備前楯山・庚申山   2010年6月12日〜13日

初日:舟石峠12:05〜12:54備前楯山13:15〜13:55舟石峠
2日目:銀山平5:10〜6:07一の鳥居6:18〜7:33猿田彦神社跡7:35〜7:45庚申山荘8:18〜9:07お山巡り分岐9:15〜9:37休憩9:54〜10:10庚申山〜10:13展望台10:50〜11:17お山巡り分岐〜11:34休憩11:45〜11:57めがね岩〜コウシンソウ自生地〜13:10嶺峰山荘〜13:17猿田彦神社跡13:25〜14:05一の鳥居〜14:55銀山平


絶滅危惧種のコウシンソウ(庚申草)を求めて庚申山へ。アクセスが悪く、コースタイムも長いので泊まりで行くことにする。
朝7時に都内を出発、関越道経由で11時過ぎには順調に宿に到着。お昼を食べてから足慣らしに備前楯山に登ることにする。

広い駐車場からヤマツツジの鮮やかなハイキングコースを進む。春ゼミなのか、賑やかで、小鳥たちも囀っている。
階段状の道を行くと、展望良好な山頂へ。日差しが強く、岩の狭い山頂は照り返しが凄い。
落葉松林ヤマツツジの道 山頂

ややガスっているが、明日の庚申山、頭だけ見えているらしき皇海山などを地図で確認し、日差しを避けてまた樹林帯を下る。よく整備されたコースで、気持がいい。でも、あっという間に降りてしまい、お宿へ戻る。
途中の銀山平付近には一体何台停まっているのか、というほどの数の車。みなコウシンソウ狙いだろう。

チェックインより早めに着き、ロビーで寛いでソフトクリームなんぞを食べておしゃべりするうちに、部屋を用意してくれる。広いがちょっと古い、何となく懐かしい感じの部屋だ。
早速お風呂へ向かい、ぬるっとしたお湯に浸かり、久しぶりの温泉を楽しみ、その後は部屋でちょっとお昼寝。ああ、極楽、極楽!。

夕方Sさんが合流し、夕食後は明日の長丁場に備えて早く就寝。お天気が持つことを祈る。フロントで聞くと、コウシンソウはもう咲いているという。必ず見られると思うとちょっと興奮する。早く会いたい!

さて起床は4時過ぎ。朝食代わりにもらったお弁当は大きなおにぎりが2つとおかず。長い林道歩きがあり、空きっ腹では歩けないので、部屋で1つ食べ、あとはお昼代わりにとザックに入れ、5時過ぎに宿を出る。
まだ早いので銀山平の駐車場には車が2,3台。ゲートの脇から林道に入り歩き出す。ここから一の鳥居まで1時間ほど。体を慣らすつもりで歩いて行くが、少しずつ登っているのが分かる。
途中から舗装が終わり、落石注意の林道をひたすら進む。
「天狗の投石」という大きさの揃った岩が押し出している個所をすぎるとようやく一の鳥居だ。ここが本当の登山口。まだ先は長い。

一の鳥居

丁目石に導かれて登っていくが、沢に沿って歩いて行く雰囲気がハルラ山に似ている。目に着くのはピンクのクワガタソウばかり。

奇岩で名高い庚申山だけあって、早速面白い形の岩が現れる。鏡岩、夫婦蛙岩、仁王門、と辿って行くうちに、ヤマツツジも見られるようになり、ようやく猿田彦神社跡に出る。ここは去年クリンソウの大群落があったというが、咲いているのは数輪のみ。ただ、よく見ればまだ蕾や小さな株もあるので盗掘されつくしたという訳ではなさそうだ。

清流に沿った道ヤマツツジ

夫婦蛙岩仁王門

ここからまず山頂を目指し、その後でお山巡りに進むことにする。ベンチに後ろ髪をひかれつつも、もっとクリンソウが咲いているというので庚申山荘まで頑張ることに。

ネットやガイドブックで見慣れた庚申山荘は、思ったよりは小さかった。しかし背後に聳え立つ岩壁は圧倒的な大きさで迫ってくる。
さて、ここにはトイレも水場もあり、まずはザックを降ろし、山荘の裏手に急ぐと・・・。
庚申山荘 クリンソウ(九輪草)

そこは初めて目にする素晴らしいクリンソウの真っ赤な絨毯が広がっていた。この数は凄い。圧倒的な美しさだ。しかし非常に気がかりなのは、ここに何とテントが2つも張ってあること。これから咲く株もあるのに!

お花を写したり、腹ごしらえをしたり、トイレを借りたりしているうちに長居をしてしまった。でも2時間以上歩いてまだこれからというのがこの山の奥深いところ。折角朝早く出たのだから、焦らず楽しもうと意見は一致。

山荘からちょっと戻って、いよいよ山頂を目指す。クリンソウが見送ってくれるなか、足元はどんどん急になっていき、この聳え立つ岩壁を一体どう登るのかと気がかりになってくる。
しかし、ルートは巨大な岩場をトラバース気味に上がり、また巨岩を絶妙に縫って高度を上げる。覆いかぶさるような岩肌から水が滴り落ち、見上げれば濡れた岩壁にユキワリソウがびっしり。ザラザラの足元を気にしながらも、足を停めずにはいられない。

他の登山者も、花の周りを取り囲み感嘆している。

巨大な岩壁(右隅に人物あり)ユキワリソウ 桟橋

厳しい登りの連続ながら、お花に励まされて何とか登っていく。岩を潜っていくとようやくお山巡りとの分岐に出る。庚申山荘からちょうど50分ほど。(猿田彦神社跡からは1時間。)
帰路はこの分岐からお山巡りに入る予定だが、早速ルートは土砂崩れ、杭が流されているではないか。ちょっと心配になる。

