悪夢再び。

千早「おはようございます、プロデューサー。」
 P「ああ、千早おはよう。」
千早「いいえ、私千早じゃありませんよ?」
 P「は?」
千早「ですから千早じゃないんですったら。」

  くいくいっと何もない顔の横を手で摘まむ千早。

 P「その口調…仕草……まさか律子か?」
千早「そうです律子です。」

社長「やあやあ、久しぶりだね諸君。最近私の出番を渋っているのか
   中々出してもらえなくてね……オホン!
   なにやらまたまた律子君と如月君がなんか大変な事になって
   いるようだな。」

 P「それで……千早はどこにいるんだ?」
千早「ここにいます、プロデューサー。」
 P「………へ?」
千早「だから私と、私が千早の身体にいるんです。」
 P「じゃ、じゃあ律子の身体はどこにあるんだ?」

亜美「あれ〜?律っちゃんが動かないよ〜?」
真美「律っちゃん死んじゃったの〜〜?ヤ〜〜ダ〜〜〜><」
亜美「待って真美。今なら律っちゃんのおっぱい触り放題だYO!」
真美「そっかー。悪い事ばかりじゃないんだね!んっふっふ〜☆」

  まるでおもちゃのように律子の身体を触ったり動かしている2人。

 P「……おいおい、大変な事になってるじゃないか。」
千律「こらっ!亜美!真美!私の身体に何してるのよっ!!」
亜美「うん?千早お姉ちゃん何?」
真美「なんか律っちゃんの口真似流行ってるの?」
千律「あ・ん・た・た・ち・ね〜〜〜!!」
亜美「わ〜千早お姉ちゃんが怒った〜!」
真美「行けっ!律っちゃんロボー!」

  はぁぁ、深いため息をついて声を掛けた。

 P「お前達、そこまでにしとけ。」
亜美「あ、兄→(C)」
真美「兄→(C)が言うならやめとくね。」

  しぶしぶ手を放してどこかに行く2人。

 P「さて、どうしたものかな?」
千早「私としても困ります。以前は身体が入れ替わっただけでしたが、
   今回はまた大分違った感じなんです。」
 P「ほうほう。」
千早「私が表に出てる間は律子はどこか奥に追いやられてるのですが、
   律子が表に出てくると私がどこか奥に追いやられてるような感じ
   なんです。」
 P「いわゆる二重人格って奴みたいな感じだな。」
千律「そうそうそんな感じです。思ったより物知りなんですねプロデューサー。」
 P「それはともかく今しゃべってるのが千早なのか律子なのかまったく
   わからんな。それとどうやったら元に戻るか……また春香に頼むか?」

春香「へくちっ!誰か私の噂でもしてるのかな?アーアーアーアー。
   ドーレーミーレードー♪」

千早「プロデューサー、私的にはそれで解決するとは思えないかと。」
 P「だよなぁ。律子の身体に関しても問題だしな。」

  軽く律子の方を見てみる。パッと見は寝ているかのように見える。
  胸も上下しているので息もしているようだ。

千律「長引けば長引くほど私の身体も死に向かってしまうと思います。
   なんとか元の身体に戻れないかなぁ。」
 P「そうだな。この状態だとまず水も食事が取れないから2〜3日で衰弱死
   してしまいそうだな。さて……」

  まずここに律子の身体を置いておくことは危険だ。また亜美達に何されるか
  わかった物じゃない。そして今日は事務仕事だけで他に特に用事はない。

 P「よし、まず俺の家に律子を運ぼう?」
千律「は?」
 P「このままだとまた亜美達に何されるかわからんぞ?それに俺は今日
   事務仕事だけだからまあ今日はこれであがっても問題なかろう。」
千律「ま、まあ……」
 P「善は急げだ。千早、律子の足の方を持ってくれ。」
千律「はぁ…自分で自分を持ち上げるなんてね……」

−−−プロデューサー宅−−−
千律「へぇ……思ったより片付いてるのね。」
 P「ん?そうか?」
千早「私も色々と雑誌が散乱してたりしているかと思いました。」
 P「おいおい、千早も律子も勘弁してくれよ。」

  ベットにはさっき運んできた律子が横たわっている。

 P「さて、まず実験をしてみようか。」

  そう言って俺は律子のほっぺたをつねってみた。

千律「痛っ!ちょっと、私の身体に何するんですか!!」
 P「ふむ、痛みは共有してるわけか。」
千律「一応そうみたいね。」
 P「じゃあ次は千早、お前が律子に触ってみてくれ。」
千早「こ、こうです……ひゃっ!」

 触った瞬間手を引っ込める千早。

 P「どうしたんだ?」
千早「今律子の頬に触れた途端、私の頬を何かが触った感じがしました。」

  むくむくと欲望が湧き上がる。そっと律子の胸に手を……

  ペシッ!!

