鳥ノ胸(とんのむね)山   2009年9月19日

コース:道の駅どうし9:10〜グリーンロッジ〜9:35登山口〜9:50林道出合10:00〜10:55山頂11:40〜12:10雑木ノ頭〜13:00キャンプ場〜13:50道の駅どうし


秋の連休でも渋滞と無縁なところへと、大峠から雁ヶ腹摺山〜姥子山のピストンを計画。道路も良いと聞いて安心し、念のため前夜に確認すると、何と通行止め。
9月10日からで、全線開通は春までかかるようだ。(山梨県営林道情報
急遽、第2案の鳥ノ胸山に変更する。

道志の山はGWでも渋滞がなく、今回は道の駅に車を置けるので安心だ。都内を無事に抜け、カーブの連続を何とか切り抜け、9時前に道の駅「どうし」に到着。

鳥ノ胸山

5連休の初日、大規模な農産物フェアがある様子。朝から地元の野菜を並べている。なかなか良さそうなので、ここはまず新鮮な野菜・果物を朝一番にゲット。ずっしり重いお土産をトランクに積み込み、改めて出発する。
それが叶うのも、鳥ノ胸山は登りが2時間弱の手軽な山だからこそ。道の駅にも大きな案内図がある。

まずはかわいい吊橋を渡り、標識に従って進むと早速シデシャジン、ホトトギス、ツルニンジンがお出迎え。さらにいつ見ても不思議なツリバナに加え、野鳥も群れている。どうやらエナガ達のようだ。

エナガツルニンジン(ジイソブ)ツリバナ
    エナガ               ツルニンジン(ジイソブ)              ツリバナ

グリーンロッジを過ぎて進み、民家(別荘?)の間を抜けていくと、ようやく広場の先に登山口がある。ここには鳥ノ胸山から秋葉山方面への案内図がある。(秋葉山方面へは昭文社の地図では破線コース)

さあ、山登り、と暗い植林の中を進むが、花はない。暫く登ると林道に出る。ここで休憩。
この後50分となっているので「楽勝だね。」と余裕。Iさんのザックから何とプリンが3個も出てきてびっくり。有難く頂いて、さあまた出発。
今日はお久しぶりのIさんとSさん。おしゃべりも楽しい。お二人ともお孫さんが生まれたところで、その話題になるとお二人とも何とも優しい笑顔になる。およそ「おばあちゃん」というイメージとは程遠い、若いお二人である。

林道からすぐに標識に従って山道に入る。何故か埼玉県のカブ・スカウトやガール・スカウトがつけたかわいい標識が随所に見られる。下でキャンプして、ここに登ったのだろうか。日付もつい最近のものだ。

手軽な山なのに、まだ誰も登ってこない。静かな山中を歩いていくが、左は暗い植林、右は明るい自然林と好対照だ。人が入っていない様子なので、念のため熊除けの鈴を鳴らす。
手軽な山と思ったら、どんどん急傾斜になる。時折痩せ尾根もあるが、とにかく緩むことなく登り続けというのは厳しい。汗が噴出す。
おしゃべりで気を紛らわせながらも登っていると、いきなりブ〜ンと大きな羽音を立てて大きな蜂が現れ、行く手を阻む。3センチはあるこの大きさ、スズメバチだろうか。

巣を不用意につついたはずもない、と無視すると、何と目の前でホバリングして威嚇する。え?なぜ!?

1匹だけなのに、何故か執拗に追いかけ、私のまわりを周回し、分かっていても追い払いたくなる。
腕を伸ばすと斜面に届くような急登で必死なのに、その上大きな蜂に追われ、仕方ないので必死に登り続けるが、どこまでも敵意をむき出しにして追ってくる。何故だ!

