Coffee Break 2008更新
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まず、クラシックでは、作曲家の意図・指示を尊重することが大原則です。それは、時代によっても内容が異なりますし、個々人によっても異なります。
例えば、バッハの時代には現在のようなピアノという楽器はありませんから、もし忠実にバッハの指示通りの奏法をめざすとなると、究極的にはチェンバロなど古楽器でしか演奏できないことになります。
また、現在のピアノという楽器で演奏する以上、その機能を生かして弾けば、ある意味で『拡大解釈』は必然になります。
強弱やフレージングも含め、バッハの楽譜に書き込まれた指示は少ないので、校訂者の指示が書き込まれ、多数の「解釈」が生まれることになります。
それに比べると、古典派以降のモーツアルトやベートーベンなどは曲想やテンポを含め、楽譜の指示も細かいですし、よく弾かれる曲となればある程度、「この曲はこう弾く」という基準ができてきます。
そうなれば、少なくとも表面的な点では、先生次第で大きく指示が異なるということも少なくなります。
ショパンなどは、一時代前のピアニストは、(私の印象では)かなり『装飾過多』でテンポの揺れも大きく、その反動か、現代のピアニストで楽譜に忠実な演奏をめざすタイプの演奏を聞くと、『素っ気無い』と感じるかもしれません。
CDなどで演奏を聴く場合には、楽譜の指示を離れ、原典の指示さえ「無視」したような演奏も存在しますが、楽譜を読む前にそのような演奏を聞くと、レッスンで違和感を感じるかもしれません。
ただ、いくら細かく作曲者が指示をしても、誰が弾いても同じになることはありえません。指示を無視せずとも、様々な工夫の余地があり、それを自分なりの解釈として、聴衆に問うことができます。(コンクールなどで同じ課題曲を聴き比べるとその点が良く分かります。)
ですから、どんなに楽譜に「忠実に」弾いても没個性になることはなく、また楽譜を読めば読むほど、宝探しのように様々な発見があります。それは作曲者との交流とも言えるでしょう。
だからこそ、何度弾いても「飽きない」し、100%満足することもありえないのです。
という訳で、ある程度以上の楽曲では、解釈・指示が先生によって大きく異なることは、実際には殆どないと思います。
まず、音大を目指すような立場の生徒さんと、(本格志向としても)趣味で習っている生徒さんでは考え方も、また受けているレッスンの中身も異なってくるのは事実です。そこに、一番のポイントがあるかもしれませんね。
「様々な先生のレッスンを受ければ、そのアドバイスにより、充実した演奏ができるのではないか」という考え方は理解できますが、特に趣味の場合には、両刃の剣になるかもしれません。
まず、プロ(を目指す立場)に求められるのは、「自分はその曲をどう解釈し、どう演奏したいか」です。音大受験生だとなかなかそこまでは時間的余裕がないかもしれませんが、でも言われた通りの(型に嵌った)演奏を先生から指示される、というのは間違いでしょう。(そういうレッスンがないとは言いませんが。)
その一つ前の段階としては、少なくとも楽譜を熟読し、それなりの完成度に達したところで、レッスンでは解釈に関する指摘や、演奏上のアドバイスを受けることになります。
また、先生には2つのタイプがあります。ご自分の解釈通りの演奏を求めるタイプと、生徒の個性を尊重するタイプです。
もし、前者のタイプの先生である場合には、先生の力量の点では問題がなくても、指導方針が合わないために、先生を変わりたいと感じることはあります。
あるいは、プロコフィエフの楽曲なので、モスクワ音楽院出身の(ロシア人の)先生にレッスンを受けたい、とか、ラベルの曲なので、ラベルの直弟子の先生にレッスンを受けたい、という場合もあり、先生の了解の下、一時的に別の先生のレッスンに行くこともあります。
次に、趣味の生徒さんのレッスンでは、要求水準が異なります。
テクニック的にも限界がありますし、練習量の面でも様々な制約がありますから、率直に言って、常に、どこまで伝え、どこまで求めるかを図りながらレッスンしているものです。
このために、たとえば最終的に求める内容が同じであっても、どの点から指導するか、どこまでの完成度を求めるかは、先生ごとに異なります。
ですから、その曲で数回のレッスン終了時になれば、実は言われた内容はトータルで同じであっても、1回・2回のレッスンでは、先生ごとに全く違う内容になったりするものです。