 P「痛っ!」
千律「何をやろうとしてるんです、何を!」
 P「いや、柔らかそうだなと。」
千早「プロデューサー、見損ないましたよ。」
 P「ちょっと待て勘違いするなよ2人とも。物事確認が大事だろ?
   胸ならどうだろうか?はまだ試してもいないだろ?」
千律「試すまでもありません!!」

  とその時千早の手が律子の胸に伸びていた。

千早「あうっ!!」

  急に自分の胸を押さえる千早。

 P「ち、ち、ち、千早!?」
千律「ちょ、ちょっと千早何やってるのよ!!」
千早「いえ…先程頬で触られた感じがしたので念の為に試してみたんですが…」
 P「あ、ああ……(続けてしゃべられると律子がしゃべってるのか千早が
   しゃべってるのかまったくわからんな。)」
千早「凄く……いえ、なんでもありません。」
 P(言え!言うんだ!千早!!)
千早「と、ところで今晩はどうすればよろしいのですか?」

  当然の疑問を投げかけられた。

 P「ああ。悪いが千早…と律子は一緒にベットで寝てくれ。俺はその辺で寝るさ。」

  そう言って無造作にテーブル側の床を指差した。

千早「で、でも……」
 P「お前達は年頃の女の子だろ?今の状況を考えてホテルなんかには行けないだろ?
   これで律子の身体を運んでみろ。誘拐犯かなにかと勘違いされるぞ。」
千律「確かにそうですね。でも流石に部屋主を差し置いてベッドはちょっと……」
 P「なに言ってる。俺のことなんか気にするな。」

  ぐぐー。

千早「ふふっプロデューサー、お腹鳴ってますよ。」
千律「私が何か作りましょうか?」
 P「いや、ここは何か頼むか。そういや律子も千早もどちらの意思で身体を
   動かしてるんだ?」
千律「そういわれると……千早が支配力強いみたいです。」
 P「そうか。とりあえず何食べる?」
千早「プロデューサーにお任せします。」

  そんなこんなで軽くピザを頼んで食事を済ませたが妙に千早がそわそわしている。

 P「どうしたんだ?」
千早「いえその……ちょっとお風呂に……」
 P「ああ!気付かなかったよ。う〜ん……じゃあ俺少しの間出かけてくるよ。」
千早「すみません…」

  そういって俺はちょっとコンビニまで足を伸ばした。

−−−浴室−−−
千早「とりあえずシャワーで。」

  私と私は軽くシャワーを浴びていた。

千律「ところで千早はプロデューサーの事どう思う?」
千早「えっ?プロデューサーは私達の重要なパートナーですよね?」
千律「ううん、なんでもないわ。」
千早「変な律子ね。」
千律「それにしてもこの間もそうだけどなんでこんな事になっちゃったのかしら。」
千早「そうですね。またプロデューサーに御迷惑をおかけしちゃって……」
千律「これには何か原因があるはずよ。千早、とりあえずプロデューサーが帰って
   くる前に調べてみましょ。」
千早「ええ。」

  私と私は手早く身体をプロデューサーが用意してくれたバスタオルで拭き、
  ベッドの元へ急いだ。

千律「私の身体に一体なにかあるのかしら?」
千早「あまりぺたぺた触りたくないのですが……」
千律「そんな事言ってもしょうがないでしょ!とりあえずまず手を繋いで見る
   ってどうかしら?」

  私はそう提案して私の手と繋いでみた。

千早「な、なにこれ……」
千律「ちょっと!千早!早く手を離してっ!!」

  私はそう叫んで手を離させた。

千早「はぁっ、はぁっ」
千律「こ、これは難敵ね。延々と手をまさぐられるような感触があるわね…」

  ガタガタッ。ガチャッ!

