こんぴら参り   2008年3月16日〜18日

コース:
1日目:琴平<金丸座、石段[大門手前まで]>、善通寺、(琴平泊)
2日目:金刀比羅宮<書院、本宮、神椿、高橋由一館、宝物館>、中津万象園、(琴平泊)
3日目:(高松市)屋島〜栗林公園〜玉藻公園


*1日目*
思い立って四国は讃岐の金刀比羅宮を母と訪れることにする。1年ぶりの飛行機は南アルプス上空を飛び、思わず小さな窓に張り付いて眺めてしまう。

南アルプスの雄姿(奥から、甲斐駒、仙丈、北岳・・・)

昼前に高松空港に到着、リムジンバスで琴平を目指す。車窓からの長閑な景色と、瓦屋根の立派な家屋に「地方」の豊かさを思う。
琴平に近づくと向こうに見える山の中腹に建物が見えてくる。きっとあれが金刀比羅宮だ。
バスは狭い商店街を抜け、今宵の宿の前で降ろしてもらう。とりあえずフロントに荷物を預け、身軽になって[「こんぴらさん」を目指す。

賑やかな商店街を戻って入口に辿り着くと、「中野うどん学校」があり、お店もあるので入ってみる。
うどんはセルフで、「ひやあつ」(冷たい麺に暖かいかけ汁の組み合わせ)に好きな具を載せてレジへ。私も母も500円也。
感動!というほどではないが、確かにおいしい。(映画『UDON』が予習に最適。)

腹ごしらえも済んで、最初のお楽しみは旧金比羅大芝居(金丸座)の見学だ。石段を少し登って左手に入ると更に坂道を登る。
すぐさま展望が開け、讃岐平野が春霞(黄沙?)に霞んでいる。更に階段を登って入口、500円を払って入場。

 金丸座    内部

誰もいないのか静かで、早速上がりこみ、勝手に見学し始める。幕を開けたら何とすぐに花道。入ってみると本当に小ぢんまりした感じのよい小屋だ。歓声を上げながら母と歩いていると、係の人が現れて解説をしてくれる。
入口に戻り、戸口が身分に応じて3種類あること、今までの芝居の役者や演目を書いた額が掲げてあること、から始まって、花道の上に宙乗り用の金具が既に使用されていたことや、回り舞台の説明、裏の役者の支度部屋、地下の人力でまわす廻り舞台のしかけなど、見所満載。

更には2階の客席にあがり、すっかり堪能、大満足。

また参道に戻って、少し石段を登ってみることにする。
何と言っても金刀比羅宮といえば石段。 本宮は785段の石段を登りつめた所にあり、あれこれ調べると、ネットでは石段の大変さから「下りは膝が笑った」とか「○才の祖母でも歩けるでしょうか」という書き込みばかり。

フィットネスに通っているとはいえ、母も後期高齢者。特に下りで転んだら大変、と思い、実は本宮参拝は明日の予定。
本宮までの中間点である大門(おおもん)までは、歩かずとも行けるのだ。籠という方法もあるが、お財布が許さないので、調べてみると「ことバス」が一人片道500円で運んでくれるという。そこで明日朝9時のバスを予約済み。
*「参拝登山バス

バスは1時間に1本。一般の人は所要1時間というが、見所も多いし、慌てるといけないので、お迎えは3時間後にしてある。

と言うわけで、今日は石段を歩く必要はないのだが、大門までの間に歴史上の見所もあるというので、とにかく足慣らしを兼ね、母と登り始める。

 113段目 一ノ坂鳥居    168段目「灯明堂」

両脇の商店は、閉まっている店も多い。開いているところは杖を無料で貸し出している。勿論、帰路のお買い物を当て込んでのものだ。
ゆっくり歩けば汗もかかない。今度は「灯明堂」が現れた。重要無形文化財だろうだ。

昔から海路の安全を祈っての信仰の深いこんぴらさんだけのことはある。
面白いね〜といいながら母のペースに合わせてノンビリ登っていくと、あれれ、少し先に立派な門が見えてきた。
ひょっとして、あれが大門?・・・じゃあもう半分登っちゃったってこと?・・・楽勝じゃん。

大門が見えてくる    桜に誘われて・・・

ということで、思いがけずもう半分登ってしまったので、そろそろ引き返すことにする。
ちょうど右手に神社のような建物があり、銅像と「帝国水難救済会救難具の陳列所」があり、ちょっと一休み。さあ降りようと思うと、左手に寒緋桜が咲いている。
展望台かなと思い、ちょっと寄ることにする。

すると、ずっとなだらかな道が延びている。どうやら温泉街への近道らしい。
しめた、と思いどんどん行くと、今度は案内板もあり、これは「裏参道」だそうだ。見れば他にも石段から脇へそれていく、いくつものルートがあり、なるほど向こうの道を観光客が歩いているではないか。
これなら急な石段を必死に降りる必要も無く、ずっと安全である。しかも、自然の中を降りてこられる。いくつかのガイドブックを調べたが、こんな道は全く載っていなかった。
まだ少し時間があるので、JRに乗って善通寺(第75番札所)へ。ほんの1駅である。降りてみると、タクシーが数台客待ちをしているが、弘法大師が生まれた名刹というのにバスもない。
地図で見れば歩けそうなので、母と歩いていくと20分ほどで到着。