また、強弱やテンポに関しては、相対的なものですから、自分では毎回同じように弾いているつもりでも、A先生のときはやや遅く弾いたので、「もっと速く」と言われ、B先生のときは速かったので「少しゆっくり」と指示されることになります。これは単純化した例えですが、これではレッスンを受ける側も混乱してしまいますね。
少なくとも、私が生徒から「他の先生のレッスンも受けてみたい」と言われたら、先生として失格だと感じます。
また、私より優れた先生は本当に沢山いますし、私も自分の能力は分かっているつもりですから、もっと良い先生がみつかったのなら、喜んで送り出します。
しかし、レッスンはキャッチボールです。
「全力投球」に対しては、教える側も「厳しく」なりえるし、求めることも多くなりますが、あまり練習できていないな、と感じるときは、大人の生徒さんなら「忙しかったのだろうな」と思い、ついつい「自主規制」して余り厳しく指摘しないかもしれません。
(ただし、その場合には、「こんな風に仕上がるといいですね」とか「最終的にはこういう感じになります」と伝えるようにしています。
その上で、もう少し時間をかけてそれに近づけるようにするか、そろそろ飽きたので別の曲にするかを相談しています。)
このような事情から、先生は言いたいことの半分も伝えていないかもしれません。
それを避けるためにも、趣味の場合には特に、どういうレベルまで指導して欲しいか、時間はどれくらいかけられるか、などを十分伝えておく必要があります。
さらにその上で、もし疑問・不安・不満があるのなら、それは伝えるべきですし、それでも解消しなければ、先生を変えるという選択肢がありえます。
また、「私はこうかな〜って感じたのですが、どうでしょうか?」と言うのは構いません。たとえ趣味であっても、レッスンでは常に受身でいる必要はありません。
ピアノを弾くのに全く支障がないのと多忙に任せて放置していたのですが、やはり「関節リューマチ」の虞もあって、受診しました。
先月、内科で受けた血液検査では異常なし。でも症状にも変化無しなので先日整形外科にも行ってきました。
レントゲンを撮った結果、関節には異常なし、リウマチの気もなしでした。
「よくあることです。画像には表れていませんが、まあ、老化現象の一種ですね。」・・・40代ともなれば、仕方ないことのようです。(そういえば、妹も指が痛くなって関節リウマチだと思って医者に行ったそうです。彼女も問題なしで、いつの間に痛みは消えたそうですが。)
少し心当たりがあるとすれば、PCの使いすぎだろうと思います。マウスもキーボードも、仕事柄一時的に数時間使い続けることもあり、その後の肩凝りは病的です。
関節リウマチで検索すると実に多くのサイトがヒットします。特に女性によく発病します。
医師曰く、「寝起きに関節が強張ったり、軽い痛みが出ることは、リウマチでなくとも結構あることです。」・・・ひとまず、痛みをとる軟膏と飲み薬を貰いました。
ピアノを弾き続けるだけではこういう痛みは出ないだろうと思いますが、今の世の中、多少なりともパソコンは使いますから、その点注意は必要ですね。
また、異常を感じたら、まずは整形外科の受診をお勧めします。早く見てもらって、早く安心しましょう。万一の場合にも、早めの受診が回復の決め手ですから。
私にとっては例えばショパン・エチュードの作品10−4がそうです。細かいパッセージや素早い正確な動きが要求されます。
この曲を久しぶりに弾いてみました。大体数日でまあまあの水準まで戻ったのですが、楽譜を見て、また練習の過程で様々なことを思い出しました。
そして、楽譜の要求に従って実に細かく表情をつけ、弾き込んだことを改めて確認できました。
その過程や要求水準は、まさに現在の自分の力を測る試金石といえるでしょう。
この曲の仕上がりと比べると、今練習しているほかの曲がいかに手抜きかが分かり、愕然とします。目の粗い画像を見ているようにさえ思えてきます。逆に言えば、練習課題がはっきり見えてくるわけで、その意味でも比較する価値が大いにありました。
みなさんも、何となく意欲を失ってしまった時やマンネリ化してしまった時に、そういう曲をもう一度練習してみるといいのではないでしょうか。
ある意味で、「初心忘るべからず」とも言えます。
「以前ここまで弾けたのだから、まだまだ今の曲も磨けるはず」と感じることでしょう。
練習を繰り返すうちに、ついつい雑になってしまう時、仕上がりに満足できない時、思い出して弾いてみると新鮮な気持ちに戻れるのではないでしょうか。
さて、ピアノ部門の入賞・入選者を見ていると懐かしいお名前から、現在バリバリに活躍中の方まで、錚々たるお名前が挙がっています。
