あなたのリサイタル 2017/01/30 更新(*リンクなど少し削除しました)
・はじめに
第1回 プログラムを考えよう
第2回 曲を深く知ろう
第3回 会場を選ぼう
第4回 会場選びのヒント
第5回 会場費の実際(新宿文化センターのリンクを更新 13/05/16)
第6回 その他の出費
第7回 当日の注意点
第8回 練習内容について
第9回 ロングドレスをネットで買う(リンクを13/05/16更新)
第10回 録音等の依頼についてPart2
第11回 調律について
第12回 暗譜は絶対に必要か
第13回 リサイタル開催を迷う時
★ピアノ曲読本・・・音楽之友社、1529円
作曲家70人、400作品徹底網羅だそうです。視聴ディスクや、奏者の比較もあり、読み物としても楽しめます。
★器楽曲 (上)、器楽曲 (中)
、
器楽曲 (下)
・・・音楽之友社、840円。
新書版で、ABC順に3冊の分冊となっています。とっつき易い感じでしょうか。
東京や他の大都市に住んでいる方は恵まれていますよね。選択肢が沢山あります。
しかし、地方都市の場合は事情は変ってきます。選択の余地がない場合もあるでしょう。その場合は、適宜ご自分の事情に合わせて読み替えていただければ幸いです。
お金に糸目をつけない方ならば、どこを借りてもいいでしょう。東京なら沢山の音楽専用ホールがありますから。ただ、一流のピアニストが演奏会に使っているようなホールのほとんどは、誰でも借りられる訳ではなく、審査がある場合もあります。経歴をみて、貸してくれないところもあるでしょう。
ただ、規模がそれほど大きくないホールの場合は大丈夫なところもあります。今はネットでもいろいろ検索できますし、「ぴあ」のホールマップ(文庫版ではなく大きい方)も利用できますね。
どこを選ぶかは一長一短があります。全ての条件に合うところは少ないでしょう。そこで、何を優先するかということになるわけです。
*ケース1*
公共のホールを利用する。
利点・・・利用料が安い・市民であれば大体誰でも借りられる
欠点・・・必ずしも希望の日時を押さえられるとは限らない(複数の希望者がいると抽選になる。)・ピアノの状態が悪い場合がある・スタッフの質にばらつきがある場合がある・立地が良くないこともある
*ケース2*
音楽専用ホールを利用する
利点・・・音響がいい・ピアノの状態が大体は良い・スタッフがプロ・ある程度希望の日時を押さえやすい(先着順など)・アクセスがいい場合が多い
欠点・・・利用料が高い
*ケース3*
ホール以外の場所(会議室・音楽練習室・録音スタジオなど)を利用する
利点・・・概ね利用料が安い・気軽に演奏会を開ける・少人数でも可能・予約が取りやすい
欠点・・・セミコン・フルコンが使えないことがある・ピアノの状態が不明・音響が悪い場合もありうる・会場や受付のセッティングを自分たちでする必要がある
これらのケースを予算面から見ると、勿論音楽専用ホールは非常に高いです。東京なら、200人程度のホールでホール代やピアノ利用料等の必要最小限の経費だけでも最低30万〜でしょうか。100万円というところもザラにあります。
その点、公共の施設なら格安です。最低10万円程度から可能なはずです。音楽練習室などなら数万円でもOKです。
(会場関係以外にも印刷・[必要な場合は]お手伝いの人の手配・衣装代・案内等の郵送料など、更に10〜20万円は必要です。)
私のお勧めは、やはり公共のホールです。HPを持っているところも多いですし、問い合わせれば詳細な資料を送ってくれますから、今すぐ開く予定ではなくても、是非調べてみてください。
ピアノの発表会などをよく行っているホールであれば、一応安心でしょう。
同様に、例え発表会の延長気分でいいと思っても、「全員が着席し、静かに聞いてもらえる場所」という条件だけは守った方がいいでしょう。
