伊予ヶ岳・富山   2002年2月17日

伊予ヶ岳:平群天神社〜富山分岐〜展望台〜南峰〜北峰〜富山分岐〜六地蔵登山口

富山:福満寺登山口〜南峰〜北峰〜分岐〜伏姫籠穴〜岩井中学校


 房総の山は初めて。陽だまりハイクに適した山が多いと聞いている。今日は「房総のマッタ−ホ−ン」と呼ばれる伊予ヶ岳と、八犬伝ゆかりの富山(とみさん)という魅力的なカップリング。房総は都心からは意外と遠く、貸切バスは有難い。山渓の「千葉県の山」にガイドが載っている。

 天気は午後から雨という予想ながら、空は明るく、何とか下山までもって欲しいものだ。・・・まずは伊予ヶ岳から。登山口の目印は、平群(へぐり)天神社の大鳥居。鳥居のすぐ横手に、不似合いな大型観光バスが横付けしてあり、そちらに目が行ってしまった。どうやらツアー登山客が来ている様子。ちょっと気になる…。

 鳥居をくぐると目の前に伊予ヶ岳が聳えている。なかなかよい姿だ。境内の駐車スペースには何台も自家用車が停めてある。相当の人気と見た。
しかし、周囲は真っ赤に花粉をつけた杉林!わ〜どうしよう。覚悟してきたとはいえ、この季節は辛い。不便だが、仕方ないので用意したマスクを着用。呼気と共に眼鏡が曇る…。足元が見にくい。10:10歩き出す。

<伊予ヶ岳を臨む>

 しかし、周囲の梅の花や水仙が「ようこそ房総へ!」と微笑みかけてくれる。標高は高々336mだが、" 山は標高ではない"。1月3日の筑波山以来の私には丁度いい足慣らし。道も標識も整備されている。20分程で「富山分岐」に出る。あと10分で展望台へ。海が見える。富士山も真っ白な姿を現す…はずだったが、今日はやっぱりお預け。灰色の空、灰色の海。双耳峰の富山がほんのちょっと先によく見える。

<富山を臨む>

 展望台にはザックがデポしてある。この山はピストンなので、残していったのだろうが、多分これはツアー客のだろう。ここで一息ついて、いよいよ南峰を目指す。

<この先は急坂、鎖場の連続>

 道が細く急になる。すれ違いに気を使うような箇所になり、ロープがあるなあ、と思ったら先頭がストップ。上から登山グループが降りてくるとのこと。こちらも17人、あちらもバスだから数が多いだろう。見ているとガイドがロープの掴み方、足の置き場を指導しながら1人1人降ろしている。足元の覚束ない人たちがゆっくり降りてくる。我々は登山道の脇にへばりつくようにして、しばしば落ちてくる石を避け、代わりに「ラク!」と叫びつつ、木に掴まって嵐?が過ぎるのを待つ。

 ガイドも登山者もすみません、と申し訳なさそうだが、確かに標高・所要時間からみれば初心者向けの山と思ってしまうのだろう…。実は会報を見て母が「ここなら行ける?」と聞くので思わず、「マッタ−ホ−ンって書いてあるでしょ。星1つ(★)だからって易しい訳じゃないの!」と断念させた経緯がある。上部は鎖場、とガイドブックにあったので。

 ご一行は何とか(相当危なっかしかったものの)無事に降りていき、代わりに我々が登ることに。ロープと鎖が何回も連続している。が、登りは普通の登山者なら問題ないだろう。随分待っていた感じがするが、とにかく南峰へ出る。

 南峰は岩場になっていて、海に向かってつき出すような格好だ。落ちないように周囲に鎖が回してある。ここにも数人の団体が。

<南峰>

 次いで北峰へ向かう。危ない箇所はないが、下りになると乾いた土と細かい砂利がとても滑りやすい。ストック、持ってくればよかった!

<北峰から南峰を臨む>

 山頂を確認してまた南峰に戻る。11:30。まずは展望台へ戻ることとなる。鎖場の急坂は本当にいらやしい。足元でズルっと音がする感じ。また、自分も久しぶりで足に今ひとつ確信が持てないので、無理をせずにロープを握って確実に降りることとする。(実は誤って滑った人もありました。ご用心。)が、結構みんなも顔がこわばっていたような…?