とても興味深かったので、失礼を承知で私が知っているお名前に限って挙げてみます。
最初は第16回の井内澄子さん(=「NHKのピアノのおけいこ」の先生でした)、第22回以降の大月フジ子(=フジコ・ヘミング)さん、第27回の館野泉さんあたりから後は現在もご活躍の皆さんですね。
ピアノ部門の入賞者から:
第16回(1947年)入選 井内 澄子
第17回(1948年)1位特賞 松浦 豊明
第18回(1949年)2位特賞 田中 希代子
第22回(1953年)入賞 深沢亮子、入選 大月フジ子、江戸京子、小林仁
第23回(1954年)2位 大月フジ子、入選 江戸京子
第27回(1958年)3位 舘野 泉、入選 宮沢 明子、田崎 悦子、弘中 孝
第28回(1959年)1位特賞 中村 紘子、 2位 霧生 トシ子、 3位 田崎 悦子、 入選 宮沢 明子
第39回(1970年)3位 羽田 健太郎
第47回(1978年)3位 清水和音
第48回(1979年)入選 小山実稚恵
第49回(1980年)3位 小山実稚恵
第50回(1981年)入選 仲道 郁代
第51回(1982年)1位/増沢賞 仲道 郁代、2位 若林 顕
第52回(1983年)1位 田部 京子
ついでに他の部門も興味深いです。
第25回(1956年)バイオリン部門第1位特賞 黒沼ユリ子、菅楽器部門 1位 藤家 光嗣(虹二)(クラリネット )
入選の翌年に入賞というケースが多いことに気付きます。何度もトライしているのですね。あるいは、初回は様子見、次回が本気なのかもしれません。
同じく毎日新聞の主催で歴史の深い「全日本学生音楽コンクール」についても調べてみました。
入賞者一覧を見ると、第2回には館野泉さんが既に小学校部門で一位になっています。
この入賞者の殆どが後に「毎コン」でも入賞していることが分かります。田崎 悦子、岩崎 淑、中村紘子、花房晴美、野島稔、横山幸雄の各氏などが既に受賞しています。
まさに、「栴檀は双葉より芳し」ですね。
グランドにサイレント機能を付加するのが一般的かもしれませんが、私の場合にはどうしても考えられません。技術的に何ら問題はないと説明されても、どうしてもピアノに影響がでるように思えてならないからです。
それは妄想かもしれませんが、それはそれとして、キーボードを買うという選択になりました。
そこで、この頃ちょっと電気屋さんで弾き比べしてみて気付いたことを書いてみます。
実は、当初クラビノーバしか考えていませんでした。しかし、クラビノーバ(ヤマハ)とカシオとローランドの数機種を軽く弾いてみて、選択肢として残っているのはローランドでした。一番のポイントはタッチです。
クラビノーバには鍵盤の硬さ(レスポンス?)を3段階に変えるボタンもあるのですが、いずれもタッチが硬い感じでした。
実は妹が大学生の頃、ローランドのキーボードを使っており、ローランドはいいと聞いてはいたのですが、改めてそれを実感しました。しかも、クラビノーバより大分安く、10万円程度の機種でした。驚きました。
クラビノーバの売りは、グランドからサンプリングした音色でしょうか。勿論タッチもグランド並み、と研究しているようですが、どうもタッチに関してははっきり違いがあるように感じます。
ただ、私の場合はあくまで指慣らしのための目的であり、音質や音量、その他の付加機能は対象外ですから、実際に毎日の練習に使う場合には、少し違う選択になるかもしれませんね。
しかい、タッチはとても重要な要素です。その意味で私も認識を新たにしました。
実際に買うのはもう少し先になるかもしれませんが、いずれその使用感をレポートしようと思います。
楽語や音程、調の問題はともかくとして、彼の見せてくれた問題には例えば「この楽譜を♪=80で演奏すると全部で何分何秒かかるか」や四分音符+スタッカート+テヌート記号を示して「実際の奏法を書きなさい」(→「正解」は複付点八分音符=四分音符の3/4倍という計算)など、初めて目にするものがありました。
彼のために類題を探していて、沖縄県立芸大の入試問題から同種の問題を見つけました。(興味のある方はこちらからどうぞ。)
レコーディングするなら演奏時間の計算は必要かもしれません。しかし、例えば彼のように初めてピアノを学び、楽典も4月から初めて学んでいるのに、重増5度、減三和音、コードネームから近親調など、何だか音楽嫌いを作っているような問題ばかりでちょっと気の毒に思いました。
