飯豊本山 2001年8月9日夜行〜11日
初日:大日杉〜地蔵岳〜切合小屋〜飯豊本山往復〜切合小屋(泊)
2日目:切合小屋〜地蔵岳〜大日杉
いよいよ憧れの飯豊に登ることになった。今回は何と夜行1泊という超強行軍である。果たして私の体力・脚力は耐えられるか?
集合場所の池袋にマイクロバス2台、総勢39名が揃って、いざ出発。事前の予報では何と雨。何とかならないものか。今回、座席のお隣はかわいいLilyさん。話すうちに、なんと私のHPの読者と分かり、一気に打ち解ける。やはりお母様が山に登られるそうで、何だか話がはずんでしまう。
さて、マイクロはひた走る。毎度のことながらよく眠れない。ようやく外が明るくなり始めた4時過ぎ、無理やり目をこじ開けて、う〜んと唸って車内の朝食に備える。空はどんより、近くの山は濃いガスの中。やっぱり、ダメか・・・。
何とかおにぎり1個を食べて、バスは大日杉登山口へ。バスのドアが開いたとたんに、わ〜っと大量の虫が飛び込んできた。ドライバーのS社長がすかさずバスの周囲を歩きまわりながら殺虫剤を車体に吹きかける。これは凄い。
降りても周囲にブンブン飛んでいる。ハエより小ぶりの虫だが、これが例のメジロアブか?インターネットでお勉強していた「飯豊朝日連峰の登山者情報」に「メジロアブが発生。しばらくの間林道歩きは避けたほうが良い。」とあったのが、このことだろうか。早速みんなが防虫スプレーやハッカ油をシューっと吹きかけている。う〜ん、のっけから厳しい状況ですな。
ただ、空はだんだん明るくなり、雨が落ちてきそうな雰囲気ではなくなった。これはやっぱり折り紙つきの晴れ女、K子さんのご威光に違いない!(私はその神通力から、密かに「天照大神」と呼んでいる。もっともここで書いてしまうと”密かに”ではなくなってしまいそうだが・・・。)
とにかく、昭文社の地図によれば、本日のコースタイムの合計は12時間弱、小屋へ着くまでに7時間となっている。それを考えるだけで何だか気が重くなってしまうが、歩くしかない。「最初から”ザンゲ坂”だって。何を懺悔して歩こうか。」などと軽口をたたいている人もいる。余裕だなあ!
急登を上がっていくとその「ざんげ坂」へ出たようだ。かなりの高さがある。建物の2〜3階の高さがあるように感じる。
斜面左側に新しいピカピカの太い鎖が1本、右側にはしっかりとステップが切ってあり、あわてなければ階段を上るように1歩1歩確実に登ることができる。むしろ降りる時が少し問題だろう。私達は1度も鎖に触らずにそのまま登ってしまった。
<ザンゲ坂下部>
日は射していないものの、蒸し暑い。何だか体が重くて汗が顔から吹き出てくる。体には大して汗をかいていないのに。とにかく急登を登りつづける。
40分、50分、60分、何度も時計に目をやる。
ようやく「休憩!」の声が伝わってきた。
歩き出して30分の体温調節(休憩)もなく、夜行明けの体でコース最大の急登区間を60分歩くのは辛い。
その後も蒸し暑さは変わらず。雨かと思ったのだから感謝しなければならないはずだが、やっぱり暑い。樹林帯で風も抜けない。さっきよりは傾斜が緩んで少しは楽になるが、急登には変わりない。みんな休憩では(私も。)座り込んでいる。
地蔵岳まではこんな急登が続く。先頭へ出て、少し楽して歩きたい、と思うのは皆同じようで、休憩後にはあっという間にどんどん前に入られてしまい、気が付くとやっぱり後方を歩くことになる。39名の列は長い。
最初の60分の傾斜を100とすると、次の60分は85、その次が75位の感じで、ようやく前方に地蔵岳が見えてくる。視界も開け、少し風が抜けるようになった。
