ジェラシー

部屋には俺と律子しかいない。
部屋の中はただただ重い空気が流れていた。

事の発端はこうだ。

(ディレ1、以後『デ』に略)

デ「律子ちゃーん。」
律「なんでしょう?」
デ「後学の為にあの話題の映画でも行かない?ご飯も奢るからさ〜」
律「うーんどうしようかなぁ。プロデューサー、この後予定って入ってます?」
P「一応今日はこれでおしまいだな。」
律「そう?あの映画一度見てみたかったのよねー。じゃあ、お願いしちゃおうかな?」
デ「よーし!じゃあ早速行こうよ!!」
P「あ、ちょ、ちょっと!!」

俺は後片付けの為、一人残されその後律子がどうなったのかわからない。
夜に気になって律子に電話をしてみたが律子は出なかった。

−−−翌日765プロにて−−−
律「おはようございます。」
P「ああ、おはよう。律子、ちょっといいか?」
律「なんですか?別に構いませんけど。」
P「昨日、なんで俺を置いていったんだ。」
律「あれはディレ1さんが強引に車に乗せられちゃってプロデューサーの事
  まで気がまわらなかったのよ。」
P「夜に何度も電話したんだぞ。」
律「電池が切れちゃってたのよ。」
P「昨日、何かあったのか?」
律「どうしたんですか?なんにも無いですよ。そんな真剣な顔しちゃって〜。」
P「いいから答えろ!」

 ガンッ!!

 俺は気付くと机を殴っていた。

律「なに怒ってるんですか。なんにも無かったって言ってるでしょ?」
P「本当にか?」

 俺は律子の肩をつかんで問いただした。

律「痛っ!もうっ、やめて下さいっ!何を怒ってるんですか!!」

 律子は俺の手を振り払った。

律「プロデューサー、なんか変ですよ?私がなんにも無かったって言ってるのに
  信じないんですか?」
P「ああ、信じられないね。」
律「そうですか。わかりました!!」

と言うわけだ。

そして、今日の収録は昨日と同じTV局だった。控え室に通された俺達だが
2人の間に会話は無かった。

律「じゃあ行ってくるわね。」
P「ああ。」

なんともそっけない返事。俺達の信頼関係はこんなもんだったのか?

 トントン。トントン。

P「はい。」
デ「ちょっと失礼するわね。」
P「どうぞ。」

 ガチャ。

デ「律子ちゃん、昨日は映画面白かったわね。」
律「そうですね〜。まさかあそこでネガタロスが奪ったパスで変身するなんて
  思わなかったわ。」
デ「でも残念だわ〜。律子ちゃん『お食事は遠慮します』ってすぐ帰っちゃう
  んだもん。
P「えっ!?」
律「それは色々と……でも楽しかったですよ。」
デ「そう。それはよかったわ。今日の撮影もよろしくね。」
律「はい!」

 ガチャ。

…………
律「どう?プロデューサー。これでわかったもらえた?」
P「……ああ…すまなかったな……」

どうやら本当に俺の勘違いだったらしい。
しかも律子のことをちゃんと信頼しきれなかったのは俺の方だった。

P「律子、本当にすまなかった。」
律「ちょ、ちょっと。なに土下座までしてるのよ!!」
P「俺が律子を信頼しきらなかったばっかりに…」
律「もういいわよ。プロデューサーはディレ1さんと私がどこか行くのに
  なんか…あっ、もしかしてヤキモチ?」

律子が面白いおもちゃを見つけたかのような顔を見せる。

P「まっ、まさか。俺には律子のプロデューサーと言う職務が…」
律「はいはい。建前はそこまで。どう思ったの?」
P「いや、律子が俺を置いて行ってしまって映画の後に食事なんて
  楽しんでるなんて考えてたらちょっとイラっと…」
律「もう、そんな訳ないでしょ。プロデューサーを置いて楽しんでる
  …そりゃあ映画は楽しかったわよ。でも私たちはパートナーなん
  だから他の人に構ったりしないわ。」

そういって律子は俺の手を握った。

P「律子…」
律「それじゃ、行ってくるね。プロデューサー。」

控え室を出て行く律子の足取りはとても軽そうだった。





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