これらを学ぶのは、自分が演奏する曲の成り立ちを理解するためでしょう。ですから、せめて本を読んで暗記するだけでなく、実際に音を鳴らして「増三和音」や「減三和音」、旋律的短音階などの響きを実感してもらうようにしています。
音大受験の楽典で言うと、ピアノの初心者がトライしてみた時、一番難しいのは調の判定問題だろうと思います。
旋律のうち、跳躍進行している音は音階を構成する音などと本には書いてありますが、私たちは楽譜を見ればそのまま頭の中で音が鳴りますから、それで考えますし、大体すぐに分かってしまいます。
特に何かそのための練習をすることはまずありませんが、これらは自分が(受験までの)10数年の間、クラシック音楽を何千回・何万回と繰り返して弾いているうちに体得した感覚です。
ただし、楽語や音程などは誰でも同じようにひたすら「暗記」でした。
面白いことに、選定室の係りの女性たちはみなピアノが弾けるので、彼女たちに弾いて貰って少し離れたところから音色を確認するのもよいとのこと。なるほど。
さて、新しいピアノはハンマーに打鍵による弦の筋がついていないため、弱音ペダルを踏んだのと同じ音色です。つまり、相当に柔らかい音のままですが、これは弾き込めばフェルトが硬化してよく鳴るようになります。
それまでは、蓋を開けると全く響きが違うというので、一番短い棒にして開けてみました。(開けた蓋を支える棒は全部で3本あります。最も短いのは10センチ位です。)
確かにまだ柔らかいですが、よく伸びて艶やかな音になりました。低音部は更によく鳴ります。
その意味では、今までのC3でも蓋を開けて弾けば満足度はアップしたはずですが、やはり近所迷惑になりますから十分な配慮が必要ですね。(但し、C3とC5の低音部の響きは相当です。これには十分満足しています。やっとピアノらしい低音になりました。)
ピアノは大きい方が勿論良いのですが、置き場所次第です。ホールでもない限り、一般家庭ではC5が限度、C7は無理だそうです。うちのリビング・ダイニングが16畳ですが、C3でも蓋を開けると相当な音量です。C5ならなおさらです。ただ、蓋を閉めたままでは音を殺している訳で、ある意味で非常に勿体ないのも事実です。部屋や音響との兼ね合いを考えなければなりません。
ピアノを十分に生かして弾く環境を確保するのはなかなか難しいですね!
今日はその作業をつぶさに見ていたのでご説明しましょう。
ピアノはそれを乗せる専門の木枠を運び込み、傷がつかないよう布団を使っています。
まず、ピアノの長辺に沿ってその木枠を床に置きます。次に、ペダル部分を外します。
それからロープでピアノの蓋を本体に固定した上で、3本ある脚のうち、鍵盤側で低音部(前側の左)の脚を外します。
この時、外した脚の側を一気に傾けて床面(板の上)に倒します。(これには驚きました。脚が折れて大きく傾いた格好です。)
支点が出来たので、後ろ脚側も床面に倒して全体が90度直立しました。それから床から浮いた残る2脚のネジを緩めて外します。
最後に丁寧に梱包して、下敷きの板にしっかり固定し、運び出せる形状になります。それがこの写真です。
これにロープを通し、前後2人が肩にかけて運び出します。搬入はその逆の作業になります。これら両方の作業でおよそ1時間でした。1日に数軒回るそうで、重労働だと思いますが、手馴れたものでした。
さて、浜松駅からは遠州鉄道だと100円です。(ここでケチってタクシーにしなかったのは、交通費が自腹だったから。)
同行の担当者S氏は東京生まれの東京育ちだったそうで、電車が100円であることが新鮮だったようです。でも、これから行かれる方にはタクシーをお勧めします。(理由は後述。)
駅からは広い工場内を少し歩いて、まずは来客会館に向かいます。入ってすぐのスペースには当然ながらヤマハの楽器のショールームになっており、S氏はアップライトでは最も高額という機種(200万円以上でした)に関心があるようでした。
他に応接室がいくつかあり、ここで工場の選定室長と顔合わせ、それから別棟の選定室へ向かいます。
最も感心したのは、女性職員の礼儀正しい振る舞いと言葉遣いでした。考えてみれば100万円以上の買い物ですからそれに見合った応対ではあるのですが、今時これだけきちんとしている(比較的若い)女性職員は珍しいように感じました。(一流企業の受付はそうなのかもしれませんが、私には接点がありませんので。)
それから選定が終わると、選んだピアノの製造番号を綺麗なカードに控えて手渡されます。ピアノには選定したことを示すカードを紐でつけます。
そのあとはロビーでおしぼりが出て、(選定後のサービスかと思いましたが、ひょっとするとそのあとで「リヒテルのピアノ」を弾かせるから?)