そこで、はたと思い当たる。そうだ、プリンの甘い香りかもしれない。先ほど頂いたプリン、横着をして袋に包んでザックの外にぶら下げている。大慌てでゴミ袋を仕舞いこみ、ザックと自分に虫除けスプレーを噴霧して、ちょっと安心して歩き出す。もうついてこないだろう・・・。

しかし、気が付くとまた彼はブ〜ンと至近距離を飛び回る。もういい加減に勘弁して〜〜〜。

どこまでも続く急坂・・・

どこまでも続く転げ落ちそうな急斜面にスズメバチの威嚇というWパンチ。青息吐息、必死に登る。見上げれば無情にもまだまだ続く滑り台のような急登。軽い山と見くびった天罰か・・・。

大岩を回避して、今度は階段状の登りとなるがようやく坂の上に、ぽっかりと空が見える。「偽ピーク」がもうすぐのようだ。
一旦稜線に出るといきなり涼風の歓迎を受ける。ああ、気持ちいい!樹林帯の無風地帯から解放され、視界も開けて気持ちがよいが、足元は案外痩せ尾根で、もう1段の山頂への登りは気の抜けない危険箇所。トラロープが有難い。

ようやく登り切って、開けた山頂に立つと、見慣れた「山梨百名山」の標識と、真新しい道標、そして富士山。今日も貸切だ。
吹き付ける風は涼しく、体が冷えるほど。丸太に腰掛けて、ゆっくりお昼。影絵のような富士山を見ながらの優雅な時間の始まりだ。
・・・と思ったらまたもやあの羽音が!どこまで追いかけてくる気なのか。ただ、こちらがどっかり座って構わないからか、ようやくどこかへ戻っていった。やれやれ。

山頂にて

アクセスがよく、富士山が見えて、気軽(?)に登れる山だが、今日はまだ誰にも会わないのは、もっと遠出しているからだろうか。時期的にまだ「アルプス」に登れる時期でもあるし。

そんなことを考えながらも、静かで貸切の山頂で、ゆったりの昼食は個人山行ならでは。いつもながら食事時にはあれこれおかずやデザートを頂き、お心遣いに感謝。
後は降りるだけなので、時計を気にする必要がない。ゆったりコーヒーも楽しんで、ようやく腰を上げる。今日は周回コースなので、キャンプ場の方に降りる。

歩き出すとまたしても樹林帯の急降下。今度は段差が大きく、滑るのでストックの助けを借りて慎重に降りる。ここもトラロープが張ってあり、大いに助かる。
静かで嬉しいが、手入れの悪い植林帯は暗くてちょっと気味が悪い。南峰を過ぎてガンガン降りると、気持ちのよい稜線歩きになる。が、すぐにまた登り返し。体が重い。登った先が雑木ノ頭。三叉路で、しっかり標識がある。

雑木ノ頭

本当は浦安峠から大界木山、城ヶ尾峠と歩いてみたいが、一部ヤブが深い破線ルートなので、準備不足の今回は諦め、素直に道志の森キャンプ場へ向かう。
下りはずっと急坂。左は暗い植林帯、右は深い笹薮。一人だったら怖いね、と話しながら降りていくと、突然、すぐ右脇の笹薮の中でガサガサと大きな音。
不意をつかれて、思わずクマ?!と叫んで逃げようとする私。

立ち止まり、様子を伺うが、その後は音が止む。冷や汗がたらり・・・。

お二人は意外と冷静で、「鳥かもしれないわよ。」・・・鳥にしては大きすぎる音だと思うが、とにかく、ここに長居は無用、更に大きく鈴を鳴らしながら、転がるように降りていく。おおコワ!!

