天保山(てんぽうざん)と甲子園   2003年8月12日
  母校が高校野球の県代表になったため、その第1戦を応援すべく夏の甲子園へ出かけることにした。
今年は天候不順で台風のため1日順延。その後も予報では試合当日の雨の確率は60%。実際に試合が行なわれるかどうかは非常に微妙だった。
最後までネットで雨の予報をピンポイントで確認しながらも、最後は覚悟を決め、夜行バスに乗り込んだ。

  朝大阪に着いてみると外は雨。う〜ん、試合はどうなるのだろう。
Y・Y君の情報では、大会本部が朝の5:30に決定し、6:00に発表とのこと。もう決まっているはずだが、私の旧式の携帯では確かめようがない。
とにかく朝食を取っていると携帯が鳴る。神戸のY君だ。
ちょっと優雅にホテルの中で食べているので中座も出来ない。悪いなと思いつつ、終わってからかけなおすことにする。

待ち合わせは12時なので、それまでどう過ごすか。とにかく天保山へ行こうとだけは決めていた。
これは日本一低い山ということになっている。地形図にも載っているが、標高はわずかに4.5m。何度か地図上から"抹殺"されそうになる危機を地元の方の運動で乗り越えて、「山」として残してきたそうだ。

バスに乗って行ってみる。天保山行きのバスが出ている。乗っているとまた携帯が鳴る。結局、何度かお互いに掛け直し(それぞれ電車の中だったりバスの中だったりで)、その間にY・Y君からも入り、まあ大忙し。
しかし、Y・Y君からかかってきたところを見ると、これは今日は実施かなと思う。

とにかく40分弱で天保山に着く。降りて家に電話。「野球?もう試合やってるよ。雨?小雨みたいだけど今日は予定通りだって。よかったね。」
おお、そうかそうか。よかった〜!大阪まで出てきた甲斐があった。

  それで安心してY・Y君とY君に電話する。Y・Y君は地元から出てきて一緒に待ち合わせて甲子園に行くことになっている。経費節減のため行きは鈍行を乗り継いで行くよ、とのことだった。電話するともう列車に乗っていた。
さて、安心して天保山に登ることにする。場所はネットでいろいろ紹介されているが、見落とし易いと聞いて、一番信頼できる、毎度おなじみの1/25,000の地形図を参考にする。こちらを参考にどうぞ。
バスを降りてすぐ右手が天保山公園。その中にあるはず。もう港になっていて、公園をまっすぐ進むと上に高架が見える。地形図には阪神高速湾岸5号線と書いてある。
公園の奥の隅にありそうだ。高架がよい目印になる。・・・数段の階段を上ると、え〜っと右奥のちょっとだけ小高いあの丘かな?

いやいや、地図では北東の角にあるぞ......おっと、え?これ?

低いコンクリートの塀越しには対岸への渡し場が見える。その隅になにやら小さい標識と、天保山という文字と、路面にめりこんだ三角点が目に入る。


<これが、あの、天保山>


<アップです>

とにかく三角点にタッチして、写真を撮って、また大阪駅に戻るバスに乗る。
さて、次はどうしよう。・・・駅構内の書店で大阪市街のガイドブックを買うことにする。外はまだ傘を差すような雨。それに、なんだか足が痛い。
ここから歩いても大した距離ではないようなので、浄瑠璃の曽根崎心中で有名な「お初天神」へ行ってみる。

小ぢんまりしたいい感じの社で、ここは縁結びにもご利益があるらしい。一応拝んで、お守りを買う。流石に縁結びのお守りは買えないので、幸せ守り、というかわいい現代風のお守りを買う。
窓口でおみくじをひくと、半吉。裏面の英文を読むとnot-so -goodと書いてある。しかし、今を底としてこれからよくなる、と書いてあるのでこれでいい、と思う。

