ピアニストへの道? 2003年1月25日 更新
・・・音楽大学に入るまで
- ピアニストになるには・・・
国家資格も検定も免許も必要ありません。
しかし、一般的には音楽大学でピアノを専攻するか、個人的に高名な先生に師事し、有名なコンクールで受賞する必要があるでしょう。
その意味では音大に入る方が楽ですね。
ここでは、ごく一般的に音楽大学に入るまでを説明します。
- 前提条件
6歳から8歳くらいまでの間にピアノを始め、中学入学頃までに芸大ピアノ科卒の先生に師事していること、
出来るだけ早くグランドピアノを買うこと、
落ち着いて練習できる環境(物理的には独立した練習室を確保すること、家族の理解と協力があること、ある程度の経済力)
- 「音大を目指す」きっかけは何?
師事している先生から受験を勧められる場合、しかもそれが年齢的に早いほど、実現の可能性が高くなります。
次に自分から将来の受験を申し出て、先生が即座にOKをくれた場合も同様です。先生が一瞬口篭もったら?再考が必要かもしれません。
いずれにせよ、何より自分がピアノが好きでない限り達成するのは難しいと思います。
時期的には遅くとも高校入学時点で「受験」を念頭においた態勢が出来上がっていることが必須条件です。
- ピアノ曲の進度
受験前(高校3年)までに必要なレベルは、
1.練習曲は(並行して使うものも含む)
(ハノン→ツェルニー30番→ツェルニー40番を経て)
ツェルニー50番;クラマービューロー;クレメンティのグラドス・アド・パスナッスム
のいずれか、又は全部に入っているか、半分以上終えていることです。
2.曲の進度は
(ソナチネ・アルバム→ソナタ・アルバム→モーツアルト・ソナタアルバムを経て)
ベートーベン・ソナタアルバムの1/3以上をこなしていること。
3.バッハの進度は
(二声のインベンション→三声のインベンション→フランス組曲を経て)
イギリス組曲;平均律クラビーア曲集;パルティータのいずれか、又は2つ以上に入っていること、
が一応の目安となります。
- 「課題曲」のレベル
これらは受験に必要な課題曲のレベルでもあります。
一般には8月ごろまでに来春の受験の「課題曲」が発表されます。夏期講習会などがあれば、そこで発表されます。
普通は3曲ほど演奏しますが、古典派のソナタの急速楽章から1曲、バッハの平均律から1曲、ショパン・エチュードを1曲となります。
それぞれ技術的なレベルの幅を持たせた3曲くらいの中から選択します。実際にはソナタではモーツアルトよりベートーベンを選ぶ受験生がほとんどです。
平均律とエチュードはどれを選んでも余り技術的な差はありません。もしかしたら受験ではじめて練習するかもしれませんが、そういうレベルでも大丈夫です。
ソナタに関しては普通の受験生は何曲かは既に練習済みのはずです。
- 他の勉強事項
ほかに志望校に合わせて、ソルフェージュ・聴音などのレッスンを専門の先生に受けます。場合によってはそれぞれの音大向けのカセットテープやCDの教材で自習も可能です。
楽典、学科の勉強は自分でします。楽典は本が様々出ています。
書店よりは楽譜を売っているお店(クラシックCD店など)に置いてあります。
- 学科の試験のレベルは?
「ピアノさえ上手なら、学科は多少・・・でも大丈夫。」などと決して考えないことです。
実技(ピアノ)は当日の体調や楽器との相性、他の受験生からの思わぬ影響など、不確定要素だらけです。
他人にはっきりとした差をつけられる演奏レベルなら、志望校を1つ上げるべきで、そうではない場合はしっかり学科も勉強し、むしろ学科で差をつけるつもりで頑張りましょう。
実際、学科の方が差がつくようですよ。
はっきりとした出題傾向があるので、志望校の過去の試験問題をしっかり解いて勉強しましょう!
- 願書に先生の名前を書くのはなぜ?
