<私のリサイタル>
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第1回リサイタル 1991年
<プログラム>
ハイドン ピアノソナタ第52番 変ホ長調 Hob.XIV-52
ベートーベン ピアノソナタ第31番 変イ長調 Op.110
ドビュッシー ベルガマスク組曲より「月の光」
2つのアラベスク
バルトーク ルーマニア民俗舞曲
プロコフィエフ ピアノソナタ第7番変ロ長調Op.83

第1回リサイタルの写真
第2回リサイタル 1995年
<プログラム>
バッハ パルティータ第5番 ト長調
ショパン ノクターン 第8番 変ニ長調
ワルツ 第7番 嬰ハ短調
ワルツ 第6番 変ニ長調 「小犬」
練習曲作品10-12 ハ短調 「革命」
バーバー ピアノ・ソナタ 作品26
(アンコール イベール「物語」より「小さい白いロバ」
ドビュッシー 「夢」)
第3回リサイタル 1999年
<プログラム>
ベートーベン ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13 「悲愴」
スクリャービン 12の練習曲作品8より第2番、第5番、第12番
バルトーク ソナチネ
ブルガリアのリズムによる6つの舞曲
プロコフィエフ ピアノソナタ第8番 変ロ長調 作品84
(アンコール ドビュッシー 「亜麻色の髪の乙女」)
<曲目解説> by Reiko
*第1回*
ハイドン●ピアノソナタ 第52番 変ホ長調
ハイドン(1732〜1809)は1761年から30年近くを、ハンガリーの裕福な貴族エステルハージ公に仕え、その後ロンドンに2回出かけて指揮と作曲を行い、最後の3曲のピアノソナタ(No.50〜52)を書きます。なお、ウィーン原典版ではこの52番(Hob.XVI-52)は62番とされています。
<第1楽章>Allegro(速く) 4/4拍子
ソナタ形式。流麗な第1主題と歯切れの良い第2主題を持ち、展開部では大胆な転調がみられる。
<第2楽章>Adagio(ゆっくりと) 3/4拍子
ショパン的な装飾を伴う、ロマン派の性格を持つ楽章で、A-B-Aの三部形式。A部分が第1、第3楽章の変ホ長調とは遠隔調のホ長調で書かれている点が、当時としては大変異例。B部分はホ短調で、劇的な表現が見られる。
<第3楽章>FINALE, Presto(急速に) 2/4拍子
ソナタ形式。同音連打が印象的な、軽快な主題を持つ華やかな楽章になっている。
ベートーベン●ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110
ルードヴィッヒ・ファン・ベートーベン(1770〜1827)はピアノソナタを32曲作りましたが、この31番は彼の晩年、死の5年前にあたる1921〜22年にかけて完成されました。晩年の彼は、ますます悪化する耳の障害と甥の後見の仕事で悩みと苦しみを深めながらも、最後の5曲のピアノソナタと、「荘厳ミサ曲」・「交響曲第9番」などを完成させました。このソナタは様式上は第3期に分類され、その特徴である瞑想的な性格、一層凝縮された語法、対位法的書法はそのままこの31番にも表れています。
<第1楽章>Moderato cantabile molto
espressivo 3/4拍子
(中庸の速さで、歌うように、大変表現豊かに)
提示部は冒頭の和声による4小節に続いて温和で優しい第1主題がソプラノに現れ、それが分散和音での移行部を経て跳躍進行でシンコペーションによる第2主題に導かる。展開部は冒頭の二小節の楽想を和声的に8回変化させる短いもの。
<第2楽章>Allegro molto (大変速く)
2/4拍子
複合三部形式による、スケルツオ風の楽章。二つの声部が反進行で主題を提示する。巧みな転調や短い舞曲的旋律を経て中間部に移り、はじめの主題に戻る。
<第3楽章>Adagio ma non troppo
4/4拍子
(ゆっくりと、しかし遅すぎずに)
序奏部-A-B-A'-B'という構成。深く静かに始まる冒頭の序奏部は、recitativo(叙唱)の指示のもとで自由な動きを見せ、同音連打の後、Arioso
dolente, Klagender Gesang(「嘆きの歌」=A部分)に導かれる。この「嘆きの歌」はやがてAllegro
ma non troppo