次は、雨だし時間も半端なので、好きな陶磁器の美術館にする。中ノ島の東洋陶磁美術館へ。
ここは展示品もなかなかの充実ぶりで、しかも静かでいい。大正解。
しかし、なんだかさっきから足が痛い。靴ズレみたいだ。これは困った。・・・甲子園の応援用にもってきた絹(だが透けない)靴下を履く。少しは楽になった。
実はサンダル履きで来たので、雨に濡れて滑るのが原因のようだ。靴下を持ってきたのは経験から。高校のとき、地方球場へ応援に行って、見事にサンダルの紐のままに日焼けしてしまい、その年は他のサンダルを履けなかったのだ。
それで、甲子園で上から履こうと思って持ってきたもの。(ついでに手袋も持っている。)

美術館を30分ほど前に出て、地下鉄駅まで5分ほど歩く。構内に入ると携帯が鳴る。Y君だ。
「今どこ?」
「淀屋橋という駅。」
「もうホテルにいるんだけど。」
「早いね!多分一駅だからすぐいけると思う。待っててね。」

仕事を午前中で片付けて、駅近くのホテルのロビーで待ち合わせ。Y・Y君も合流のはず。
梅田で降りるが、大阪駅構内が広くて、地図を持っているのになかなか思う場所に出られない。やっと辿り着くともうY・Y君も来ていた。
「よく分かったね。」
「うん、顔を見たら思い出した。」
これが同期生というものだろう。

デパートの地下でお弁当を買って、甲子園に向かう。前の試合が早い展開ということで、予定より早く開始するかもしれないそうだ。

甲子園駅に着く。なんだか気分が高揚する。ああ、ここで試合が行なわれるんだ!
神戸在住のY君が同窓会の関西支部に頼んでくれたので、アルプススタンドの券は3枚確保してもらった。有難う!
よく見ると、右隅に「代表校」と入っている。「これはいい記念になるよ。」とY君。


この券でアルプススタンドに入りました。

今回は1塁側。既に何十人、いや100人以上が入り口に並んで待っている。前の試合が終わってから入れ替えになるそうだ。前後を見回すが、 同期生は見当たらない。
そんな時、Y・Y君の携帯が鳴る。地元からの新幹線組からだ。甲子園に着いた、という。しかし、この人数なので、中に入ってから再度連絡をすることに。
しばらくして、中から前の学校の応援の人たちが出てきた。係員の誘導に従って中へ入る。
階段を上ると、視界が開ける。ああ、本当に甲子園だ。

アルプススタンドは外野も外野、選手は小さく見える。しかし、今回は現役やOB一丸となって声を張り上げて応援するために来たのだ。 できるだけ現役に近いあたりに陣取る。
そのうちに同期の新幹線組とも会えて、応援の寄付のおまけとして、特製の野球帽を貰う。これはなかなか立派なもので、野球帽としては初めて買う私も感心する出来。
「5000円(寄付額)の帽子だね。」・・・でも高くない。(笑)
同期の3人が並んでこの帽子をかぶって応援となる。試合が始まってすぐにN先輩が京都から駆けつける。これで4人OBが並んで応援だ。

さて、試合はなんだかアレレといううちに点を献上。それも、どんどんと。(笑)
しかし、こっちも相手ピッチャーを打っているので何となく悲壮感はない。地方大会に全部(?)応援に行ったY・Y君いわく、「いつもこんなもんだよ。大丈夫。」

一緒に校歌を歌ったり、応援に声を張り上げたりしているうちに、高く上がったファール?フライ?・・・・すると大歓声。
「ホ〜ムラン!!」・・・4対1で負けていたのがこれで4対3に。盛り上がる応援団。

しかし、追加点が取れぬまま、こちらもピッチャー交代、あちらも交代、いつのまにかなんと9回裏。
9回裏で4対3、こちらがまだ負けている。ここからみると、相手校の応援団はもう半分、いや90%勝ったつもりで歓喜している。
しかし、不思議と私たちは負ける気がしない。県大会でも一度ならずもうだめか、というところから勝ち抜いてきたという母校。みんな逆転を信じている。
その期待にたがわず、先頭バッターは選んで四球で出塁。次に連打でまず1点を返して同点!やった〜!追いついたぞ!これで延長だね。
しかし、まだまだ1アウトでいつの間にか1死満塁になっている。
もう応援団は大変です。
押せ押せムード、ひょっとしてサヨナラ?!
しかも迎えるバッターは最も信頼度の高い選手。
勝てるかも?