ようやく着いた地蔵岳からは飯豊本山と大ー尾根が大きく聳え、その遥か左には遠くに切合小屋らしき屋根が見える。トンボがぶんぶん飛んでいる。
<飯豊本山とダイグラ尾根を臨む>
ようやくお花の数も種類も増えて、気持ちが和む。この頂上にはセンジュガンピの白い花が一杯咲いている。
地蔵岳からは今度はアップダウンの連続に変わる。歩き出しは下り。ここから目指す小屋がよく見える・・・が、山越え、谷越え、何とも遠く、一体いつになったら辿りつけるのか、とついつい悲観してしまう。(それに、切合小屋に着いてもまだまだ本山往復が待っている!)私にとってはまさに耐久レース、それもまだ序の口・・・。
<切合小屋は遥か彼方に霞む稜線の上・・・>
それでも必死に足を前に出しているとようやく分岐に出た。尾根道を小屋へ向かうため、左の道を行く。そのうちに、あれほど遠かった切合小屋も間近に見え出し、ようやく小屋前の水場(小さな滝のような流れ)へ出た。何人かがお昼を作っている。そう、もう正午前になっていた。ここは雪解け直後で、一面にハクサンコザクラが咲いている。
<ハクサンコザクラのお花畑>
ここから小屋まではネマガリタケで滑りやすい。急斜面のトラバースから種蒔山方面へ上がって、稜線に出て分岐を右へとると、ようやく待望の切合小屋が見えた。
<切合小屋>
朝5時から大休止もなく登りつづけて12時をゆうに過ぎている。しかし、ここからは荷物を軽くできる。本山往復まで、まだまだ大仕事だ。・・・ここでようやく荷物整理を兼ねて20分の休憩。シュラフや3合のお米を置いて、雨具と水筒と食べものと地図をナップサックに移して、これからが本番!
ここで足の不調でリタイア1名。
本山への道は燕岳を思わせるような光景だ。花崗岩の白い砂の道。
タカネマツムシソウやハクサンシャジン、ハクサンオミナエシにトリカブトも咲いている。紫の花と黄色の花が目立つ。
<タカネマツムシソウ> | <トリカブト> |
いくつも急(と感じてしまう)坂を登り下りするうちにまたリタイアする人が。最高齢のK子さんもお花を愛でつつ、このあたりから小屋へ引き返すことになった。
一番きれいでかわいいのはミヤマシャジン。(らしい。図鑑でお勉強。)ヒメシャジンの変種とか。とにかく色といい、サイズといい、形といい、カワイイの一言に尽きる。
<ミヤマシャジン>
本当にお花が綺麗で、かなり参っている体と気力には良い慰めになる。
そうこうするうちに「姥地蔵」が見えてきたようだ。
遠くからはっきり分かる真っ赤な被り物と前掛け姿である。よく見るとその先の岩場は「御秘所」?
<姥地蔵:画面中央と背後に御秘所> | <姥地蔵と背後に御秘所> |
いよいよ難所?の御秘所(おひしょ)へ。これは三段構えになっている。
だんだん危険度が増すようだ。
では御秘所の大公開!
<最初の岩場> これは楽勝? | <次の岩場> まあ、大丈夫かな。 | |
<最後は鎖あり> 両端はすっぱり切れ落ちている。 |
このころからガスが濃くなってきた。難所を越えるとまた砂礫の道・・・。
まだまだ本山は遠い。最後に大きな山を登ってようやく飯豊神社が姿を現す。やったね!・・・でもここはまだ頂上ではありません。
<本山小屋と飯豊神社を臨む>
神社の小さな建物の中へ入ってお守りを買う。
もうここでいい、という数人を残して本山へ。
・・・20分とガイドブックにあるが、疲れた身には遠い。あれかな、あれかな、と2度もはぐらかされてようやく山頂へ。3時になっていた。
各自写真を撮って、帰路を急ぐ。何だか雲行きが怪しい。・・・神社へ戻る前に雨が落ちてきた!合羽を着て歩き出すとザーっと激しくふってくる。(やっぱりK子さんが途中で帰ってしまったからかなあ!)
