坂戸山 2002年6月1日


 3ヶ月弱のブランクの後の初めての山行となったのは、新潟・六日町の坂戸山。標高は630m余り、周回コースタイムも2時間半ほどの里山である。足慣らしのつもりで申し込む。
 池袋を6:40頃出発したマイクロで関越道をひた走る。今日は補助席まで埋まる24名。最後列の真ん中に座る。都内は薄曇り、暑くなりそうだ。
 まず上里SAへ停まるとレストハウス内外に白や緑のそろいのシャツの外国人軍団に圧倒される。そうか、今日は新潟でアイルランド対カメルーンの試合だった。しかし、キックオフが午後4時なのにもう大型バス数台で出発とは、長い一日だろうな。ここで朝食を取っているようだ。ご苦労様!

 うつらうつらするうちにいつの間にかバスは塩沢PAへ。ここでも例のアイルランド軍団と遭遇。結構にこやか。何か声を掛けようかなあ〜と思いつつもやめておく。マイクロから手を振ると、彼らも振り返してくれた。

 一方、派手なゆったりした衣装の黒い人たちも。カメルーンだ。こちらはぐっと少人数で、数人ずつ自家用車に乗って来ている。国旗を広げてここで記念撮影をしている。Wカップを日本で開催中なんだなあ、とやっと実感。 頑張れアイルランド、頑張れカメルーン!

 六日町ICで下りると右手に山々が見えている。巻機山〜金城山と伸びた山稜の末端が本日の山、坂戸山。どんどん近づいてくる。後ろの金城山と比べるとちょっと見劣りしそうな、控えめな山。が、登山口に近づくにつれ、どんどん背伸びしているように見えるのは、毎度のことながら不思議だ。

 さて、駐車場は神社の境内らしい。何台か乗用車が停めてある。立派な看板と案内図があって、コースが分かる。大変由緒正しき城の跡らしく、山全体が史跡になっている。

 駐車場からまずは御居間(おんま)屋敷跡をめざす。木陰の湿気の感じられる道で、咲き終わったショウジョウバカマが長〜い茎を伸ばしている姿がそこここに。ろくろっ首もびっくり?!それにつやつやの大きな葉っぱはイワカガミ?何だかみんな特大サイズだ。上のほうには咲き残りがないかなあ、と大変期待させるような数である。

 歩き出してしばらくで平らな広場に出ると「御居間屋敷跡」。なぜか蕨があちこちにあって、早速みんなが摘んでいる。思ったより涼しくて、快調だ。この分なら、ブランクも気にせずに登れるのでは、と楽観的になる。

 しばらく涼んで(蕨を摘んで)進もうとすると道が荒れている。実はここからは広場の右手前から90度右に道が折れている。戻るような感じだ。見ればこことすぐに分かる道だが、つい真っ直ぐに進もうとすると迷うかもしれない。
 さて、すぐに薬師尾根に合流するとここにも案内板がある。

急に日向に出て、遮るものがない。暑い。しかも見れば急な階段がどんどん続いている。念のために先頭から2番目を歩かせてもらうものの、何だか辛くなってくる。暑い。風がない。さっきまではあんなに快調だったのに…。

 深呼吸をして振り返ると六日町の町並みが綺麗に見えている。魚野川も弧を描いている。

いい景色!と言いながら立ち休み。みんなを見送って最後尾を歩くことにする。しかし、階段ばかり。なんでこんなに急なの??

 薬師尾根に入ると、マラソンランナーのような姿で汗を流しながら若者が何人も駆け上がっていく。地元のスキー部の高校生らしい。元気だなあ!
 …そろそろ私もおかしくなってきた。足が上がらない訳でもなく、耐えられないほど息が苦しい訳でもないのに、体が思うように動かない。みんなから、はっきり遅れだす。最後尾でGさんと、久しぶりのWさんという屈強男性陣に囲まれてマイペースで登ることとなる。「いいよ、今日は余るほど時間があるんだから、ゆっくり行こう。」

 ところが、8合目に近づき、もう山頂が大きく見えるようになっても勾配は緩まず、気温は上がり、体が動かない。ストックをついて立ち止まり、深呼吸をしてみるが、なかなか動けない。おかしいなあ、と思うが、今日はもうダメかもしれない、とふと思う。休憩後に先頭に戻してもらったものの、すぐに立ち止まってしまい、遅れ方が激しいので、また最後に。みんなのペースについていくのを諦める。

 水を飲んだり、ブドウ糖をもらったりしてみるものの、全然体が動かない。Gさんのトランシーバーにリーダーからの連絡が入る。
「Gさん、Gさん、聞こえますか?○○さん(←私のこと。)の様子はどうですか?」
「はい、聞こえます。かなり疲れているようですが大丈夫でしょう。」
「了解。ゆっくり来て下さい。」