ざわついた場所では演奏者が集中できません。クラシックの場合は、1音1音に込めた気持ちと微妙な音色の違いを楽しんでもらう(=弾く側が一番力を注ぐ)ことが最大の目的の1つなのですから。
そのような場所で練習すると、当然ミスが多くなりますし、その時に失敗するとそれがトラウマにもなりかねません。
小ホールで平日の夜間にリサイタルを行うとして、どれくらいお金がかかるでしょうか。数年前の料金ですが、ご参考までに。
当日のホール代・・・午後・夜間の区分で77,500円
スタインウェイ(フルコン)32,000円(2区分なので16,000円の倍額。)
その他(照明、録音する場合の音響関係)・・・1〜2万円程度。
調律代金・・・2万円程度(普通はホール専属の調律師に直接払います。)
リハーサル関係・・・(平日の昼間に行うのが普通です。)
ホール使用料・・・8,700円(平日9:〜12:)
ピアノ・・・・・ 16,000円
以上の単純合計で17〜18万円になります。
ホールの代金に関してですが、調律に2時間程度かかりますし、その前後にもう1度自分でピアノに触ってみたいでしょうから、1区分では絶対に無理です。2区分以上を借りることになります。(または3区分=全日使用)
リハーサルのためにホールを借りますが、その場合は大半の場所が時間を午前中に限るなどとしています。そのかわり、使用料は大体が1区分の使用料の半額程度になっています。
ホールによっては当日に練習室を借りられるところがあります。利用するといいでしょう。(これらは何千円という単位です。)
また3時間程度利用できますので、かなりピアノのことがよく分かります。できれば先生に、ダメでもピアノに詳しい方に一緒に行ってもらって、客席で音響のことなどをチェックしてもらいましょう。
ピアノを複数から選ぶ場合、特に公共のホールではヤマハのフルコンとスタインウェイのフルコンまたはセミコン(+ベーゼンドルファーのフルコン;セミコン)を弾き比べるといいですね。
状態が一番良いもの、自分が一番弾きやすいものを選んでください。
また、録音を記録としてしっかり残したい場合は、録音業者に依頼します。出張料も含めて数万円になるでしょう。
写真については注意が必要です。勿論プロに頼むといいと思いますが、演奏中は避けた方が賢明です。
三脚を立てるのでお客様に迷惑ですし、フラッシュや音で、演奏に集中できません。
出来ればリハーサルのときに来てもらって撮るか、演奏中の画像はアンコールの時にするか、演奏会後にポーズだけ決めて撮ってもらうなどの方法がいいのではないでしょうか。
録音+写真をプロに依頼すると、10万円位かかると思います。必要な方は予算に盛り込む必要があります。
つまり、ホール関係で20万円程度、録音と写真を加えると30万円程度でしょうか。
これにあと印刷関係と衣装代(女性は特にかかりますよね。)、美容院代等が大きな出費になります。
チラシは座席数の2倍程度作成するといいと思います。沢山配った方がいいですし。チケットはやや厚手の紙がいいですが、モギリの際に余り厚いと大変なので、その点を考慮して選ぶといいでしょう。
カラーの用紙に同系色の色で印刷するとなかなか良い感じになると思いますが、お好みで。
チケットの枚数は、大体座席数の1.2〜1.5倍位でいいでしょう。
チラシとチケットは早く用意する必要がありますが、プログラムは当日までに出来ればいいわけですから、少しゆっくり考えてもいいでしょう。これもプリンターで作れますね。なお、プログラムの用紙は厚手の方がいいと思います。
チケットに関してですが、招待券を作る場合は、葉書で案内と兼ねて招待状として利用する場合と、チケットに『ご招待』のゴム印を押して使う場合があります。
いずれにせよ、ホールの予約が済んだら、演奏会の3ヶ月前くらいまでには案内を出したいものです。
