日光・前白根 2000年9月


 所属山岳会の「集中山行」で日光へ行った。「集中山行」とは、例えば日光ならば、近郊のいろいろな山や、同じ山でも違ったルートを登り、日帰りならば昼食時に、1泊ならば同じ宿に泊まって、大勢の仲間との交流・再会を楽しむ企画である。

 今回は南間ホテルに140人余りが集合して、大宴会となった。
私は数あるコースのうち、初日は中禅寺湖畔の竜頭の滝から高山に登り、小田代原から湯元まで歩き、2日目は百名山の1つ白根山(通称:奥白根)に登るコースに申し込んだ。

 奥白根山へも2コース設定されていたが、敢えてより大変な方を選んだ。
湯元〜前白根山〜奥白根山〜国境平〜湯元、コースタイムは8時間である。
 このコースはいきなり前白根へ向かって標高差500m余りの急登がポイントで、あとは時間的に少し長いことだろう。25,000分の1の地形図を睨んで覚悟を決めた。

 前夜からの強風は吹き止まず、強風注意報まで出ているという。山頂付近には黒い雲がかかっており、上空を低い雲が駆け足のようにどんどん流れていく。
・・・スキー場の長いアプローチが終わって、ようやく登山道に入る。私の一番苦手なもの、それはこういう砂利道や舗装道路を歩くことである。

 さて、百聞は一見に如かず、とんでもない急登が始まる。
スキー場の上級コース何て甘い甘い!足だけではとても体を維持できず、手を使って周囲の木や枝を掴んで体を引き上げるような感じさえする。滑ったら下まで落ちそうだ。

 休憩を挟んでしかし60分余りでこの急坂は登りきった。フー。
あとはずっとなだらかで、前白根までは楽勝?である。そう思ったら、風の音が無気味に吼えている。
遮るものの無い稜線や山頂では、この風が一番怖い。
Sサブリーダーも「山頂は雨でしょう。風も相当だなあ。」と言う。

 何とか前白根まで来ると、まだ多少の木があるにも拘わらず、台風並みの強風にさらされることになった。
風もあり雨も降りそうなので、上に雨具を着ることにする。

 歩き出すが、これはすごい!
前白根山頂は目の前だが、ここからは全く木も無く、超強風の直撃で、もう立っているのがやっと、突風が吹くと吹き飛びそうだ。
一瞬風がおさまるタイミングに駆け足で岩陰へ。

 男性陣も身動きがとれない。もう目の前に奥白根が見える。
思案するリーダー。・・・「帰るにしても、とにかく五色沼まで降りましょう。」と斜面を降りようとするが、もう行動不能の状態だった。

 意を決して、それぞれ風の合間を縫って少しずつ後退。映画で銃撃しながら移動するような感じだ。
油断すると、体が舞ってしまう!かくして前白根までで撤退と相成った。

 かなり降りたところで風を避けてようやくの休憩。あとからぽつぽつ登ってきた単独行の人もすぐに戻ってきた。

 あの急坂を降りる方がもっと大変だったが、あっという間に降りてしまった。奥白根にはまたの機会に別ルートからトライしてみよう。


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