大江高山   2014年4月5日

山田登山口〜808m山頂〜山田登山口


春の花を求めて島根県の大江高山(おおえたかやま)808mへ。スミレの種類も多く、花の山だと言うので遠征を計画するも、天気予報はずっと雨。出発前から不安になる。
当初は初日にゆっくり行くつもりが、大荒れの天気となって延期。このため、仕事のため先に帰らなければならないSさんは、昼過ぎには一人で戻らなければならない。何とか戻る前に目的の花に会いたいが・・・。

タクシーを6:30に予約し、歩きやすい山田登山口に向かう。石見銀山を過ぎる頃には外気温3℃という表示。その上、降り始めた雨が何とすぐに雪に変わったではないか。
いやいや、まだ降り始めだから、積もる前に登れば花は見られる、と自分に言い聞かせる。
民家もまばらな道を曲がりくねったその時、初めて姿を現したのは、何と真っ白な雪山!思わず言葉を失った。

車を降りると外は吹雪に変わっている。まさか、とアイゼンはホテルに置いてきた。気の毒そうな顔の運転手さんに見送られ、寒さに震えながら、 フードを深くかぶり直し、吹雪に向かって歩き始める。
頭に浮かぶ様々な不安を一生懸命打ち消しながら、きっとお花は見られる、と気持ちを強く持つが、皆さんも一様に不安そう。

「ここより登山道」の標識を過ぎ、暗い植林帯に入る。まだ樹林のお陰で雪は積もっていない。林床に何か花は?と目を凝らしつつ、とりあえずここで体温調節を兼ね、この先どうするか、鳩首会談。
結論は、とにかく、「行けるところまで行ってみましょう」。(後から振り返ってSさん曰く、『あのときは本当に心が折れそうだったわ。』)

植林を抜けるとしんしんと雪が降り続く。幸い、まだ積もるほどでなく、すぐにシュンランを発見。少しだけ気をよくしてまた登り続ける。

雪は止まないがまだまだ行けそうだ。道がだんだんつづら折りになってくる。すると、スミレ発見。どうやらお目当ての1つ、ヒゴスミレのようだ。花はピンク系でとても綺麗だが、あいにくのお天気で3分咲き。
少し歩くとまたまたスミレ街道となって、アケボノスミレ、ナガバノタチツボスミレ(山陰型タチツボスミレ)、アカネスミレ。やっと歓声が上がる。

ヒゴスミレ(肥後菫)

これで随分元気が出てきた。次に歓迎してくれたのはイカリソウ。色が濃い。
それから標高が上がって初めて、スミレサイシン。花が大きく色も濃い。ああ、登山口で引き返さなくて良かった、
と思ったのは実はここまで。標高と共に雪が積もり始め、九十九折りの狭いトラバースで足元が見えず、いつ滑るかと恐ろしい。雪が初めてのKさんもいるので尚更慎重になる。 また皆さん無口になって、うつむいたままひたすら足を運ぶ。

6号目という標識が現れたので、最初のピークならもう一息、と励ますが、幅が狭く傾斜も急で、一時は、いつ「引き返します」と言おうか悩んだほど。
ようやくルートがまっすぐになり、それもなだらかになって稜線が見えてきた。
辺りはまさに墨絵の世界、とKさんが感動している。

ネットの下調べで見た枯木の「オブジェ」が目に入る。ここが休憩所で、最初のピーク(779m)のようだが、雪がどんどん積もるので休憩も延期にし、今後の相談。もちろん、一面の銀世界、花の影もない・・・。
更にこの先は、急降下、馬の背、登り返しが待っている。808m山頂はまだ1キロ以上先。結論は、「危険なく行けるところまで」。

意を決して歩き始める。少し先で、そろそろ時間切れのSさんが一人で引き返す。あの雪道を下るのは更に危険なので、くれぐれも慎重に、と 声をかけ、無事を祈る。

雪は10センチほどになり、空は明るくなったものの、トレースもなく、私達だけの世界。ある意味でとても貴重だが、初めての山で雪。足元に何があるか判らず本当に気が抜けない。