しばらくすると更に歩けなくなり、とうとう階段に腰掛けて休むことにする。変だなあ…歩けば歩けそうな感じなのに、息もそんなに切れないのに、気分が悪くなってきたし。もう帰ろうかなあ。
 私が休んだり歩いたりしている間に、さっきの高校生軍団はまた駆け下りてくる。聞けば山頂までを3往復するのだそうだ。いやはや、ご苦労様。

 前から面倒見のいいSさんが戻ってきて、ザックをひょいと取られてしまう。Gさんが、「あ、気が付かなくてごめんね。もっと早く持ってあげればよかったね。」と言う。(いえ、本当は全然重くないし、それにもってもらっても余り変りませんでした。)
 座ってしばらくして歩き出すと、これが不思議にスイスイ歩ける。階段も10数段一気に上った!・・・と思うとまたおかしくなる。9合目の表示を目前にして、また動けなくなる。常連の女性のMさんも心配そうに少し前をゆっくり歩いて気遣ってくれる。「いいのよ、蕨取ってるから。ゆっくり行こう。」
 う〜ん、いくらなんでもこれはダメだ。「もう降ります。」と言ってみる。

「ここまで来たんだから。もう少し頑張れば登れるよ。」
「そうだよ、時間もあるし、今日はそういう山なんだから。」とみんな本当に優しい。申し訳ない気持ちで一杯になる。

するとちょうどまたリーダーから連絡が。
「Gさん、どこまで来ましたか。」
「はい、9合目あたりです。」
「○○さんはどうですか。」
ここで私は大きく胸の前で腕を交差して×を作る。
「え〜、ご本人はもう帰りたいなんて言っていますが、何とか大丈夫でしょう。」
「分かりました。ゆっくり来て下さい。」

もう目の前に頂上が迫っている。みんなは到着したのだろう。頑張るしかない。1歩1歩引きずるようにして歩く。なんでこんなに体が動かないのだろう。こんなの初めてだ。

 とうとう目の前に鎖と梯子が並んでいる岩場に来ると、上からリーダーの声が聞こえてくる。ああ、もうこの上は山頂なんだ、と分かる。…ふらふらになりながらも何とか頂上へ。
「はい、お疲れ様。」とリーダーのお出迎え。本当に恥ずかしい姿だ…。Gさん、Sさん、Wさん、Mさんにもう一方、サポート有難うございました。恐れ多くもVIP待遇でした…。

さて、昼食を食べる気になれず、熱いコーヒーと紅茶を飲んで、ビスケットを4枚とチーズ1個で溜息をつく。でも、これで体調ももう戻るだろう。いつもこうだから。
 頂上には神社があって、展望も素晴らしい。巻機山や八海山にはまだ残雪があり、霞んではいるもののよく見える。

みんなは体力と時間を持て余して、「大城・小城」を見に行くという。ザックはデポしていけばいいのだが、一応大事をとって、やめておく。結局私以外の全員が出かけた。
 目の前の小さなアップダウンを1列になってみんなが歩いていくのを社の裏手で座って見る。しばらくして戻ってくるようになると、風に乗って声がとてもよく聞こえる。半分位戻った地点で、気付くかなと思って、大きくてを振ってみる。あ、分かったみたい。振り返してくれた。
「…あ、分かった分かった…」「…蟻んこみたいねえ…」断片的に聞こえてくる。(後で聞けば"蟻んこ"は手を振る私のことだったそうで。)

さて、ザックを背負い直して下山。まずは桃之木平をめざす。ここは季節にはカタクリの大群落があるという。頂上の神社にその証拠写真があったとか。
確かに、途中からすでにカタクリの実がひょい、ひょい、と顔を出している。凄い数だ。途中でコケイランが並んで2本咲いていたのを除けば、花はみな時期が終わっていたようだ。シーズンには間違いなく花で溢れ返る山だろう!

 しばらくの間は木陰で、もう体も軽い。Gさんも「本当に別人だねえ!」と言う。そうなんです、いつもこうなんです・・・。
 また開けた斜面に出て、あとはどんどんつづら折に高度を下げていく。あいかわらずワラビはたくさん出ている。季節はずれの山菜取りにみんな必死だ。チョウもたくさん飛んでいる。見たこともないチョウばかり。本当に自然に恵まれた山なんだなあ。

 さて、とうとう山から下りてしまう。「城坂登り口」の標識と「かたくり群生地」の看板が立っている。大きな木の陰で最後の休憩。目の前にはスキーのゲレンデが広がっている。ここを降りればまた朝の駐車場だ。いつも降りてしまえば、あっけない。
 とにかくも久しぶりの登山は終わった。次を2週間後に変えて、少し体を慣らすことにする。しかし、大丈夫かなあと心配になる位、体は弱っていたようだ。

 後から思うに、血圧が低かったのだと思う。そういえばフィットネスクラブで測ると80なんてことがよくある。だから座った後で調子がよかったのだろう。気分が悪かったのもこのせいか。もっとどんどん座っては歩き、座っては歩きにすれば結果的にずっと速く歩けたのに。いろいろ反省の山行だった。


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