地図ではあと50分で山頂とある。長い往路ももう1ピッチ。コウシンソウはお山巡りでないと見られないそうなので、しばし我慢して、もうひと頑張り!
更に傾斜がきつくなり、梯子や鎖を使いながら急坂を登っていく。もう一息で山頂、というあたりでカメラを持った「おじさん」と会い、お花の情報を得る。これ幸いと大休止。 もう3時間半も歩いているのだから、あと一息とはいえ、休みたくなるのも当然か。

この休憩で気力も回復、山頂を目指す。もう傾斜も緩み始めてなだらかな樹林帯をすすむとシャクナゲが薄いピンクの花を咲かせ、静かな日本庭園のようだ。小高い丘のような地点に三角点のような石柱があるだけだが、ここが山頂らしい。(帰路に木に括りつけられた山名表示板を確認。)
もう少し進むと展望が開け、目の前の皇海山がカッコいい。ここで昼食。ここから更に難路を進み皇海山を目指す人もいるだろう。

山頂の石柱 展望台から皇海山(すかいさん)

まだ10時台ながら、もう5時間も経っているのだ。これからようやくお山巡りの「上級者向け」コースが待ち構えているというのに・・・。
お昼を食べてザックも少し軽くなり、さらには下りになることで、気分的にはかなり楽になる。喘ぎながら登った急坂も、降りてしまえばあっという間。お山巡りの分岐に降り立つ。
お山巡りへGo!

ザレた斜面を慎重に進むが、見た目ほどは危険ではない。左手に梯子が見えるが、これは何?と無視して通過。(ひょっとするとここが大事なポイントだったのかも?)

さあ名にし負うお山巡りの難所が続く。いろいろ名前が付いているらしいのだが、標識が極度に少なく、この奇岩が何に当たるのかよくわからないまま、とにかく安全第一で進む。
ストックをしまい、手袋を取って、鎖をたぐり、梯子を登り、桟橋を渡る。見れば先ほどの「おじさん」が。レンズを向けているのでコウシンソウがあるのは間違いない!挨拶を交わし、早速我々も各自のカメラで写す。

それにしてもこのコースは距離もあり、アップダウンを繰り返してなかなか標高が下がらない。ひたすらに平行移動している感じだ。
めがね岩 鉄梯子 蟻の戸渡り?!

確かに鎖で崖をへつり、梯子も段が埋まっていたり、蟻の戸渡りのような痩せ尾根(実際には全然コワくなかったが)を歩いたりと危険個所の連続で、気が抜けない。

水平の橋をいくつか渡ると団体さんが休んでいる。どうやらそこが地図にある「自生地」のようだ。
ここを最後にコウシンソウはもう見当たらず、またルートが一変するのに驚く。ここまでの梯子・鎖場のかかる断崖のザレた道が、のどかな笹原や樹林帯のハイキングに変わるのだ。 逆にいえば、コウシンソウを見るためだけなら、猿田彦神社跡から直接こちらに回れば、危険個所をほとんど通らずに行くことが出来る。(山慣れない人にお勧め。)

シロヤシオ樹林帯

嶺峰荘が現れると、猿田彦神社跡はもうすぐ。長いお山巡りもようやく終わった。
なるほど、ここは距離もあるが岩場の連続で思った以上に時間がかかる。濡れていたり凍っていたらとても歩けない。決して上級者向けではないだろうが、初心者のみではちょっと危ないだろう。一番いやらしいのは、足元がザラザラで滑りやすいこと。 何でもないところで躓いたり滑ったりすることが、重大な危険につながるというコースだ。

神社跡で一休みし、クリンソウに別れを告げて、あとはひたすら降りるのみ。数人の登山者と、「おじさん」を追い抜いて、あっという間に40分で一の鳥居へ。

山道が終わり林道歩きになるとどうも私は遅れてしまう。 SさんとLilyさんはどんどん行ってしまい、私達はマイペースで歩いていると、カラカラと落石の音が。立ち止まって確認後、足早に通り過ぎる。やはりここは要注意のようだ。 道路が舗装になって、時計を見ればもうすぐ1時間。いくらなんでももう着くだろうと頑張って歩いていると、ようやくゲートが見えた。あ〜長かった!

しかし、何とか足も痛まず、疲れも思ったほどではなく、無事に下山出来たのは嬉しい。勿論コウシンソウをじっくり見られたことも。
鞍掛山と同様、トータルで10時間は流石に長いが、それを何とか無事歩けたのも満足だ。前夜、しっかり宿で休めたことが一番の勝因だろう。夜行明けではお山巡りは覚束なかったかもしれない。



*コウシンソウ(庚申草)*

さて、絶滅危惧種のコウシンソウ、見れば見るほど小さくて面白い花だ。
岩壁にへばりつくようにして、首を伸ばしている5センチほどの花。葉には粘液があり、虫を捕えている。
ムシトリスミレのミニ版という趣で、ルーペで覗くとこれまた楽しい形。しかし、余りに小さくて焦点が合わない・・・。

私達もネットであれこれ調べて場所の見当をつけてきたものの、実際にはよく似た岸壁が延々と続き、「おじさん」に出会わなければこれだけ間近でじっくり見ることも写すこともできなかっただろう。
時期も場所も限られているので、沢山の人が登っている。2度目以上の人も多いようなので、声をかけて教えてもらうのが一番だろう。
「おじさん」ありがとう。お陰でコウシンソウ、堪能しました!


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