鞍掛山   2010年5月29日

日向八丁尾根より鞍掛山2037m(北杜市)
*時間は大休止を含まない歩行時間[数字は分]、中高年20人、天気は曇、日帰り登山。

日向山・矢立石登山口→[40]錦滝→[50]鞍掛山分岐点@→[30]稜線出合A→[55]二重山稜地点B→[35]駒岩分岐点→[5]鞍部→[20]鞍掛山山頂→[15]鞍部→[25]駒岩分岐点→[17]二重稜線地点B→[50](往路と同じ)稜線出合A→ [30](雁ヶ原への)稜線出合→[25]日向山三角点→[65]矢立石登山口

歩行時間*往路約4時間、復路約4時間、合計8時間弱。
行動時間は8時間半。


ちょっと手強いコースを行く鞍掛山、機会を伺っていると運良く所属の山の会で行くことになり、渡りに舟と参加する。

日向山を登ってからでは時間切れ、日帰りはギリギリのルートゆえ、矢立石まで車で入り、尾白川林道を錦滝まで。1か月前には倒木が通せんぼしていた 林道は綺麗に片づけられ、タガソデソウの白い花を見ながらあっという間に滝(東屋)に到着。
先頭から歓喜の声が上がり、みれば滝はピンクの大きな花に彩られているではないか。ネットではここにクモイコザクラが咲くともある。逆に、殆ど盗掘され、手の届く範囲には 殆ど無いとも。

しかし、ここで目にするこのピンクの大輪に、思わずクモイコザクラだ!と歓喜する。

タガソデソウタガソデソウ錦滝錦滝の花この花は?

(しかし、後で確認すると、やはりこれはクモイコザクラではなく、ユキワリソウかと思われる。)

さて、ここから手を使う登る急なコース。3度目だが、毎回、気が抜けない。ちょっと荷物も体も重い。それでも掛け声をかけながら登っていくと、途中でiさんが体調不良で無念のリタイア。それに付き添ってベテランのIさんも降りることに。私はお二人の分もしっかり歩いて報告しなければ、と気を引き締める。

雁ヶ原の白い砂の斜面がもうすぐというあたりに、真新しい標識「←鞍掛山・大岩山」が現れ(分岐@)、左手の尾根にとりつく。

分岐「←鞍掛山・大岩山」の標識と分岐トラバース道

が、これがまたズリ落ちそうな急登で、閉口する。数分で道は平になり、そのうちに左手に折れてなぜか下り気味にずっとトラバースしていくことになる。ふかふかした道だが、実は以前からあったらしい。ごく最近整備したのだろう。

ちょうど右手頭上に大きな岩場が見えてきて、地形図の1622m地点を巻いているようだ。間もなく稜線出合が目に入り、左から沢が突き上げてきて、痩せた尾根に出る。(地点A)

ここからまた登り始め、時間から見てここでお昼となる。広い場所はないのでそれぞれ数人に分かれて場所を確保し、急いで食事を取る。何とかコーヒーも飲み終えてまた歩き出す。ササが茂っているが丈は短く、コースもはっきりしていて有難い。

僅かに左に折れて今度はその先の斜面に取りつき、これまた急傾斜をゆっくり登っていく。
振り返ると樹林の間に雁ヶ原の白い砂地が目に入る。

もう12時を過ぎているのだが、まだ先は長く、長丁場を実感する。

ミヤマスミレミヤマスミレ急斜面雁ヶ原見える雁ヶ原が見える

ようやくなだらかになると、ちょっと尾根が広がり、小さな二重山稜が見て取れる。私達は今その南側のコースを歩いているようだ。北側にもルートがあるようで、振り返るとここにも新しい標識「←鞍掛山・大岩山」がある。(地点B)

今日は曇ったままで、雨が降らなければよしという感じ。展望が殆どないのは残念だ。二重稜線を過ぎてしばらく静かな針葉樹林の中を歩いて行くと、コースが左に寄ってきて、白くザレた崖と、その先に大きく鞍掛山らしきピークが見えてきた。 地図の「駒薙」に当たる崩壊地だろうか。

二重山稜二重山稜と標識(帰路の同地点B)

2,3度その崩壊地を見下ろすように崖に沿って歩くと鞍掛山がぐんと近づいてきて、「駒岩分岐点」の標識のある地点に出る。ここが鞍掛山への分岐となる。
鞍掛山が見える地点鞍掛山が見えてくる「駒岩分岐」駒岩からの下り

分かりにくい場所だと思っていたが、何とちょっとした広場のようになっていて土の表面が露わな、分かりやすい場所だ。これも手入れされたからだろうか。

やっと分岐まで来た。ここから急斜面を下りきったところで、待望の花に出会う。
その花とはクモイコザクラ(雲居小桜)。コイワザクラ(小岩桜)の変種とされている。これだけ大変な思いをしてやってきたので、会えたのは本当に嬉しいが、数の少なさに少し驚く。
(もしこの花を見るだけならば、ずっと楽に見られる場所が清里にある。興味があれば調べてください。)

この岩場だけというのは、きっと盗掘のせいだろう。ホテイラン然り、アツモリソウ然り。もう流通を止めない限り、絶滅は免れないのだろうか。
勿論、私達が入り込めない山奥には、まだまだ秘密の?花園が沢山あると信じたい。
ここまで歩いてきてようやく許された対面に、ちょっと複雑な気分だ。