平日のせいか比較的閑散としており、広い境内には堂宇のほかに五重塔と風格のある巨木2本が目立つ。

 総本山善通寺  巨木 

お参りをしてから更に門をくぐると西院で、ここで戒壇めぐりをする。真っ暗な中を手探りで歩いていくものだ。清水寺でも歩いたが、本当に真っ暗なのでなかなか得がたい経験だ。
それから宝物館へ。桜が満開でびっくりするが、これは「涅槃桜」というそうだ。

一通り見て満足し、お守りを買ってまた帰る。途中でお茶をしようと探すが、「シャッター街」になっていて、なかなかない。
やっと入ったところは、頼んだメニューが悉く「できません。」ということで、コーヒーだけ。(でも280円。)
駅の近くのコンビニで少しおやつを買って駅に向かうと、何と列車が出たばかり。次は30分後の特急と、45分後の普通列車。
たった一駅に特急料金を払うのもシャクだが、これ以上待つのも時間の無駄、諦めて特急に乗って宿に帰る。(ちなみに、乗車券200円、特急券310円。)

さて、お宿は大きなホテル「琴参閣」。広い部屋でびっくり。
しかも、宿ににはこの「裏参道」の案内のチラシが置いてあって、「お帰りは裏参道をご利用下さい。石段は無く、公園の中を通り、森林浴をしながら楽にご帰館できます。」とあるではないか。

そこには、ちょうど「こんぴら犬ゴン」からの道が紹介してあるが、他の地図を見るともっと沢山左右に「裏参道」が存在するようだ。
行きはともかく、帰りはこの道が一番良いだろう。

さて、ここは温泉地でもある。早速大浴場に向かうと、循環式のようだが、広くて湯量豊富で綺麗なのは嬉しい。
さらにお食事もたっぷりで、締めのうどんもついて、大満足。早めに休んで翌日に備える。

*2日目*
ゆっくり起きてしっかりお膳のご飯を平らげ、9時の迎えの車を待つ。黄色いコトバスのお客は私たちだけだ。
石段脇の狭い急な坂道を上がっていくと「大門駅」だ。タクシーも来ていて、バスの時刻表と、タクシー会社の電話番号と、公衆電話まで設置してある。タクシーでもここまで来られる訳だ。

車3台分くらいの屋根付きのガレージのような「駅」だが、ここから大門まで、実は急な石段を少し登らなければならない。
暖かい春の日差しの中、登り切って大門直下に出る。 賑やかな大きな門だ。この先がいよいよ境内。右側には重要有形民俗文化財である青銅大燈籠がある。

 351段目 青銅大燈籠

左には時刻を知らせる時太鼓を備えた高閣もあり、さすがの風格が漂う。さあ、大門をくぐって、こんぴら参りに。

 365段目 大門  大門をくぐる

大門から続く石畳の道は、桜馬場と呼ばれ、もう桜が咲いている。(種類は不明。)
野鳥が多く、メジロが桜の花をつついている。
ノンビリ歩いていると右側にまず宝物館。それから少し進むとお待ちかね、お目当ての書院へ。

 桜咲く    477段目 書院

書院(500円)では、東京の巡回展で見逃した、応挙、若沖などの襖絵を堪能し、解説の映像を座って拝見。
新しく製作中の椿の絵の書院も見学し、猫のような白虎の絵が気に入って栞を購入。

外へ出るとジンチョウゲの香り。
また歩き始めると、500段目で「神椿(かみつばき)」(資生堂の喫茶室)の入口がある。帰りに寄ろうと、とりあえず通過。
時折道が折れ曲がるのは、お城の中で石段を上がっていくような感覚。そうそう、姫路城にいるみたい。

しばらく頑張ると今度は立派な社が見えてくる。これは旭社。ベンチもあるので母を座らせ、一服。

628段目 旭社

この素晴らしい建築を見ていると、金比羅宮がいかに信仰を集め、興隆していたかが良く分かる。
さあ、もう少し。次の建物こそが本宮だ。

最後の石段だけは確かに急だ。ああしんど、と関西のおばさま方がため息をついている。
 最後の石段  母も頑張りました!