稜線が長い山なので、あと1キロの標識が恨めしい。新雪だけにふわふわで、足にすぐに雪ダンゴが出来て歩きにくいことこの上ない。ああ、花はいずこ・・・。

地形図ではそれほどでもないかと思った「馬の背」は、文字通りの痩せ尾根で、しかも岩場。その上にすべてを覆う積雪・・・。
一歩一歩を慎重に。滑落と言う文字が頭を過ぎる。随時後ろのKさんに指示を出しつつ、時間をかけ、何とか全員無事通過。雪が無ければちょっとスリリングな楽しいハイクだろうに。

ここまで来たら、後はひたすら山頂を目指す。足元が滑るので、みんな順番に「キャ!!」
でも何とか坂を登り切り、808mの標識がポツンと立っているのが見えた。ああ、山頂だ。お疲れ様!
三角点があり、あとは真っ白な広場。幸い丸太があるので、腰掛けてお昼。ああ寒い・・・。

暖かいものをお腹に入れ、休んでいると雲の切れ間に青空が覗き出す。目の前のガスが晴れると不思議な光景。大江高山火山群と言うそうだが、 小さなコブ山が沢山。その先には日本海。独特の風景だ。

さあ、登頂出来たし、天気も回復傾向だからと気を取り直し、下山開始。このまま飯谷口へ降りる方がずっと早いのだが、大変な急登らしいので、 この条件では危険と判断し、引き返すことにする。
引き返すと言うものの、危険度が更に増していることは言うまでもない。全員が怪我なく事故なく無事に降りられるよう、責任重大。ここからは 全員ストックを出し、雪道を下り始める・・・。

降り出して40分位で辺りの雪が融けてきたのに気付く。そう言えば、空も随分明るくなって、日差しまで出てきた。ラッキー!
何気なく目をやると、雪が解けたところには必ずと言っていいほど花が。ここに居るのよ!と自己主張しているよう。雪を溶かす力こそ生命力なのだろうな。

最後に見たいのはミスミソウ(ユキワリソウ)。雪のせいもあるが、何故か一つも見当たらない。あの特徴的な葉すらない。なぜだろう。
危険個所を過ぎればほぼ平坦になって、安心する。そこで周囲に目をやりつつ進むと、地味で小さく寂しげな蕾が。近づいて観察すると、何とこれがユキワリソウ。 新潟の花に比べ、その小さいこと!近くに他にも見つかるものの、数個で、せいぜい半開き。予想より地味な姿に肩透かしを食ったよう。 あるいは雪の下にまだ隠れているのだろうか。ピンクの雄シベを持つ可憐な姿は、次回のお楽しみなのかもしれない。

779mピークでは往路の積雪が嘘のよう。狐につままれた感じだ。春の雪は本当に淡雪だね、と驚くばかり。

稜線の雪が無かったらどんなによかったろうと思うが、雪の間に顔を出す可愛い花達には随分慰められた。
さて雪のせいで時間を大幅に取られたこともあり、タクシーの迎えの3時までに無事降りなければ。雪が融けたものの、今度はツルツルの下山路が待っている。
ストックやら傘やらを使って滑らぬように慎重に。でも日差しに花を開き始めたスミレたちに飽きずにレンズを向ける。

植林の下山口に近づいた頃、前方に男性の姿が見えた。779mピークまで来たのか、それとも山菜獲り?
新雪を踏みしめて歩いた今日の大江高山、きっと私達の「貸し切り」だったはず。今日は冬から春まで、1日ですべて体験でき、ある意味で贅沢な山行となった。 終わり良ければすべてよし。またいつか、花に会いに来よう。

ちなみに、今回から新しいミラーレス一眼を持参。しかしまだまだ操作に不慣れ。これからもっとこのカメラを生かして綺麗な写真を撮りたいなあ!(こうご期待?!)

画像はブログでどうぞ。


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