のフーガ(1つの主題が各声部に現れる形式;=B部分)に移るが、これが再び「力を失い、嘆いて」の指示で「嘆きの歌」(A')に調を移して引き継がれる。次いでもう1度フーガ(B')に戻るが、そこでははじめの主題が転回され、最後に主題が元の形で戻り、主調の変イ長調で輝かしく終結する。
ドビュッシー●「月の光」、「2つのアラベスク」
クロード・ドビュッシー(1862〜1918)はフランスの印象主義の作曲家として有名ですが、印象主義はモネに代表されるように、まず絵画から始まり、次いで文学、音楽の順に取り入れられました。実際、彼はマラルメのサロンでヴェルレーヌらの象徴詩人と交わり、大きな影響を受けています。彼は音楽においてドイツ・ロマン主義に対抗し、輪郭のはっきりした旋律や長短調組織の支配から抜け出す代わりに豊かで変化に富む和声で1つの印象・色彩感を創り出したのです。
<月の光>と<2つのアラベスク>は3期に分類される彼の作品中、初期に属します。このため、彼独自の手法は完全には確立されていませんが、長いペダルの使用による混色の美しさ、和声の非機能的使用など、後年の独創性を充分偲ばせる作品になっています。
<月の光> Andante tres expressif
8/9拍子
(歩く速さで、とても表情豊かに)
4曲からなる「ベルガマスク組曲」の第3曲。彼のピアノ曲の中で最も有名ともいえる作品。積み重ねられていく和音の透明で微妙な響きが印象的。
<二つのアラベスク>
第1番:Andantino con moto (歩くよりやや遅く、動きをもって)
アルペジオ(分散和音)が効果的に使われる、ABAの形式による作品。
第2番:Allegretto, Scherzando (速く、諧謔的に)
軽やかなリズムが印象的で、舞曲風の作品。やはりABAの形式。
バルトーク●ルーマニア民俗舞曲
バルトーク(1881〜1945)はハンガリー南部(現ルーマニア領)に生まれました。彼はブダペストの音楽院で学び、まずピアニストとして活躍します。音楽院で1級下のコダーイと共に、ハンガリー、ルーマニアなどの民俗音楽を録音によって大量に収集し、その1部を出版するほか、民俗音楽に関して著書5冊と論文多数を著しました。彼は民俗音楽に長短調組織の支配から解放される可能性を見出し、そこから彼独自の近代的な語法を引き出しています。<ルーマニア民俗舞曲>は1915年に作曲されました。本来はピアノ・ソロ用ですが、ほかにオーケストラやバイオリンとピアノの2重奏版(セーケイによる)があり、こちらも大変有名 です。題名の通り、ルーマニア(当時ハンガリー領のトランシルバニア地方)の短い6つの舞曲から成っています。
<棒の踊り>Allegro Moderato (程よい速さで)
<飾り帯の踊り>Allegro(速く)
<足踏み踊り>Andante(歩く速さで)
<角笛の踊り>Moderato(中庸の速さで)
<ルーマニア風ポルカ>Allegro(速く)
<速い踊り>Allegro;Piu Allegro(速く;更に速く)
プロコフィエフ●ピアノソナタ第7番 変ロ長調 作品83
セルゲイ・セルゲイビッチ・プロコフィエフ(1891〜1953)は[このリサイタルが’91年だったので]生誕100年にあたります。彼自身が優れたピアニストでもあり、ピアノ曲の作曲にも力を入れていました。彼はピアノソナタを9曲完成させ、なかでも第6番、第7番、第8番は、その完成度、高い芸術性から傑出しており、「戦争ソナタ(3部作)」と呼ばれています。(いずれも1939年に着手され、第2次大戦の最中に作曲されたため。)この第7番は1941年の独ソ開戦後、プロコフィエフがソ連国内を転々と疎開し、スターリングラードの攻防戦の1942年(昭和17年)に完成しました。第1番から第6番までは全て彼自身が初演しましたが、この第7番は当時28歳のリヒテルがモスクワで初演しました。
<第1楽章> Allegro inquieto (速く、不安げに)
6/8拍子
ユニゾンで提示される無調的な第1主題は次第に激しいリズムと不協和音に引き継がれ、やがて対照的な、静かで内省的な第2主題に入る。第2主題は次第に加速し始め、2つの主題が嵐のような激しさで展開され、次いで第2主題が調を移して再現し、第1主題に戻って楽章を締めくくる。
<第2楽章>Andante caloroso (歩く速さで、情熱を持って)3/4拍子
大変叙情的な流れるような旋律で始まる第2楽章は、前楽章とは好対照で、瞑想的である。しかし、つかの間の安らぎも、次第に高まる劇的な緊張に変わり、その緊張が解けると冒頭の旋律が再帰し、鐘の音を思わせる和音の後に終わる。
