コース:
羽塩登山口6:30〜7:10平滑沢出合〜[休憩8分]〜8:10尾根道出合〜[休憩7分]〜9:02賽ノ河原〜9:04七ヶ岳(1635.8m)9:30〜10:28独標(1558m)10:35〜11:18下岳11:45〜12:25分岐〜12:50下岳登山口(林道出合)
今回の山は会津百名山、七ヶ岳(ななつがたけ)。 羽塩(はねしお)登山口から平滑沢(ひらなめさわ)を登り、七ヶ岳の名の由来である7つ(実際には11とも13とも。)の連なるピークを縦走する魅力のコースである。 久しぶりの夜行にちょっと緊張。仕度に手間取り、家を出るのが30分も遅れ、集合場所に着いたのは20分前。嬉しいことにMリーダーもサブとして参加とのこと。満員のマイクロは定時前に出発する。 |
道の駅「たじま」に2時前に着き、朝まで時間調整。 6時に出るというので、その前に自販機の暖かいお茶を買い、朝食を食べる。さすがに外は寒く、霧がかかっている。 バスが走り出すと周囲の紅葉の見事さに感嘆するばかり。冷え込みも厳しいためか、今季初めての素晴らしい紅葉が車窓に展開する。 幹線を離れ、林道に分け入ると、霧の深い幻想的な景色の中、七ヶ岳羽塩登山口に到着。11月というのに暖かい東京の寝ぼけた感覚から、晩秋に入ろうとする自然の時間に引き戻される。 歩き出しは見事な白樺の樹林帯。絵に描いたような美しさ。落ち葉を踏みしめ、広い道を歩く。 |
今日のHリーダーの山行に参加するのは久しぶり。半分ほどは初めて見る顔。妙義で一緒の方もちらほら。 例によって後ろを歩く。お馴染みのYさん、サブのMリーダーと共におしゃべりも弾む。ただし、熊の出没が各地で話題になる折りしも、鈴を鳴らしながら歩くことにする。 車が走れそうな道が狭まると沢音が聞こえ、今日の平滑沢歩きへの緊張が高まる。 どこから滑沢を歩くのかなと思うが、歩ける間は沢歩きを避けて道を探していく。 |
実はネットで検索すると、平滑沢は、相当滑って危険とあちこちに書いてあるではないか。しまった、と思うがそれに気付いたのが前々日。 大慌てで山道具屋に出かけたものの、沢シューズなどは季節はずれで在庫切れ。 恵比寿まで出かけて地獄に仏、沢歩きを楽しむ店員に教えられ、この『秘密兵器』を購入したのだった。 とうとう出番、と取り出したのは『軍手』ならぬ『軍足』。安売り店の綿100%の厚手の靴下(Lサイズ)だ。 | 平滑沢 |
どうやら登山靴では滑る所を、私は意識せずに歩いていたようだ。この靴下にこれだけの威力があろうとは・・・。 私の足元への視線が、「奇異」から「感心」に変わるのを感じつつ、一人だけ沢の中を歩いて行く。 軍足さん、ありがとう! だんだん沢幅が狭まって、尾根道出合に来たようだ。ここで右への踏み跡を辿り、迷う例が多いというのでどちらへ進むか確認すると、さすがにHリーダーは迷うことなく左へ入る。 |
沢を離れる | どんな感じかなと行ってみると、見た限りでは特に心配はなさそうだ。葉が生い茂るとテープが見にくいのかもしれない。 尾根へのルートを辿っていくと、どんどん急登になる。「どっこしょ!」の掛け声で、木の根や岩につかまって大股で必死に登る。 腕も使って何とか登っていくと、前から「わ〜!!」と歓声があがる。しばらくして辿り着けば、そこには大展望があった。カメラを出して、写しながらも一息つく。気温が高いせいか、ぼ〜っとしているものの、幾重にも山並みが重なってとても綺麗だ。 ルート上にはロープもあるが、木の根や岩に手がかりを求め、しっかり掴まって体を引き上げる。・・・この急登のまま稜線に出るのだろうか。 | 急登の尾根道を行く |
喉がカラカラになったころ、ようやく「休憩!」の声。先頭が休んでいる所まで登り詰めてザックを降ろす。日差しが眩しい。 前を歩く皆さんも、実はいつ休憩かと待ちわびていたそうだが、如何せん、23人が休める場所はここまで見当たらなかったのだ。 さあ、もう標高から見ても、もう少しのはず、とザックを背負い直し、ルートを見上げる。 急登はまだまだ続くが、振り返れば大展望もあり、風も心地よく、もう少し頑張れそうだ。 とうとう稜線にぶつかる。ここが賽ノ河原だ。 | 賽ノ河原 |
日光連山方面を臨む | 稜線に出てから山頂までは、地形図で見るよりずっと近い気がする。歩きやすい道に変ったからだろうか。 山頂では皆が既に地図を広げ、山座同定を始めている。 | 山頂 |