 笑顔が出たのは、展望台が見え、滑っても怪我のない所まで来てから。下では心配そうにM子リーダーが全員が無事に下りるのを確認している。この斜面を全員が降りるのに20分を要した。上からは、更に危ない足取りの数人グループが降りてくる。みんな足元は登山靴ではない。

 8分も歩けば富山分岐。ここから車道に下りることにする。15分ほどで下に着く。最後は畑の中を歩いて左手に折れると車道に出る。ここには立派な案内図と、「六地蔵入り口」という標識がある。振り返ると、伊予ヶ岳南峰の岩峰が随分と立派に見えている。12:17着。

<右が南峰(岩峰)>

 お迎えのバスに乗ってこのまま富山へ。登山口は複数あるが、福満寺から。12:40、お寺の門をくぐって右手に登る。

<福満寺登山口>

 コンクリートの急斜面、私の最も苦手とする道だ。一合目の標識まであえぎあえぎ登る。10分で到着。ここで少し開けた場所があるので昼食とする。デザートにイチゴを頂いて、春を実感。山で食べる果物って、何でこんなにおいしんだろう!私はいつも軽い食事しか持っていかない(非常食はいつもしっかり持ってます!)ので、頂く一方で、この時はいつも心苦しい。

 さて、昼食を終えて、また整備された階段となった道を登っていくと35分で仁王門跡へ。石の基礎に柱の跡が残っているが、随分と控えめなサイズだったようだ。ここから左手に磨り減った石段を登ると開けた場所に出る。観音堂だ。さらに左手にひと上りすると富山の南峰。

 ここで雨が降ってくる。大した降りではないが、山道で着るのも大変なので、雨具を着ることに。傘だけの人もいる。私は合羽の上だけ着る。
また仁王門跡まで降りて、北峰を目指す。15分ほどで、簡易トイレやベンチがあり、その先には立派(すぎる)展望台の設置された広い北峰にでる。双耳峰とはいえ、随分と雰囲気の違うこと。見晴らしはよい。270度位は展望が開けている。見れば皇太子が来た記念碑がある。そう、浩宮がH11年に来たそうで、この整備ぶりは…。ちなみに"登山記念"ではなく"御散策記念"とあったので苦笑してしまう。

 周りには桜の木もあり、みんなで「お鍋にいいね。」「お花見もいいね。」などとチェックしている。曇天で遠望のないのが本当に残念だが、また来ましょう!
あとは分岐まで戻って岩井方面へ下山。20分で林道出合。舗装道路を歩くことになる。空は明るいのに雨は止まない。大した降りではないが、路面が濡れている。山道で降られなくて良かった。あとは、八犬伝の伏姫ゆかりの寵窟があるというので、どこかな、と探して歩く。自然足取りも速くなって、気がつくとリーダーと2人でみんなより大分先へいっている。迷う箇所もないので、ま、いいか。

 かなり歩いたな、と思ったらいきなり立派な門が目に入る。え?もしかして・・・。入り口に立派な説明板もあって、これが伏姫の寵穴だった。

<伏姫寵穴入り口>

 図によれば随分階段を上がっていかなければならないようだ。どうしようか?・・・雨もかなり降ってきた。ガイドブックには階段を上がって5分とある。「では折角なので、行きますか。」

 門の下にザックを置いていけば階段の登りも大して苦にならない。足早に登っていくとすぐに左手に建造物が。な〜んだ、意外に近いんだ。その右手奥に伏姫ゆかりの寵穴がある。鍵のついた小さな門があるが、鍵は近くに置いてあり、はいれるようになっている。

<寵穴と入り口の門>

 意外に小さな横穴だ。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の8文字が燈篭のようなものにも、外の立派な舞台にもちりばめられている。

 (私は昔々NHKの人形劇で「八犬伝」を夢中になって見た記憶がある。辻村ジュサブロ−作の人形で、ナレーションは故・坂本九ちゃん。仁・義・礼・智・・・は劇中歌になっていたので、今でも大体歌える。その結果、この富山へ来て、この8文字を思い出せる、という訳だ。それにしてもあの劇はよく出来ていた。)

 あとはまた車道にもどって、岩井中学前まで歩く。ここでお出迎えのバスに乗って、「海ほたる」経由、帰路へ。


戻る 山一覧