招待状であっても封書に入れたほうが感じがいいですね。また、来聴してもらうのですから、ご挨拶の文も同封して送ります。ということで1通80円か90円×人数分が郵送費です。
会場で係りの人が付く場合もありますが、マネージャー代わりに最低1人は当日の担当者を決めて、細かいことを任せる必要がありますから、早めに決めて依頼しましょう。
衣装に関してはもう自分の自由です。一番大切なのは実は足元、靴です。一番気になるのは、ペダルを踏んだ時に変な音がしないかどうか、です。
キイキイ鳴ったり、コツコツ音がするものは絶対に避けます。
また、
男性の場合はそれほどでもないかもしれませんが、女性の場合は余りヒールが高い・細いものは要注意です。
すべて、必ず事前にペダルを踏んで確認しますし、勿論リハーサルの日に実際に使って確認して下さい。
色は、ドレス等に合わせるか、銀色が一般的でしょうか。ヒールが高いと踏み込む感じが普段と違って、それだけでも大変な違和感があるので、出来るだけいつも履いて練習するか、低めのヒールにすることをお勧めします。
なお、衣装の一番のポイントは自分らしさと、一般的にはある程度のフォーマルさですが、腕の動きが制約されないことをまず確認して選んでください。
ロングドレスの場合、長いスカートの中にパニエ(スカートの下に履いて、スカートを膨らませておくもの)を履くかどうかはお好みで。ただ、ロングドレスでも、パニエは7分丈位で大丈夫です。
ドレスは通販でも多種多様なものが入手できます。デパート等で買うと10万円近く(高いものはもっとずっとしますが・・・。)かかりますので、これもご予算次第です。
新しく購入する以外の方法としては、レンタルする、オークション等で買う、自作する、友達等に借りる、などがありますが、例えば、デパートのフォーマルウェアのバーゲンを上手に利用するととても安く買えることがありますから、普段から心がけておくといいですね。
また私は母に縫ってもらったりもしますが、デパートでフォーマルのブラウスを買って、スカートは手作りすることも出来ます。案外簡単?に作れますよ。
ポイントは、薄くて張りのある布地を選ぶことです。床からウエストまでのスカート丈の3倍程度の長さで出来ます。ギャザースカートを作る要領です。シフォンなど端の始末が大変な生地は、ユザワヤなどの布地専門店で有料で端の始末をしてくれるところもあります。
頑張って作ってみませんか?
また、盗難もとても多いので、受付と楽屋の管理をしっかりします。それぞれ責任者を決めて、常にその場にいてもらうように手配しましょう。
ホールに支払う残金を当日に払いますので、その点も含め、いつ誰にいくら支払うのか、注意してください。
*楽屋*
喉が渇いたり、ちょっとだけお腹がすいたりするので、普段飲食しているものを少し置いておきます。
楽屋には、家族や親しい友人などで、気心の知れた人を1人頼んでおき、楽屋の管理と用事を頼みます。
また、出番の前に、衣装などをチェックしてもらいます。
緊張していますから、くれぐれも気の置けない人を選びましょう。本番前に喧嘩などしては大変ですから。
余計なストレスを感じない環境が一番大切です。
*ステージの上で*
さあ、本番です。
まず第一に、出が大切です。絶対にうつむかないこと!どんなに緊張していても、どんなに不安でも、絶対に下を向いてはいけません。
しっかりと前を向いて、頭を上げて、できればちょっと微笑んで、ゆっくり姿勢よく歩いていってください。
*お辞儀*
一応、お辞儀の仕方も確認しましょうか?・・・まず、お辞儀をする場所まで来たら、そこで必ず一度まっすぐに背筋を伸ばして立ち止まり、視線をしっかり前に向けてから、ゆっくり腰からお辞儀をします。
視線が大事です。そのあと、またゆっくりと姿勢を戻したら、もう一度客席側にしっかり視線を向けてから、イスに向かいます。
更に念のため・・・イスにはどちら側から座りますか?
