Deguchi Yuji Photo Memory

 

白 黒 写 真 帖

北海道紀行・1976年3月

 

                  3月に降る雪はまだ凍えるほど冷たかった/函館・立待岬  

 

1976年3月、
まだ春には遠い北海道を旅した。
純子と一緒に暮らし始めてから1年遅れの
新婚旅行だった。

バックパック姿で上野から夜行に飛び乗り
翌日夕方、稚内に着いた。
ただただ最果てに行ってみたかった。
旅の宿の予約もせず、
駅に着いた二人は
あやしげな老人に連れられ
うら寂れた旅館に案内された。

部屋には暖房もなく、もちろん夕食も用意されていなかった。
やがて冷たい部屋に、それまで見たこともない
おがくずを固めてつくられたオガタンが運ばれストーブに火がつけられた。
薄暗く冷たい部屋で、二人はこれからの旅について
語り合った。


第1章/稚内

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