縦走路 | 1635mのピークだが、会津盆地なのか雲海に包まれており、3000mの頂上に立っている錯覚に陥るほど。 心行くまで展望を楽しみ、集合写真も撮って、いよいよ下岳(しもだけ)方面への縦走に入る。 なるほど目の前に駱駝の背のようなコブがいくつも並んでおり、ひときわ目立つのが1558mの独標らしい。 1つ、2つとピークを越え、まだまだ余裕で歩いて行く。見下ろせば、麓は美しい紅葉だ。 | 下界は紅葉真っ盛り |
独標への縦走路 | 鞍部から振りかえると、なかなか堂々とした山並みが続いている。時折笹を掻き分けて歩くが、概ね道はしっかりついている。 左手は樹林だが、右手の笹の向こうは断崖であることを忘れてはいけない。何でもない道だが、転び方が悪いと滑落の危険がある。 もしこの草木がなかったら、歩くのはかなり怖いのではないだろうか・・・。 そんなことを考えながら歩いていると、目の前に大きなピークが聳え、思いがけない急登にまた喘ぐことになる。キツイねえ、と声が漏れる。 | 実は崖の上を歩いている縦走路 |
登りついた山頂には三角点に似た石柱が埋め込んである。が、これは下岳ではなく独標のようだ。 それに、ようやく登り切ったと思っても、隠されていた視界の先にはまだまだピークが連なっている。 甘い期待は見事に裏切られ、まだ縦走路の半分しか進んでいないということだ。ちょっとがっかり。 |
山頂方面を振りかえる | 気を取り直して細かいアップダウンを繰り返す。だんだん道が険しくなり、足元に張り巡らされた木の根や、深い笹薮、濡れた落ち葉などに細心の注意が必要となる。 「足元注意!」、「枝が跳ねます!」「この石滑ります!」と声を掛け合う。 時に背丈ほどの笹を掻き分け、見えない足元に不安を感じながらも、ようやく三角点のある下岳(1509m)に到着。ほっとする。 | 独標から先の縦走路 |
やや狭い山頂ながら、ここで昼食。難所は全て歩き終えた満足感に笑顔が溢れる。 登山口から5時間弱。あと1時間で下山できるはずだ。 会津の山は本当に個性的で、1つ1つとても面白い。会津駒、三岩、窓明、田代・帝釈、志津倉など。私も随分楽しませてもらったが、この七ヶ岳もいずれにも負けない面白さがある。 さて大休止を終え、もう少し稜線歩きだ。バスに乗るまで怪我無く歩きたいものだ。 降り始めはかなりの急降下。枝に掴まりながら降りて行く。時折、落ち葉の下の木の根に滑らされ、ヒヤッとするが、もう岩場も崖もなく、フカフカの足元に安心する。 紅葉の残る樹林帯を充実感一杯で降りて行く。みんなのおしゃべりも復活する。 登り始めの美しい白樺林、気の抜けない平滑沢、息もつかせぬ急登と、その果ての大展望。そして楽をさせない七つ(以上)のピーク。 思わず、尻尾までアンコの詰まった鯛焼きのような山ですね、と言うと大うけ。「座布団一枚」!の声も。 |
道はとうとう平坦になって、また美しい白樺林に入る。 すぐ脇にもう舗装道路が見えているのは玉に瑕だが、落葉松の黄葉も美しく、こんな秋景色があったのかと声も出ない。 ロマンチックな気分に浸っているうちに、舗装道路のちょっとした広場に出て、これが下山口。あっという間に現実に引き戻される。 |
バスに乗り込み、塩原温泉で一浴の後、東京を目指す。 ICまでの渋滞を利用して、マイクを回して1人1人意見を述べる。山行への感想のほか、バス例会の功罪についてなど、話題は尽きず大変興味深かった。 高速道に入るとあとはほぼ順調で、周囲が暗くなる頃には疲れとアルコールの作用によってか、大半が睡魔に身を任せ、目覚めた頃には都心といういつものパターン。 珍しく私も『反省会』に同行して盛り上がる。楽しい一時のあと、先に失礼して山の手線に乗り込む。何となく変だなと気付いたのは次の駅でドアが閉まってから。 次の駅で降りて逆戻り。驚く皆さんに再度別れを告げ、忘れた手提げをしっかり手に持って、ようやく家路についた。 |
なお、沢で使った『軍足』は、近所のスーパーで購入。綿100%で男物の27センチ、5足組で600円也。 綿と麻などの混紡も可という。 沢を歩く店員さんの話では、履き替えや荷物の軽量化のためによく使うそうで、使い捨てだが数時間なら持つという。 私が使った感じでは、平滑沢の場合、藻や苔の生えたところを避ければ、登山靴の前半分でもかなり効果があったが、使用はあくまで自己責任で・・・。 |