そこから皆の足の速いこと速いこと!雨も土砂降り、口もきかずにひたすらに歩く。幸い御秘所では上がっていたが、花崗岩ですべりにくいとはいえ、疲れているし、濡れた岩場、気をつけないと。
・・・ここで30数人の通過に時間がかかる。最後尾に近い私達はしばし座って休憩となる。
あとはまたまた山越え谷越え?下ばかり向いてひたすら急ぐ。小屋はまだか!と思いつつ、花に慰められて最後の頑張り。ガスで視界が利かないので、小屋が見えないのはいいことなのか悪いことなのか。
何となく見覚えのある景色、そろそろ小屋かも・・・という頃、聞きなれたK子さんの声が!皆を迎えに来てくれたのだ。「もう小屋だ!」と思うと急に嬉しくなってきた。小屋到着は5時を過ぎていた。
あとは小屋の2階の板敷き(+ビニールシート?)の上に寝袋を並べて雑魚寝の場所を確保するのに大騒ぎ。天井が低く、梁が出ているので、うっかりするとすぐに頭をぶつけてしまう。なかなか混んでいるようだ。
集金(米持参で5900円、無い人は+1000円。)とお米の回収を済ませると、会計係の私は窓口へ。25万円を越える大金を無事払って一安心。すると、今度は返金があるという。
実はリーダーが出発前にわざわざ松坂屋の夏山相談所へ出かけ、1人500円の割引券を人数分貰ってきてくれたという。これには頭が下がるとしかいいようがない。(おんぶに抱っこですみません!)
おいしいご飯とカレーを食べて満腹、満足。小屋番のおじさんはお国の言葉が何とも温かく、親切な面倒見のよさそうなおじさんで、何だかとってもうれしくなる。小屋にはホースで水も引いてあり、トイレも外だが3つある。
ただし虫がブンブン飛び回っていて、顔をくわれてしまった。飯豊は虫が多いようだ。・・・私は1本400円のファンタ・オレンジを飲んで、満足満足。みんなの顔にも満足、と書いてある。
さて、疲れているから熟睡か、と思いきや、猛烈な痛みで目が覚めた。・・・お尻の下が痛い!マットが欲しい!横を向けば今度は肩が痛い!・・・という訳でヤワな私は悶々と寝返りを繰り返すうちに朝が来てしまった。
何だか雨の音がする。合羽で歩くのはいやだなあ、と思う。別のツアー客が朝早く外で点呼をとっていた。これから本山へ行くのだろうな。私達はゆっくり朝食。温かいご飯と、生卵と焼き海苔と味噌汁。おなかに自信のない私は念のため、生卵はパス。
さて、おじさんに別れを告げて、いよいよ往路下山。合羽を着たものの、雨は大したことはない。滑りやすいネマガリタケのトラバースも気のせいか短く感じる。そのうちに明るくなり、日もうっすらと射すようになるころ、振り返ると飯豊本山が悠然と姿を現し、私達を見送ってくれた。
ここからも長かったが、一度通った道のせいか、気が楽である。来る時は余裕がなかったが、今度はお花を確認しながらの下山となる。ママコナがたくさん途切れなく咲いている。よく似た花も咲いているが、これはどうやらミヤマクルマバナといって、東北の山に特有の花だそうだ。(家で確認。)
あとはハクサンシャジンかツリガネニンジンか、丈も大きく花もたくさんついていて立派な立ち姿だ。・・・しかし、私だけでなくみんな、特に女性陣は疲れが激しいらしく、休憩の間隔も短く、回数がぐっと増える。地蔵岳への距離もとても長く感じた。
ここからはほぼ下りだけ。そして最後にあのザンゲ坂。今度は下りだし、雨が降ったりやんだりの中、疲れもピーク、要注意である。やっぱりいつの間にか最後尾に近い私は順番待ち。Sさんが坂の上からみんなに指示を出し、Iリーダーは下から指示を出している。結局全員がこの坂を折りきるのに30分かかったようだ。
ザンゲ坂を過ぎれば登山口ももうすぐ。最後に怪我をしないよう注意して歩く。ぱっと視界が開けると、大日杉の小屋前へ出た。12:30になっていた。人数が多いのと、疲労からか、6時間30分もかかってしまった。降りるだけでも大仕事、とにかくも全員無事に山行を終えた。Iリーダー、お疲れ様でした!
いつかまた時間をかけて行ってみたい山でした。