お茶も出され、「只今ご昼食をご用意しております。」となります。
更に「お荷物になりますが」と手土産を渡されます。妙に重いのでちょっと期待したのですが、家で開けるとスパゲッティ2種が計4包み入っていました。地元の産物ということでした。
さて、用意ができたところでまた別のスタッフが迎えに来て、来客会館に戻り、応接室でゆっくり昼食です。ゆっくり食べ終わってから「お車をご用意しましょうか」と聞かれましたので、内心「S氏が払うのか私が払うのか折半か?」などとセコイことを考えましたが、成り行きで「ではお願いします」と伝えました。
「お車が参りました」、で職員から最敬礼を受けて乗り込みます。浜松駅はすぐでした。(初乗り。)
で、支払いはと言うと・・・もうお分かりでしょう。「お車代」はヤマハ持ちでした。
どうも慣れない「VIP待遇」もこれで終わり、ほっとして新幹線に乗り込みました。
実は本社工場は今度掛川へ移転するそうです。ですから今度選定する時は掛川でしょうか。それとも、このピアノが私にとって最後のピアノでしょうか。神のみぞ知る、かもしれませんね。
さて、グランドの選定(実際に同機種を弾き比べて決めること)は、来客会館ではなく道路を隔てた別の建物の中の選定室で行います。広い部屋が5つくらい並んでいます。
1日に3組程度が選定に訪れるとか。天井も高く、ピアノを横に5台くらい並べられそうな広さです。
室内はカーペットで、実際に一般家庭に置くことを考えての内装のようです。(フローリング等では響きが全く変りますから。)
今回初めてC5にしましたが、C3なら4台並べてくれます。他の部屋でも選定をしていました。覗き窓があって、ちらっと中が見えます。
前回と前々回は立会人が数人いました(楽器店の担当者、私が依頼している調律師、ヤマハの担当者、ヤマハの技術者)が、今回はご自由にどうぞ、とヤマハ側からは誰も立ち会いませんでした。(東京から同行の楽器店の担当者は同室。)
3台のうち1台は音のバランスや鳴り方から全くNGで、残り2台での弾き比べとなりました。最終的には中音部から高音部への音のつながりのバランスの良さが決めてとなりました。まだフェルトが柔らかいので、やや音は籠もり気味ですが、弱音から強音まで綺麗に鳴るので満足のいく選定が出来ました。
30分位だったでしょうか、終わったことを係りに告げ、製造番号を控えて選定終了です。随分早かったですね、と言われましたが、これだけ違いがあるのですから、これ以上弾いても同じでした。音の違いは『素人』を自認する楽器店の担当者も「随分違うものですね。」と言うほどです。
ほっとして選定室を出ると、来た時に別室で選定していた人がまだ弾いていました。立会人も数名いるようでした。この方は私たちが昼食を食べ終わってロビーで待っているときにやっと戻ってきたので、1時間以上弾いていたのではないでしょうか。(時間の制限はありません。)
私の場合は、選定は3回目ですし、C5ということで『先生、どうぞご自由にお選び下さい』という感じでした。
選定室のある建物の中には、リヒテルが最晩年に弾いたというCFが展示してあり、「皆様にお弾きいただいております」と勧められて誰もが弾いてみるようです。私もちょっとだけ弾きましたが、以前来た時はやはりリヒテルが弾いたという製造番号がNo.1という刻印のあるCFでした。リヒテルは好きなピアニストですが、特別な感慨はありませんでした。
さて、選定後すぐにピアノが家に届くわけではありません。いったん楽器店の倉庫に入って、それから配送です。と言っても1週間程度ですが。
家に届いてからどんな音で鳴るか、楽しみです。