さて、ゆっくり撮影する時間があろうはずもなく、リーダーに急かされて、もしかしたらまだ咲いているかもしれないと微かな期待を胸に、山頂を目指す。
予想通り、これがまた厭なルートで、木の根が張り出し、足元が柔らかい崖の道。それでも登りはまだしも、帰りを考えるとゾッとする。

鞍掛山へ最後の登り山頂山頂

山頂にも真新しい標識があり、その先に絶好の展望地点があるのは分かっているが、今日はガスの中に霞み、期待の甲斐駒も見えないので、時間切れということで、集合写真を撮ったらサッサと降りることになる。
下りは案の定渋滞するが、安全第一!私も慎重の上にも慎重に降りる。
目の前のTさんが滑って尻もちをつき、それを見て私が思わず悲鳴をあげてしまうが、うまく滑って事なきを得、胸を撫で下ろす。やはりここまでの蓄積疲労があり、まだまだ要注意だ。

鞍部でまたコザクラに挨拶し、急斜面を登り返す。途中で僅かにガスのかなたに甲斐駒がチラっと姿を現すが、その姿の巨大なこと!!流石は『展望の山』だ。天気が良かったらそれはそれは素晴らしい雄姿に会えたことだろう。
稜線に戻って、長い長い下山が始まる。

崩壊地崩壊地の傍を通る分岐分岐(地点B)

二重山稜まで来る(地点B)と、今度は北側(左側)の道を行く。小一時間で、朝登ってきた地点Aを見送り、今度は稜線伝いに日向山を目指す。下りは確かに体はやや楽だが、痩せ尾根はコワイ。
それでも沢山のミツバツツジに囲まれて、誰にも出会わず、静かな山の中を歩く・・・がもう3時を過ぎている。

静かな山中岩の難所岩の難所(1622m地点周辺の通過)

白いツツジを見た後で岩の難所にさしかかったらしく、渋滞。私もクラックに手を掛け、滑る木の根に足を乗せようとするがどうもうまくいかない。すると、更に後ろにいた屈強女性陣は、やや前の岩場に豊富な足場を見つけ、 そこから難なく登っていくので私も一旦降りてそこを行くことにする。

岩場はこの先にもあるが、大したことはなく、4時を回ってようやく白い世界が目に飛び込んでくる。雁ヶ原への最低鞍部だ。

ようやく雁ヶ原への鞍部へ

[注:錦滝から通常ルートで登ってくればここが稜線出合。ガイド類はここまで登ってきてから日向八丁尾根を進むよう紹介しているが、「山と渓谷」2009年10月号 で紹介されている鞍掛山への案内では、どうやら私達が朝登ってきたルート(@からAへ)を紹介しているようだ。記事を改めて読み返し、そのことに気付いたのだが、昨年の記事に は標識への言及は無くただ「踏み跡をしばらく直進する」となっている。]

ようやく危険個所から解放されたものの、最後は重い荷物と疲れた足を引きずって白い砂地を黙々と登っていく。何だか修行でもしているよう。流石に雁ヶ原には寄らず、三角点を目指す。
やっと「ハイキング・コース」に入り、日の長いことに感謝しながら1時間歩いて矢立石に到着。
下山直前には、iさん、Iさんのお二人が『お出迎え』。何と周辺で見つけたササバギンラン(笹葉銀蘭)を教えて下さり、みんなで「鑑賞」後、ようやくバスに乗り込む。

ただ今の時刻、17:40、まだ何とか明るいが、あ〜長かった!!

*総括*
今日は久しぶりの超ロングコース、グループとはいえ実は皆さん、かなりの健脚。
岩を越えたり、キツイ斜面の下りでは少し時間がかかったものの、殆どがかなり年上の皆さんの健脚ぶりには改めて脱帽。
実は今日は新しい登山靴。まだ足に馴染んでおらず、特に踵が固くて急傾斜ではちょっと痛いかなと思ったが、靴ずれもなく無事に歩けてほっとした。

コザクラの他にもっといろいろな花が見られるものと期待していたが、今回は殆ど他の花に出会えなかったのは残念。
また、ネット上の記録では、 日向八丁尾根(雁ヶ原から降りた鞍部から、駒岩(「駒薙の頭」との表記する地図もあり)を経て大岩山への稜線を指す。)は笹に覆われ、難儀したとの記録も多い。
どうやらかなり手入れがなされた様子で、少なくとも今は藪こぎはない。

勿論、痩せ尾根や急斜面のトラバースなど、条件が悪いと大怪我につながる場所が無いわけではないのも事実。
実は復路でSさんも「滑落」。でも危険な斜面ではなく、一瞬転がっただけで、怪我もなかった。とはいえずっと厳しい斜度での登りが続く、体力勝負のコースだ。

さて、地形図と撮った画像を突き合わせ、何とか自分なりにルートを理解したつもりだが、あくまで自分で地図読みの出来る方にしかお勧めしない。(この記録もあくまで参考の1つとしてご利用ください。あくまで自己責任でお願いします。)
それに、また行きたいかといえば、(今回の経験では)もういいかな、と思う。
遠望がきき、他の花が咲いていたら・・・また来たい!と思うかもしれないが。ゆっくり花の写真を撮っていたら、とても日帰りはできないだろう。ミヤマスミレとイチヨウランには何とか会えたけれど・・・。

熊の爪とぎ跡があったことも書き添えます。(クワバラ、クワバラ!)


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