<第3楽章>Pretipitato (殺到して)
7/8拍子
このソナタを有名にしたトッカータ風の楽章。ピアノの打楽器としての側面を強調してはいるが、軽快さの内にユーモアを感じさせるような楽想も含みながら、8分の7拍子という変則的な拍子で区切れなく続いて行く。そして、最後には劇的で圧倒的な幕切れが用意されている。
*第2回*
J・S・バッハ●パルテイータ 第5番 ト長調
バッハは「イギリス組曲」「フランス組曲」の作曲後、1726年から再び組曲を作り始め、それを「6つのパルテイータ」としてまとめた。これらはいずれも古典組曲の伝統的な舞曲(アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ)を核としながらも、組曲以外の楽章や、本来の性格から離れた舞曲楽章を含み、より多彩な形態を見せている。
<パルテイータ第5番>
・プレアンブレム(前奏曲)
・アルマンド
・コレンテ(イタリア風クーラント)
・サラバンド・・・荘重な付点リズムの楽曲。
・テンポ・ディ・ミヌエッタ・・・3拍子ながら、二拍子系の6/8拍子の性格が強い。
・パスピエ
・ジーグ・・・3声のフーガ
ショパン●
<ノクターン第8番>変ニ長調 作品27の2
Lento sostenuto(ゆっくり、音を保って)
左手の分散和音の伴奏の上に美しい旋律が流れ、二つの主題
が3回現れる、ロンド風形式の、魅惑的なショパンらしい曲。
<ワルツ第7番>嬰ハ短調 作品64の2
Tempo giusto(正確なテンポで)
ショパンのポーランド的な情熱がよく表れた、最も有名なワルツ。
<ワルツ第6番>変ニ長調 作品64の1「小犬」
Molto vivace(非常に速く)
冒頭の変イ(ラ♭)を中心とした音型部分と、中間部の素朴な音型から成る、「小犬のワルツ」として親しまれている作品。
<エチュード作品10の12>ハ短調 「革命」
Allegro con fuoco(速く、熱烈に)
1831年9月、故郷ワルシャワの陥落を聞き、怒りと絶望を込めて書いたとも言われる、「革命」として親しまれている作品。
バーバー●ピアノソナタ 作品26
サミュエル・バーバー(1910〜81)は、アメリカの作曲界の保守派として知られ、彼自身もピアノの名手だったこともあり、優れたピアノを残している。中でもこのピアノソナタは、大胆な不協和音や調性の拡大、12音技法の応用など、現代の書法を巧みに取り入れ、彼の作品の中では急進的なものと言える。アメリカ作曲家連盟の創立25周年を記念した委嘱作品で、1948年に作曲され、ホロビッツによっ初演された。
<第1楽章>Allegro energico (速く、力強く)
冒頭から力強く始まる、半音階の付点リズムによる第度による叙1主題と上行4情的な第2主題を持つソナタ形式。
<第2楽章>Allegro vivace e
leggiero(速く、軽く)
高音域で奏される軽快なスケルツオで、随所複調が見られる。
<第3楽章>Adagio mesto(遅く、悲しげに)
三部形式の緩徐楽章。憂いに満ちた旋律が歌われ、終楽章のフーガに対する前奏曲としての性格を持つ。
<第4楽章>Allegro con spirito(速く、活気をもって)
4声の壮麗なフーガ(1つの主題が各声部に規則的に繰り返される形式)。こ=のソナタを締めくくるにふさわしい見事な作品となっている。
*第3回*
ベートーベン●ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」
ベートーベンが活躍した時代は、ちょうどピアノが現在の形に改良されていく過程と一致します。彼はこの楽器の急速な発展を受け、その機能を最大限に生かして作曲しました。「悲愴」を書いた頃には61鍵のピアノを使い、後に73鍵のピアノを贈られています。(現在のピアノは88鍵。)このソナタの完成は1798年頃で、翌年に「大ソナタ・悲愴」として出版されました。
<第1楽章>Grave(序奏)- Allegro
di molto e con brio
(極めて快速に、生き生きと)
ソナタを序奏部から始める事は当時としては独創的でした。重厚な主和音から始まるこの序奏部には劇的緊張と悲愴感がよく表れ、アレグロ部分の巧みな転調も大きな特徴となっています。
<第2楽章>Adagio cantabile(ゆるやかに、歌うように)