全785段の石段を登りつめて、いよいよ本宮に到着。

 本宮(金比羅大権現)   飯野山 

右手には広い展望が得られ、霞んではいるが、遠景には見事な△の讃岐富士、飯野山がみえる。

「幸福の黄色いお守り」が山ほど並べられ、みんな買っていく。この本宮まで登ってこないと買えない、というのが売りのようだ。

絵馬殿には、絵馬は勿論、様々な額や、堀江謙一さんのソーラー船も奉納してあるのは、海の神様ならでは。
昔の写真や額が興味深い。ご利益もあったことだろう。

さあ、お参りも済んで、また帰路の急な石段を慎重に降り、お楽しみの「神椿」パーラーに。石段から降りていくとガラス張りのおしゃれな喫茶室がある。ここで和風パフェの「神椿パフェ」(800円)を賞味。母もにっこり。

 入口   壁面を飾る有田焼のタイルの紺の椿の花

一服してから更に降りていく。綺麗な白い馬がつながれている。

 おとなしい白馬   高橋由一館と桜

更に降りると今度は高橋由一館。日本近代洋画の祖、高橋由一の油絵が27点あるという。折りよく「安野光雅展 〜 風景と出会い」も開設されており、立ち寄ることにする。
ここから桜に誘われてそのまま参道に戻らず歩くとアップダウンなしに宝物館に。
これも特に・・・と思ったが、時間もあるし、三十六歌仙絵が公開されており、立ち寄ってみる。探幽らの筆になるもので、ちょうどカルタを大型化したようなサイズ。面白かった。

余裕を持って大門に到着。見下ろせば讃岐平野が広がり、石段も険しそうにみえる。

ここからまた右手に階段を降りてバスを待つと同じ運転手が迎えに来た。いったん宿に戻り、杖を返して今度は丸亀に向かう。今日はJRの時刻を調べてある。讃岐塩原駅で降り、中津万象園に向かう。
途中にうどん屋でもと思ったら何もないので、コンビニでパンと飲み物を買って、中のベンチでかじる。万象園(ばんしょうえん)は回遊式の大名庭園で、池や小島が配され、歩いても楽しい庭園だ。
中でも「石投げ地蔵尊」がちょっと面白かった。また、大きな傘松もあり、手入れの行き届いた庭だ。

 万象園   海は広いな♪

ここには小さいながら「ひいな館」(古いお雛様などの展示)、「陶器館」(イラン・イラクなどの陶器類)、そしてバルビゾン派の名画数点の絵画館があって、コローやクールベを楽しめる、コンパクトな名所である。

園を出て、大きな橋を渡る時に海が見える。何だか嬉しかった。

宿に戻って一服。夕食は全く違うメニューで、何と鯛尽くし。鯛めしの釜飯や、鯛しゃぶなど、お料理には大満足。
また広い大浴場に入り、ゆっくり休む。ああ極楽。

*3日目*
とうとう最終日。今日は琴電に乗って高松へ。かわいい電車が待っている。

 琴電琴平駅

予定より早く宿を出たら、電車にギリギリで間に合いそうだと走り出す。駅で切符を買うのに手間取っていると、にっこり笑って車掌さんが待ってくれた。

電車に乗っていると妹からメール。何とANAがストという。え?!・・・慌てて携帯で情報を収集すると、どうやら高松線は無関係のようだ。
ほっとして、まずは電車を乗り換えて屋島へ向かう。こと電の屋島駅で100円バスに乗って屋島の山上に向かう。(JRと駅が近いのに、帰りはJRの発車時刻の数分後に着くよう送迎しており、つまりは高松市内へは「こと電」しか使えない!)

屋島の上にはまず屋島寺。不思議な大きな狸の像一対が妙味目立つ。1時間後にまたバスに乗るので時間が読めない。宝物館をパスして(ここは見るべきだったと後で知った。残念!)、壇ノ浦を見下ろす談古嶺へ。今は埋め立てが進んでいるが、この海峡が壇ノ浦だそうだ。
ぐるっと一周して駐車場に戻る。

 屋島寺

 高松市街を望む   壇ノ浦  ここにも!

またバスで屋島駅に戻り、今度は栗林(りつりん)公園へ。これは高松一の見所だが、何と大きな庭園だろう!京都御苑や新宿御苑がまるまる回遊式庭園になったような感じで、とにかく広い。
ガイドもしてくれるようだが、母とノンビリ歩くことにして、地図を片手に歩き出す。

そのうちに茶店があったので、そこでお団子をお昼代わりに座って食べ、花と日差しを楽しむ。

 栗林公園 

この庭園は映画「春の雪」(妻夫木聡ら)の撮影にも使われたそうだ。確かに雰囲気もあり、撮影にはぴったりだ。

大庭園の壮大な眺めを楽しんでから駅に向かう。まだ少し時間があるので、ついでに玉藻公園に向かう。が、ちょっと拍子抜けの公園で、櫓が2つほどあり、あとはレトロな日本家屋が少し。(ここでも「春の雪」を撮影したそうだ。)

 玉藻公園にて

天守閣があるわけでもなし、またお堀の大改修中でちょっと残念だったが、これで主な見所は制覇し、駅に向かう。今日も良く歩いた。

まずリムジンバスの時刻を調べてから、駅前で一服。お土産を買い足して、あとは高松空港へ。
母と二人の讃岐の旅は無事終わった。少しは親孝行になったかな?


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