客席にお尻を向けてはいけません。客席と反対側からイスに座ってくださいね。
ちなみに、私は恩師の教えで、普段使っているのと同じ、背もたれのある普通のイスを使用します。
いかにも?のスツールのようなイスは、やめています。落ち着きませんしね。まあ、好き好きですが。
いつもと同じ、というのも大切な要素かもしれません。
ちなみに、譜面台は、指示しなければ調律師さんが抜いてくれますが、そのままにしておいても何ら構いません。
私の恩師は、ハンマーやダンパーの動きが目障りなので、入れたままになさっています。
それから、舞台にはハンカチは持っていっても構いません。譜面台を抜いた場合は、弦に触らないように、適当にピアノの中(金属の部分)にそっと置いておきます。
ある意味で練習にはキリがありません。勿論、どこかで線も引かなければなりません。
ここではあくまで私自身の場合について書いてみます。
たとえば、ショパンの遺作のノクターン第20番(「戦場のピアニスト」で有名になった曲)を弾くとしたら、私にとっては技術的には容易なのでアンコール曲というイメージです。
しかし、細かいトリルを繊細かつ華麗に鳴らそうと思ったらそれ相応の部分練習が必要です。勿論、右手だけでその部分だけを毎日毎日、何度も練習します。
この曲は音が非常に少ないので、上手下手が顕著に現れるため、1音たりとも疎かにできない、その意味ではとても怖い曲です。
同時に鳴る音は沢山あった方が、音量は大きい方が弾く方は『楽』なのです。ですから、技術的にいくら易しいからといっても、細かい所にこだわって練習には時間がかかります。
そういう曲だからこそ、自分が今鳴らしている音色に集中します。和音ならばバランスよく響いているかどうか、左手の跳躍進行の音はレガートになっているかどうか、耳を澄ませて常に細部に気を配ります。
響きが怪しいと思ったら、その場でゆっくり部分練習します。これは、単に指が回るかどうかとは全く別の問題ですから。
音色が全てです。自分が今動かしている指先に神経を集中させ、全ての指の動きが自分の意識のコントロール下にあることが重要です。
また無理な運指がないかどうかも、ゆっくりの練習で確認します。どんなに上達しても、ゆっくりと練習しないことは決してありえません。ましてや、通して数回弾くだけという練習も有り得ません。
さて、自分にとって難しい曲の場合には、テクニックの追求だけでも数ヶ月は軽く過ぎてしまいます。指定のテンポには必ずしもこだわる必要はないのですが、それなりの速度で一応弾けるようになった時点が、真のスタート地点です。
ここからまた細部を練り上げていきます。ですから、いくら時間があっても足りません。
例えば、プロコフィエフのソナタのレベルで言えば、どんなに練習しても私のような凡人ではどうしても華麗とは程遠い内容でしか弾けない箇所が出てきます。それは体格的な面での絶対的な不利もありますし、テクニック上の問題もあります。
でも、そんな箇所は、あるレベル以上の曲には必ずあるものです。では、その箇所が越えられないからと諦めるでしょうか。それは、ありません。
実は、本当に難しい箇所は一流のピアニストにとっても難しい箇所であり、たとえばCDではうまく録音で修正されていたりします。勿論、超一流の超絶技巧の持ち主はいます。でも、名の通ったピアニストといえども実際の演奏ではミスは当たり前です。
私の場合には、とにかくその箇所だけをもう一度ゆっくり練習します。ミスなく、音もそれなりで弾ける速さまで十分落としてから、何度も練習します。
すると、だんだんと自然に速度も上がってきます。それで何とか目標まで到達できればよし、駄目な場合には全体の速度を落として、やや遅いテンポで仕上げることになるでしょう。
勿論、別の方法もあります。速度を取って中身には少し目をつぶるという方法です。それをすると「ちょっと荒っぽい」演奏という印象になりますが、気付かない聴衆もあるでしょう。最終的には自分がどういう演奏をしたいかで決まると思います。
私が言いたいことは、練習は裏切らないということです。これは私の恩師の言葉でもあります。また、誰でも同じように、ゆっくり練習することでしか解決できないこともあるということです。近道もコツもなく、愚直なまでに練習するだけです。
このレベルまでくると、かかった時間に対して表面上の上達の度合いは非常に少なくなります。例えば、半年練習を続けても、今を80とすると83にしかならない、という感じです。この比喩で言うと1年では90ではなく85です。
あとは、自分が80で演奏会を開くか、あと1年練習を続けて85にするか、線を引くのは自分自身なのです。
