恋を夢見るお姫様

P「酒が入ると人が変わると言うのは良く聞くが…ここまで変わるとはな…」

 俺達は今、仕事の打ち上げで居酒屋にいた。
 律子の引退コンサートから3年。律子の手腕は凄いものだった。
 新しく765プロに入った星井美希と言う少女の担当プロデューサー
 として彼女は頑張っているが、あっと言う間に星井美希をトップアイドル
 に押し上げてしまったのだ。

律「ねぇ。ちゃんと飲んでる〜?アハハハハ」
P「ええい!いちいちベタベタひっつくな!!」
律「ま〜た〜。この律子様のお酒が飲めないっていうんですかっ!」
P「だからそうじゃなくてな……」
律「わたち3ちゃい。」
P「なぜ幼児に戻る!?」
律「あははははははは」
P「頭痛くなってくるわ。」
律「ねぇ、私の事好き?」
P「えっ!?」
律「私はプロデューサー時代の時からあなたの事かっこいいと思ってたの。」

 酔っているとは言え、俺にとってはまさに衝撃の告白だった。

律「ねぇ聞いてる?」
P「あ、ああ。」
律「あなたは私の事どう思ってるの?」

 ドクン。ドクン。心臓の音がはっきりと聞こえる。

P「お、俺は律子の事」
律「ブブー!時間切れ〜〜。アハハハハ」

 そう言いながら俺の背中に抱きついて俺の太腿をバンバン叩く。
 背中に柔らかく熱い感触が。
 律子さん、これはまさに生殺しですよ。

律「私もう眠い〜。」
P「お、おい。こんなとこで寝るな!すみませーん、御勘定お願いします。」

 さっさと代金を支払い店を出るが律子の足がおぼつかない。

P「おい、律子。しっかり立てるか?」
律「む〜り〜〜お姫様だっこ〜。」

 ぶはっ!その発言にクラッと来た。なんて事を言い出すんだコイツは。

律「ねぇ……私をしっかり捕まえてよ。」

 これで理性を保てる奴は男じゃない。俺は思いっきり律子を抱きしめた。

律「………………」
P「………………」

 2人して何も言わずに居酒屋の前で抱きしめあっていた。

律「……………汗くさっ。」
P「お前なあ、この状況でなんて事言い出す。」
律「そんなこと言っても仕方ないじゃない。くさいんだもの。」
P「なんか興醒めになってきたぞ…」

 俺は抱きしめていた腕を緩めて律子から離れようとする。
 だが律子は抱きついたままだ。

P「おい律子。いつまで抱き付いてるんだ?」
律「私がトップアイドルになるまで。」
P「は?お前もう引退したろ?」
律「違うの。私はダーリンだけのトップアイドルになりたいの。」
P「律子……」
律「くー……くー……」
P「おい、律子?律子!」

 どうやら律子は寝てしまったようだ。さて、どうやって連れて帰るかだ。
 おんぶ……は厳しいしだっこ…も厳しいな。とするとアレか。

P「よっ!」

 俺はでろんでろんに酔った律子をお姫様だっこで持ち上げた。


−−−律子サイド−−−

 私達は今、仕事の打ち上げで居酒屋にいた。
 私は期待の新人と言われている星井美希のプロデューサーとして
 活躍している。彼女はやる気があまり感じられないがその才能で
 あっと言う間にトップアイドルまで駆け上がってしまった。

律「ねぇ。ちゃんと飲んでる〜?アハハハハ」
P「ええい!いちいちベタベタひっつくな!!」
律「ま〜た〜。この律子様のお酒が飲めないっていうんですかっ!!」

 今日の私はかなり酔っちゃってるみたい。

P「だからそうじゃなくてな……」
律「わたち3ちゃい。」
P「なぜ幼児に戻る!?」
律「あははははははは」
P「頭痛くなってくるわ。」

 本当に鈍感なんだから。私はこの酔いに身を任せて直接問いただしてみた。

律「ねぇ、私の事好き?」
P「えっ!?」
律「私はプロデューサー時代の時からあなたの事かっこいいと思ってたの。」

 そう、私はあなたが好き。あなたはどうなのかしら?

律「ねぇ聞いてる?」
P「あ、ああ。」
律「あなたは私の事どう思ってるの?」
P「お、俺は律子の事」
律「ブブー!時間切れ〜〜。アハハハハ」

 もう!はっきりしないんだから。なんかもう眠くなってきちゃったわ。

律「私もう眠い〜。」
P「お、おい。こんなとこで寝るな!すみませーん、御勘定お願いします。」

 眠い眠い眠い眠い。今日はもう自分の足で歩いて帰れる自信が無い。

P「おい、律子。しっかり立てるか?」
律「む〜り〜〜お姫様だっこ〜。」

 ちょっと冗談のつもりで言ってみた。しかし彼は何も動かない。
 更に悪戯心がムクムクと持ち上がり挑発してみる。

律「ねぇ……私をしっかり捕まえてよ。」

 ガバッ!
 え?なに?私なにされてるの?

律「………………」
P「………………」

 段々わかってきた。私、彼に抱きしめられたんだ。うわー、うわー。
 顔が一気に真っ赤になるのがわかる。私は平静を保ったつもりで言った。

律「……………汗くさっ。」
P「お前なあ、この状況でなんて事言い出す。」
律「そんなこと言っても仕方ないじゃない。くさいんだもの。」
P「なんか興醒めになってきたぞ…」

 彼は抱きしめた腕を緩めてくる。駄目!私はもっとこのままでいたいの!

P「おい律子。いつまで抱き付いてるんだ?」
律「私がトップアイドルになるまで。」

何言ってるんだろ?私。

P「は?お前もう引退したろ?」
律「違うの。私はダーリンだけのトップアイドルになりたいの。」

 眠い、私もう駄目。暗い闇の中に落ちていく……

 私は不思議な浮遊感を感じてふと目が覚める。
 嘘っ!私、お姫様だっこされてるっ!!うわー!うわー!

P「よく寝てるな。」

 ね、寝たふりしなきゃっ!!

律「くー……くー……」
P「本当に可愛い寝顔だよ。俺は律子が大好きだ。」

 えっ?えっ?えっ?えっ?えっ?えっ?ええ〜〜〜!?

P「なんだろうな。こんな付き合いだから面と向かっては言えないけどな。」

 ダーリン……私は思わず彼の頬にそっとキスをした。

P「えっ!り、律子っ!?」
律「そういうことはちゃんと私が起きてる時に言ってよね。ダーリンの馬鹿。」




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