降りながらもお二人は、「臭いもしなかったしね。きっと鳥か何かよ。」・・・そう言われれば強烈な獣の臭いはしなかった。そうだ、熊じゃない・・・・よね?
しかし、あんな至近距離で突然現れたら完全にアウトだ。

そういえば、「山と渓谷」9月号に熊の特集があった。最近は人を見ても逃げず、襲ってくる熊までいるという。また、私たちの所属する山岳会でも大人数で歩いているのにすぐ近くで熊が現れたと聞いている。(『岩手の七時雨山の北峰頂上の50m手前で、登山道脇の笹薮がガサガサしたので、クマ鈴を連打しながら歩いていたところ、メンバーの最後尾の人の2m後ろの登山道に子グマが飛び出し、すぐ横のヤブから親グマが威嚇の唸り声をあげていた。その間10秒位で、その後子グマはヤブに戻った』とのこと。)

とにかく熊ではなかったことにして降りていくと、ようやく見通しの良い鞍部に出る。振り返って斜面を見渡すが、何も動かない。もう大丈夫・・・かな。

時間的にももうすぐ下山できるだろうという辺りで、広い尾根通しにまっすぐ進まないようにロープで遮られる。左右どちらへも進めそうだが、地図からみても左だろう、と進むとすぐにトラロープや標識があり、確認できる。

直進禁止

何よりもう下から人の声が聞こえてくる。キャンプ場は間近なのだろう。やっと本当に安心する。

キャンプ場が見えないうちから焼きトウモロコシのいい臭いが上がってきて、子供たちの声も賑やかだ。縦横に踏み跡の残る斜面を適当に降りると賑やかなキャンプ場。車もテントも所狭しと立ち並んでいる様は壮観。キャンプがこんなに人気があるとは。

さて、キャンプ場の中をどう進めばいいのか迷うが、まずは小さな池を右に見て、沢沿いに進めばよいと分かる。歩く道の両側にまだまだ続くテント村。人の声だけでも賑やかだ。
これでは余り都会と変らないようにも感じるが、水遊びをしている子供たちは楽しそうだ。確かに小さな子供連れにはよいかもしれない。

道志の森キャンプ場は大賑わい

あとは車道を歩くだけなので、ノンビリ花を探しながら降りていく。またしてもツルニンジン発見。ツリフネソウも沢山咲いている。フシグロセンノウも大きな花を咲かせ、大いに目立つ。
この間も、どんどん車が上がってくる。みんなキャンプなのだろう。

大分歩いたなあと思う頃、右に橋がある。これを渡るのかな、と地図を広げるとドンピシャリ。「ラビットオートキャンプ場」を過ぎて橋を渡れば道の駅に通じているようだ。
土手には白いツリガネニンジン。更に進むと背の高いコスモス。秋の風景だ。ボタンヅルやよく似たセンニンソウが咲いている。写真を撮っていると、斜面をカラフルな蛇が上がっていく。ヤマカガシの子供のようだ。撮る前に逃げられてた。

ボタンヅルセンニンソウノブドウ

よく似た花だが、左がボタンヅル、右がセンニンソウ。葉の形が違う。             カラフルなノブドウの実
(注意)センニンソウ、ボタンヅル共にがあり、汁に触れると水泡状の炎症を起こすのでご用心。

実った稲で黄色くなった田んぼを眺め、民家の庭先を覗きながら歩くと、ノブドウがカラフルだ。シュウメイギクも綺麗。頭だけ覗いている富士山にサヨナラを言い、道の駅に戻る。

鳥ノ胸山、陽だまりハイクに適当だろうが、あまりの急登ゆえ、凍結・雨の後は要注意。山中にお花が殆どなかったのも、ちょっと「減点」なれど、静かで富士山が見えれば文句なし!

今日も楽しい1日。お疲れ様でした。

◆追記◆
キャンプ場近くの山は、残飯を求めて熊が出没しやすいそうだ。この時期は冬眠前にドングリや木の実を旺盛に食べるため、歩き回るという。
そういえば、山の中にはどんぐりが沢山落ちていた。もしかすると本当に熊だったのかもしれない。今思うとぞっとする。

折しも乗鞍で熊の被害が発生してしまったが、山は元々熊の住処。「熊出没注意」ではなく本当は「人出没注意」だと読んだ。確かに。
お互いに不幸な遭遇を避けるためにも、熊鈴や対策は万全に。


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