グランド・ピアノという楽器で何種類の音色が出せるかがプロの演奏の全てです。この音へのこだわりがあるかないかが専門の道へ進めるかどうかの分岐点でもあります。
そして、これだけのこだわりをもって1音1音を大切に弾いているならば、演奏中に上がってしまうことも殆どなくなるでしょう。
理想的に弾けているときは、自分の音に集中しており、また全体の中でどの位置まで進んだかがはっきり見えています。楽譜もあたかも目の前にあるかのようにページをめくりながら弾いている感覚です。
そんな中で、ふと注意が逸れたり、もうすぐ無事に終われるな、と余計なことを考えると、・・・私もやってしまいます。
ですから、本当にすべきことは、上がらないように対策を考えるよりは、自分が弾く曲の1ページ1ページの隅から隅まで完全に頭に入ってしまうほど、毎日楽譜を開いてじっくり読み、意識的に練習することです。
ここから展開部、等も考えながら弾いていきます。そうなると、指だけでなく頭の方も忙しくて、ほかの事を考えている余裕がなくなるはずです。
ただ、そこまでの練習が続けられるのは、やっぱりその曲が好きだからですね。
ということで、大好きな曲を選び、いい曲だなあ!と実感しながら練習することが、演奏会の成功への第一歩なのです。
(*現在は本当に様々なドレスが低価格からネットで簡単に入手できるようになりましたので、リンクは削除しました。)
勿論、プロの舞台写真家に依頼することもできます。ご予算次第です。
録音については、ホールならば必ず録音設備がありますし、費用もとても安いので(一式で3〜5000円程度)、利用するといいでしょう。
吊りマイクと、録音装置(カセットテープ・MD・DAT等)を借りられます。スタッフにお願いできない場合もあるので、確認の上、お友達等にお願いしておきます。
ただし、音質についてはまずまずと言う感じなので、クリアな音で残したいのなら、プロに依頼する方がいいでしょう。
思ったより安く出来る場合も多いので、ネット上で比較検討の上、問い合わせてみてください。
(*これも現在はネットで容易に検索できますので、リンクは削除しました。)
殆どの場合は、録音と撮影などを同じ業者がやってくれます。別々に頼むとそれぞれ数万円ずつかかると思います。
でも、ホームビデオで撮影するのも音質は別として、手軽で意外と効果的かもしれませんね。
予算に合わせて柔軟に対応してください。
第11回 調律について
ちょうどある方からご相談を受けたので、調律について書きます。
普段の家のピアノでは調律は1年に1,2度だと思いますから、ホールのピアノを借りるよりもずっと高いお金(20,000円以上)を調律にかけるのはどうかと考えてしまうかもしれませんね。
でも、演奏会ですから、当日の調律は絶対に必要です。いくら綺麗なタッチで美しい音をだそうとしても、バイオリンなどと違ってピアノは演奏者自身がピッチ等を変えることは不可能です。
音が狂うというのは、本当に微妙な狂いを指します。普通、1つの音には弦が3本張ってあります。この1本が少し緩んだだけでも、耳を澄ませば音の狂いがはっきり分かるものです。更にオクターブで鳴らせばウワ〜ンとうねりが生じ、とても目立ちます。
このような音の狂いは実は1時間弾けばもう生じてしまいます。ですから、可能なら休憩時間に再度調律してもらいたいくらいです。(この際には時間は5〜10分程度で、目立つ狂いを微調節するだけです。「立会い料」を支払って依頼します。)
調律師は大体ホール専属の人がいます。あるいは、指定の数人から選ぶことになります。私の経験では、複数の調律師の中から選んでホール専属の方に頼んだら、何とちょっと腕が・・・で、細かい狂いが気になって仕方なかったことがあります。勿論、気になると言ったのですが、「これはこの楽器特有の揺れのようなもので、これでいいのです。」と言われてしまいました。
え〜!?と思ったのですが、そのまま本番に臨んだところ、先生がすぐ気付いて、調律はどうしたの?と言われました。
ですから、このホールでやる際には次回はM楽器の人に頼もうと思っています。
第12回 暗譜は絶対に必要か
普通、演奏会ではピアニストは暗譜で弾いています。しかし、これは絶対にそうすべきという決まりがあるわけではありません。超一流のピアニストでも、リサイタルで譜面を見て弾くことがあります。(私が見たのは2度です。1人は現代曲で余りに構造が複雑なため暗譜は無理だからだったと思います。もう1人はやや高齢だったことも関係するでしょう。)
つまり、譜面を見ても構わないわけです。