ここに師事した先生の名前を書きます。ここがポイントです。
なぜ書かせるかというと、第1には現在師事している先生が実技試験の試験官にならないように、という配慮です。自分の生徒の評価をするのは公平ではありません。
しかし、実際には、その受験生がどんな先生に師事してきた(している)かを見ることによって、その生徒のレベルが大体分かるからでしょう。
そのため、受験生は志望校の教授・助教授のレッスンを受けるのです。(1回でもレッスンを受けると名前を書きます。)
- 季節講習会とは?
音大主催の講習会です。通常夏期(及び冬期)に開催されます。
武蔵野の場合で説明します。(音高受験、音大受験の両方で開催されます。)
・7月下旬または8月上旬に行われ、器楽・声楽・作曲・音楽学の専攻別に実施。
・4日間で45,000円(H13年度の場合)
・専攻科目のレッスン(1時限100分に3人の個人レッスンを2回。)
・楽典(クラス授業を3回。)、ソルフェージュ(視唱:クラス授業を2回、聴音:クラス授業を2回)実施。
・開講式で入試問題(英語・国語)を配布、入試説明会で解説。
受験生は必ずといっていいほど参加します。まず、楽典・ソルフェージュなどの出題者から講義を受けられる機会だし、実際の受験者ばかりなので、試験の雰囲気・レベルが分かるからです。
また、ここで入試要項も配布されます。つまり、入試の課題曲が発表されるのです。
- 実技試験
試験は長丁場です。実技も普通は2回に分けて行います。
私の時は1つの部屋に5人同時に入り、ピアノを囲んでコの字型に数人の試験官がいました。
他の受験生の演奏を聞かされるので、緊張しますし、前の人の演奏には良かれ悪しかれ影響されますので、気持ちをしっかり持つことが大切です。
- 私の入試の場合は・・・
とんでもないことが起こり、冷や汗物でした。
私は5人中3番目、二人目がとんでもないことをやってくれたので、試験官は、クッ、クッ、とハンカチを押さえて笑いを必死でこらえていたのです。
私はびっくり仰天でした。
私の隣の受験生も顔面蒼白、大いに動揺してしまいました。
心を切り替える間もなく私が弾く番です。
・・・止まらずに弾くのが精一杯、とても他人に差をつける余裕などありません。つくづくこの時は、「運命のいたずら」ということを思い知らされました。
- 入学後の先生は誰?
さて、大学では先生が生徒を選びます。これがポイントです。
教授、助教授クラスの指導を受けることが鍵ですから、そのために受験生はこぞって志望校の先生のレッスンに通うのです。
自分の師事している先生が芸大卒なら話は簡単です。
その先生が既にその音楽大学で教えているか、あるいは友人・同級生が先生をしているからです。
こうやって、実際には入学後に誰に師事するかが、試験前に決まってしまうのです。
- 在学中の演奏機会とは?
学生のオーディションによるピアノコンチェルトの選抜などがあります。
また、卒業試験で優秀な場合は、卒業演奏会に出演できます。
様々なコンクールに出て競うこともできます。
名実ともに一流のピアニストになれるのはごく一握りです。
実力はもとより、他の要素も重要です。
あとは本人次第でしょうか。
- 音大卒業後は?
いくらピアノが上手でも、卒業後演奏活動から全く遠ざかってしまう人も多く、何らかの形で続けていくのは至難の技です。
演奏会で収支を黒字にするのも一般的にはなかなか難しく、また、卒業証書があれば何不自由なく先生としてやっていけるので、敢えて困難なことをしない場合もあります。
あとは、本人の考え方次第です。やはり人前で演奏する機会を作らないと・・・と皆さん思っていると思います。
- 私の場合
普段の生活から大きく逸脱せずにできる範囲で、ゆっくりマイペースで演奏会を続ける道を選びました。演奏にはその人の人格が表れます。 私のピアノを聞きたいと言ってくださる方がある限り、リサイタルは続けていきたいと思っています。
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