三部形式。第1楽章とは対照的に優美な主題が上声部で歌われます。第二部では伴奏の内声部に3連符が用いられ、第三部はほぼ忠実に第一部を再現します。
<第3楽章>Rondo(ロンド),Allegro(快速に)
ロンド形式。中間部には簡潔な対位法(2つの声部の掛け合い)が見られます。
スクリャービン●12の練習曲 作品8
スクリャービンはモスクワに生まれ、まずピアニストとして認められます。 初期にはショパン、ワーグナーらの影響を受け、後に神秘主義に傾倒して「神秘和音」などを生み出し、次第に無調的傾向に至りました。この作品は1894〜95年に作曲され、ショパンの影響を受けた初期の傑作です。
<第2番>A capriccio, con forza(自由に、力強く) 嬰ヘ短調
左右で常にリズムの比率が異なる複リズムや、強弱の突然の変化が特徴です。
<第5番>Brioso(快活に) ホ長調
オクターブを軽くしなやかに奏するための練習です。
<第12番>Patetico(悲愴に) 嬰ニ短調
右手のリズムにはショパンの「革命」の強い影響が感じられます。左手は時に4オクターブにも及ぶ分散和音からなり、最後は圧倒的なfff で終わります。
バルトーク●
ソナチネ
ハンガリー生まれ。作曲家・ピアニスト。主に東欧の民俗音楽を収集し、その旋律を作品の素材とする一方、非「西欧的」な独自の語法でも知られています。この曲は1915年の作曲で、ソナチネ(小さなソナタ)という題名ながら、トランシルバニア地方の民俗舞曲を主題としています。
<第1楽章>「バグパイプ吹き」 Allegretto(かなり急速に)
2/4拍子 ABAの三部形式。A部分はバグパイプの音階に基づき、複調を用いています。
<第2楽章>「熊の踊り」
Moderato(中庸の速さで) 2/4拍子
旋律が最初右手、次に左手で奏されるごく短い曲。
<第3楽章>「フィナーレ」
Allegro vivace(迅速に) 2/4拍子
A,B二つの舞曲から構成される終曲。
ブルガリアのリズムによる6つの舞曲
1926〜39年にかけて書かれた「ミクロコスモス(小宇宙)」全6巻の最後を飾るのがこの6曲です。この6つの舞曲は不規則な複合拍子を特徴としています。
<第149番> 8分の4+2+3拍子
右手がホ長調の上行形、左手がフリギア調の下降形の前奏の後に民謡風の旋律が現れます。
<第150番> 8分の5拍子
実際の拍子は2・3に分割されています。
<第151番> 8分の3+2+3拍子
右手の1・2・2・1のシンコペーションのリズムが独特の雰囲気を持つ曲です。
<第152番> 8分の2+2+2+3拍子、 Allegro
molto(とても速く)
6小節の長い前奏の後に、歯切れのよい旋律が現れます。
<第153番> 8分の3+3+2拍子
和声的な旋律が2・2・3のリズムパターンに乗って現れ、ジャズの影響が見られます。
プロコフィエフ●ピアノソナタ第8番 変ロ長調 作品84
プロコフィエフは南ウクライナに生まれました。ピアノソナタは全9曲あり、特に1939年から同時に着手された第6,7,8番のソナタは第2次世界大戦下の苛酷な現実を踏まえて書かれたため、「戦争ソナタ」三部作と呼ばれ、近代ピアノ史上極めて重要な作品となっています。第8番はより内省的・叙情的なだけでなく、第1楽章と第3楽章が極めて長大な点も特徴です。初演はエミール・ギレリスです。
<第1楽章> Andante dolce(歩く速さで、甘美に)
4/4拍子
変則的なソナタ形式。提示部は静かな第1主題、跳躍進行の第2主題、下降する短9度を伴った第3主題が奏され、展開部は無調的な楽句を変形しながら各主題が奏されて、fff
からppへの対比の後、短い再現部を経てコーダ(終結部)は主和音の明るい響きで終わります。
<第2楽章> Andante sognando(歩く速さで、夢見るように)
3/4拍子
主題と3つの変奏からなり、あくまで静かで叙情的な楽想に終始します。
<第3楽章> Vivace(快活に) 12/8拍子
ロンド形式。第1主題は彼特有の運動性を重視した音型、第2主題は下降する分散和音です。Allegro
ben marcato(急速に、はっきりと)の中間部では3拍子の4分音符の連続の上に断片的な楽句を繰り返しつつクライマックスが築かれ、第1楽章の短9度と第3主題を扱った後、無調的な部分を経て第1主題に戻り、彼らしい圧倒的なコーダで幕を閉じます。