじい冷気が吹き込んでくる。なんとか
 自分が通れるくらいまで開けて外に出ようとしてみると足元には……

律「ちょっと!プロデューサー!プロデューサー!!」

 真っ白になったプロデューサーが倒れていた。戸が開かなかった原因は
 プロデューサーであった。
 私は急いでプロデューサーを小屋の中に引っ張り込んだ。

律「プロデューサー、目を覚まして下さいよ!!」

 私は必死にプロデューサーを頬を叩く。

P「…………ああ……律…子か………」
律「プロデューサー、しっかりして下さい!!」

 冷たい、冷たい、冷たい、体温低下、体温低下、心機能停止、死!!

律「早く暖めないと!!」

 私は殆ど動かないプロデューサーを暖炉前に運び上着を脱がせて毛布に包む。

律「プロデューサー!プロデューサー!しっかりして下さい!!
  プロデューサー!プロデューサー!!」

 私は必死になって呼びかける。

P「律……子………」

 今にも目を閉じそうだ。

律「目を閉じちゃ駄目です!私をトップアイドルまで連れて行ってくれる
  って約束したじゃないですかっ!!」

 私はプロデューサーをとにかく揺する。お願い、寝ちゃ駄目っ!!

P「つかれ…たん…だ………ねさ…せて…くれ……」
律「駄目ですっ!お願いだから起きてて下さいよっ!!」

 プロデューサーが死んじゃう。ヤダヤダヤダァ!!
 ふとその時私の脳裏にくだらないやりとりが浮かんだ。

−−−学校にて−−−
ア「雪山で男女が遭難したら裸で暖めあうってジョーシキでしょ?」
律「まっさかぁ。アケミだったら裸になるの?」
ア「相手がカッコいい人だったらなっちゃうかも。そういう律子はどうなの?」
律「私はそんな非効率的な事しません。お湯に浸したタオルとかちゃんと温める
  物を用意するわ。」
ア「わっかんないわよ〜?山小屋とかだったらそんなものないもん。」
律「それはそうだけど……」

…………………………

律「プロデューサー……」

 私は意を決して服を脱ぎだす。

律「プ、プロデューサーを助ける為だもん。」

 私は毛布を剥いでプロデューサーの服を脱がす。
 プロデューサーを助ける為だったらなんでもする!その強い意志だけが
 律子の心を突き動かしていた。

律「プロデューサー、しっかりして!!」

 私は毛布を羽織って冷たくなったプロデューサーに抱き付く。

律「冷たっ!!」

 冷え切ったプロデューサーの身体に自身の身体を直接重ねる。
 だがあまりにも冷たさに意識が飛びそうになる。

律(プロデューサー………)

…………………………
……………………
………………
…………
……

 チュンチュン。

P「ん…」

 俺は窓から差す淡い光に目覚めさせられた。

P「昨日、確か戸の前で足を滑らせて……おおう!!」

 気付くと律子が裸で俺に抱き付きながら眠っている。

P「こ、これは何という……」

 昨晩の記憶が無い俺の中で罪悪感、背徳感、責任、色んな感情が渦巻いている。

P「と、とりあえず、律子!律子!起きろ!!」
律「ふぁぁ……あ、おはようご……プロデューサー!起きたんですか!!
  心配したんですよ!!………本当にもう……うぅ……」
P「お、おい!律子急に泣くなよ……責任は取る!」
律「何言ってるんですか!泣いてなんかいませんってば!!
  この馬鹿プロデューサー!!何が責任ですかっ!!」

 律子は必死に俺の胸を叩いてくる。

P「わかった!わかったからとにかく服を着てくれ!!目のやり場に困る!!」

 するとおずおずと視線を下ろした律子は……

律「見るな〜〜!!」

 そう言って胸を両手で隠ししゃがみこんでしまった。

律「着替えるからあっち向いててください!!絶対こっち見ないで下さいよ!!」
P「はいはい。」

 こうして俺達はこの雪山の遭難を乗り切ったのである。

…………………………
……………………
………………
…………
……

律「で、このノートはなんですか?」
P「いや、そのな……こんな感じの出来事をドラマ化出来たらなと書き溜めて
  おいてだなぁ……」
律「なんで私が裸になってプロデューサーに抱き付くんですか!!」

 スパーン!!

P「い、いひゃい……」
律「私は絶対そんなことしません!そんな事になったらプロデューサーを見捨て
  るんですから。」
P「本当か?」
律「(頬を赤くして)本当です!!」




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