 P「おう。風呂からもう上がってたか。」
千早「ひゃっ!お、お帰りなさいプロデューサー。」
 P「ん?どうしたんだ?妙に顔が赤いぞ?」
千律「別になんでもない!なんでもないですったら!!」
 P「そうか?まあいいか。」
千早「明日から私達、どうすればいいのでしょうか?」
 P「そうだな。とりあえず今日は寝て明日考えよう。あまり時間はないがな。
   おっと、律子。時間無いからって徹夜して考えようとかは無しだからな。」
千律「うっ…そ、そんな事、私考えてませんよ。」
 P「ふふん、どーだか。」
千早「とりあえず私はどこに寝たらよろしいでしょうか?」
 P「そうだな……悪いが律子の身体と一緒に寝て貰えるか?」
千早「は、はぁ……」
千律「自分の身体の横に寝るなんてねぇ……」
 P「じゃあな。おやすみ2人とも。」
千早「おやすみなさいプロデューサー。」
千律「おやすみなさい。」

……………………

  カチ、カチ、カチ、カチ
  時計の音が静かな部屋に鳴り響く。

千律「プロデューサー、起きてます?」
 P「律子、どうしたんだ?」
千律「私このままだったらどうすればいいのかなって考えちゃって。」
 P「俺の知っている秋月律子はそんな弱音を吐いたりしないけどな。」
千律「そう……ですか?いくら私でもこんな異常な事が何度も続けば弱気
   にもなりますよ……」
 P「まあな。だがここで諦めたらそれで終わりだ。人間諦めが肝心って
   言葉はあるが俺は最後まで諦めないぞ!」
千律「プロデューサー……」
 P「まあ悩んでても仕方ない。とりあえず寝るぞ。律子も疲れて…
   千早が疲れるのか?まあいいや。おやすみ。」
千律「はい、おやすみなさいプロデューサー……」

−−−翌朝−−−
 P「ふぁああ。」

  身体のあちこちの痛みで目を覚ました。そういや床に寝っ転がっただけ
  だもんな。寝ぼけ眼をさすりながらベッドを見るとまだ2人は寝てる
  ようだな。

 P「さて、飯か……」

  とりあえず簡単にトーストと目玉焼きを2人分用意した。

千早「あ、プロデューサー。おはようございます。」
 P「ああ、おはよう。洗面所ならそっちだぞ。」
千早「はい、すみません。」

  半分寝ぼけながら歩いていく千早。

 P「律子も早く目を覚ませよ。」

  そうベットで寝ている律子に声をかける。だが律子は目を覚まさない。

 P「一体どうすれば律子は元に戻るんだ?」

  俺は持てる限りの知恵を振り絞って考えた。

 P「やっぱり……王子様のキス……かな?」

  ちょっぴり自分に都合のいい解釈かもしれないが出来る限りのベストは
  尽くしたい。あれ?こんな事律子を初めてプロデュースする時にも
  言ったなぁハハハ。

  俺は寝たままのお姫様にそっと接吻をした。

 P「律子ぉ……起きてくれよ……」
律子「……嫌ですぅ……寝てますよぉ……」
 P「!?おい、律子!律子!!起きろ!!」

  今聞こえたのは幻聴だったのか?俺はベッドの上の律子を揺さぶった。

律子「……寝てますよぉ……熟睡ですよぉ……」
 P「元に戻ったのか!?おい!律子!!千早っ!!お前はどうなんだ!?」

  俺は律子を揺さぶりつつ洗面所の千早に声をかける。

千早「プロデューサー。今私の中には律子は…いないみたいです。」
 P「じゃあやっぱり……」
律子「ふぁぁぁ。まだ7時じゃないですかぁ。もう少し寝させてくださいよ。」
 P「律子!!」

  俺は思わずそう悪態を吐く律子を抱きしめた。

律子「ちょ、ちょっと!何するんですか!!ち、千早が見てるじゃないですか!!」

  顔を真っ赤にして反論する律子。

 P「あ、ああ…す、すまん。」
千早「い、いえ…私も何も見てませんから……」

  こころなしか千早の顔も赤く染まっている。

律子「さてさて元の身体に戻れた事だし、再びお仕事と行きますか!」
千早「そうね律子。」
律子「とその前にお腹を満たさないとね♪」


−−−後日談−−−
  あの事件から2日後、更衣室にて千早から打ち明けられた。

千早「律子。」
律子「何?」
千早「私、あの日あったこと黙ってるから。」
律子「あの日ってなんのこと?」
千早「プロデューサーの家に泊まった翌日の朝の事よ。」
律子「ああ、プロデューサーに抱きしめられた時のことね。体調が完璧だったら
   ハリセンでしばいてるとこだったわ。」
千早「ううん、その事じゃないの。」
律子「………」

  思い当たる事があり、顔を真っ赤にする律子。

千早「私はまだあの時感覚を律子の身体と共有してたから何があったか知ってる
   から……私、黙ってるわ。」
律子「…う、うん、そ、そうしてもらえると助かるわ……」

  更衣室で顔を真っ赤にして押し黙る2人だった。




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