それでも私などは暗譜で弾きますが、それは、いちいちページを追って弾くのもかえって大変だし、注意が散漫になるからです。
理想的な仕上がりでは、目の前にバーチャルな楽譜が見えているので、実物が無くても困らないからでもあります。
ただ、繰り返しが多かったり、紛らわしい箇所があるなど、何か不安があるなら、プロの演奏家でないのですから、そのために楽譜を立てて見るのは構わないと思います。
目の前に楽譜があることで、安心できるのなら、その意味では遠慮しなくてもいいと思います。
大切なことは、自分が弾く曲を十分に練習してあり、聞き手に伝えたい気持ちがあり、出来るだけ良い演奏をすることです。
あがってしまう人の多くは暗譜に不安があると思います。それなら、見ても構いません。ただ、譜めくりの人が横にいることで、かえってあがってしまうことも考えられますから、実際に譜めくり(できれば、自分以上にピアノが弾ける人がいいですね。安心して頼めます。)の人を横に置いて弾いてみて、最終的に決めてみてください。
第13回 リサイタル開催を迷う時
本当にリサイタルを開けるのだろうかと迷うことがあると思います。いや、絶対に無理だと思う方も多いでしょう。考えてみれば、リスクや負担が大きすぎると感じるかもしれませんし。
それでも、開いてみようと思うかどうかは、もうその人の人生観次第かもしれません。
まず、もしあなたが音大でピアノを専攻したのなら、是非リサイタルを開いてください。
リサイタルを最も容易に実現させやすいのは、卒業してすぐの2,3年以内です。この時期を逃すと、いろいろな意味で難しく感じるでしょう。
卒試の曲を中心としてプログラムを組んでください。その1曲だけでも新人演奏会などステージの機会があると思いますが、それだけで終わらせずに、体力も気力もあるうちに、頑張ってリサイタルにトライしてください。
先生とも相談しなければなりませんが、しっかりとした意思があれば、先生も力を貸してくださるでしょう。先延ばしにすると、仕事に追われて自分の練習時間さえままならなくなります。
ちょっと大変でも、卒業してすぐが、頑張り時です!
もしあなたが趣味としてならっている大人の方ならば、そして、ちらっとでも頭の片隅で、自分のリサイタルのことを想像してみた方は、是非実現させましょう!必要なのは、『やってみようかな』というご自身の気持ち、それだけです。
何を弾くかを考える時、余り有名な曲、難しそうな曲ばかりにこだわることはナンセンスです。
自分が好きで、綺麗だな、楽しいな、と思う曲を中心にすればよいのです。その気持ちははっきりと演奏に現れますので、聞く側にもしっかり伝わります。
アマチュアなのですから、大曲志向が悪いとは言いませんが、どこかで線を引くことも大切です。まずは、『自分自身のために』行動を起こしてください。
ステージの上で間違えたらどうしようと思うのはプロでも同じです。CDは別として(ライブ録音だとよく分かりますが)、実際のステージ上では、世界の超一流のピアニストを除けば、プロも大小さまざまなミスを犯すものです。
ミスを犯すことが問題なのではなくて、それも含めて全体として丁寧で奏者の意思が伝わる演奏ならば、それは素敵な演奏といえるのです。
細かいことにこだわって、完璧を目指しすぎて、恥をかくかもしれないと尻込みするなら、演奏会は開けないかもしれません。でも、発想を転換してみてください。
何もしなければ失敗もせず、恥もかきません。でも、何も残りません。
たとえ失敗があろうとも、頑張って練習し、ゆかりの人に聞いて貰う機会が作れたら、どんなアクシデントが起ころうとも、それを補って余りあるものが、演奏会を開くことでしか得られないものが、得られるのではありませんか?
格好悪くったって、恥をかいたって、失敗したって、何もやらないよりはずっとまし、と私は考えました。
私だって、いつも沢山失敗し、大恥をかいて、舞台の上で立ち往生してしまうことだって、実際にはあります。本当に情けない思いをすることも、しばしばです。
でも、やっぱりまた開きたくなります。経済的にも赤字ですし、時間も手間も本当にかかりますが、舞台の上での失敗も成功も、100%自分の血となり肉となって、最後には満足と自信につながるのです。
それに、一生懸命なあなたの姿は、きっと周りに勇気と感動を与えるはずです。真剣に物事に取り組む人の姿は、何よりも美しいと思います。
そんなあなたには、きっと応援してくれる人が現れるはずです。
私もまた頑張りますから、あなたも勇気を出して、トライしてみませんか?
私も精一杯応援しますから。