次の球をどう打つか、球はどこへ飛んでいくのか、いや、ゲッツーか?!

・・・文字通り息を呑むその瞬間、投げた球が暴投となって、キャッチャーの後ろへ転々と・・・。

3塁の選手が走り出す。ああ、なんだかビデオの再生見ているような感覚。夢か現(うつつ)か・・・。

その刹那、応援席の大歓声で我に返る。
ワ〜〜!!!キャー!!おぉ〜〜!!
勝っちゃった!

  勿論もう既にみんなさっきから立ち上がって声援を送っていたので、そのままY・Y君、Y君、N先輩とハイタッチ、ついでに前列と後列の知らない人とも握手、アルプススタンドはごお〜と唸っている。
・・・信じてたけど、信じられないような大逆転。こんな展開、私はこの目で見たことない。あ〜これが甲子園、これが高校野球なんだ。


応援席に来た選手たち

長崎日大:200 200 000|4
静岡     : 010 020 002x|5

  しかしアルプススタンドは忙しい。勝利の余韻に酔う暇もなく、係員にさっさと退場してくれと言われ、あわてて外へ出されてしまう。
が、外では三々五々OBたちが集まって満面の笑みをたたえて肩をたたきあい、喜びを分かち合っている。
私たちも他の同期生と連絡を取って、正面の歴代優勝校の旗の前で記念撮影。
そう、母校は旧制中学の時代に一度全国優勝しているので、校旗があるのだ。これも歴史のなせるわざ。

そのあとは地元のY君にお任せで、合流した新幹線組からN君、I君の2人も加わって6人で祝勝会。
みんな一体何杯ビール飲んだの?

もう盛り上がって盛り上がって、一気に高校生に戻った。この感覚がたまらない。
地元組は最終のこだまに乗って帰ることになる。N先輩も一緒に戻る。
みんなを見送ると、Y君がバスの発車時刻までまた付き合ってくれる。(悪いなあ、ごめんね。)

駅前のビル上に観覧車がある。有名なんだそうだ。これに乗る。・・・冷房も効いていて、夜景が綺麗だ。大阪城もライトアップされて浮かんでいる。
次にタクシーで御堂筋を走ってミナミへ。一方通行で綺麗な街並み。銀座のような雰囲気がある。
降りて歩いて「グリコ」のネオンやみんなが飛び込む橋を見物。

ちなみに、グリコさんは阪神タイガーズのユニフォームに着替え中で点灯されていなかった。阪神ファンのみなさん、後少しお待ちください。(笑)

それからなんばグランド花月や法善寺横町などを見て、最後においしいと有名なたこ焼きを屋台で買って食べ、それから地下鉄に乗ってまた大阪駅に向かう。
地下鉄の中ではさっき帰った新幹線組と携帯メールを交換している。
(送信元のY・Y君から詳細な記録が来たので転載・・・)

「Reikoさんとデートしています。・・・」→「新幹線の中でReikoさんの思い出を肴に 飲んでます N談」→「Reikoさんは帰らないらしいです。へへへっ」→「それは不 倫だとI君が言ってます」→「合意の上です」→「BBSに載せるよ I     きゃー  N    ずるいー  Y・Y」→「彼女はたった今、東京行きのバスに乗りまし た。ご安心を」→「本当?」→「本当です。もうバスの中です」

でも同期ならではの友情を感じる。また会おうね、みんな。

結構ギリギリ、5分前に高速バス乗り場に到着、車中の人となる。Y君は例のごとくバスが動き出すまで見送ってくれている。幸い窓際だったので、カーテンを開けて覗くとY君が見えた。
勝利のVサインを送ると、信号待ちの間にさっきの母校マークの野球帽を取り出して、彼もVサイン。
次も勝ってね!もう行けないけど、代わりに応援も頼みます。

かくして長い一日は終わった。
改めてこの学校に行ってよかった、と思った。


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